第4話

 メイド服を来た猫耳少女が待っていた。

「ご主人様、お帰りなさい」

 あの盗人少女だ。

 雰囲気が変わり目がうっとりして顔が赤い。

 どことなく恋する女という雰囲気を出している。

 だがナイフで刺されたことがチラツキなんか不気味に思えた。

「どういうつもりだ?」

 女神が後ろから抱きつく。

「調教しておいたのじゃ。

もう完全に君の虜となっている」

「はい、ご主人様の為なら何でもします」

 邪な考えが浮かんだが直ぐに改めた。

 余計な事を言ったら調教が解けて、また刺されるかもしれない。

 死なないと言っても、すごく痛いのだ。

 絶対に回避すべきことだ。

「本当に何でもするんだな?

だったら色々と教えてもらおうか」

「はい」

 

 猫耳少女によって、異世界での状況を知ることが出来た。

 人間が勢力を広げ猫耳族を排除しようとしているのだ。

 徐々に住む土地を追われて滅びに向かっているらしい。

「人間の持つ武器は金属でとても強い。

だからそれを奪うことにしたのです」

「それで死体から回収していたのか」

 俺を殺そうとしたのも敵だと思ったからだろう。

 こんな少女まで戦いに参加しなければならないほどに追い詰められているのか。

 人間の欲望によって滅ぼされるなんて。

 そう言えば残酷な生き物は人間だって誰かが言ってたな。

「はい、ご主人様。

……あの、ご褒美に撫でて欲しい」

 髪を撫でると少女は目を閉じ微笑む。

 なんか猫みたい。

「可愛いな」

「ごろごろごろ……」


 それから暫くは猫耳少女のミサと楽しい日々を過ごした。

 何もかも忘れメイドに色々と面倒を見てもらえる生活はここが地獄だということを忘れさせてくれた。

 数ヶ月が過ぎた頃、女神がやってくる。

「随分と楽しんだみたいじゃな。

では役目を果たしてもらう」

「もうポッチじゃないし、このまま生活できれば良い」

「怠惰に溺れれば、外にいるゾンビと成り果てるのじゃ。

果実を食したときから徐々に肉体が蝕まれている」

「えっ……、つまりこのままずっと幸せな生活は送れないってことか?」

「私の力を取り戻せば、その望みは叶えることも吝かではないのじゃ」

 協力するしか無いということか。

「解った」

「ではミサ。ナナシに口づけをするのじゃ」

 ミサは俺のほっぺに口づけをした。

 初めてのことだ。

「嬉しい、唇でも良かっんだけどな」

 勿論冗談だ。

 ミサは本気にしたらしく、顔を真赤にした。

「それは恥ずかしいです」

 その恥ずかしがる仕草も愛らしく可愛い。

 そう思っていると、肉体が浮かぶような感覚に襲われた。


 

 気がつくと倒れていた。

「何で倒れているんだ……。

前と移動の仕方が違うじゃないか」

 周囲はあの死体が転がる草原だ。

 猫耳の少年が親しげそうに近づいてくる。

「探したぜミサ。

3日も何処行ってんだ?」

 ミサも来ているのかと振り向くが俺しか居ない。

 そんな様子を見てか少年は不思議そうにする。

「おい、ミサ返事しろよ」

「もしかして……」

 俺自身を指差す。

「そうだよ、なんか様子が変だな。

どうしたんだよ」

「えっと記憶喪失かも……」

「体にアザがあるな、殴られたのか?」

 話を合わせ、記憶喪失のフリを続ける。

 すると村まで連れて行ってくれた。

 

 村には最後まで戦おうと準備する猫耳族達の姿があった。

「族長に会いたい」

 その一言で族長の元へと連れて行ってもらえた。

 族長はお姉さんという雰囲気の優しそうな女だった。

「俺はナナシ、取引をしないか?」

「取引?」

「村を救う代わりに、一人生贄を差し出す。

生贄は一番の戦士が良い」

 族長は笑みを浮かべて聞いた。

「どうやって救うのか聞かせてくれる?」

 こんな突拍子もない事を真剣に聞いてくれるとは予想していなかった。

 だが思いつく限りで戦略を話す。

 族長はただ頷き聞くだけだ。

 そして話が終わると微笑む。

「解りました。

それに応じましょう」


 俺は単身で敵地に乗り込んだ。

 それは疾風のごとく駆け抜け敵の大将の首を跳ねた。

 一瞬で勝負が決まった。

「奴を殺せ!」

 兵士たちが出てきたが遅い、既に目的は達したのだ。

 俺は黄泉の世界へと戻る。

 そこに残されたミサの肉体は兵士たちによって串刺しにされた。




 猫耳の戦士が待っていた。

「ご主人様」

 こうやって地獄へと招待する事になる。

 さあ俺の為に集い戦ってくれ。

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