第24話 ペロル、伝説になる
七年後、ペロルがオートマップで魔物の位置を毎日知らせることで、辺境伯領内で魔物を見かけることはほとんどなくなった。ときおり飛行系の魔物が飛んでくるが餌がないと分かると飛び立っていく。
辺境伯様はこれをいいことに、それぞれの村に畑を作るように指令を出した。冒険者ギルドにも依頼を出すことで働き手を募集した。
さらに八年後、辺境伯領には魔物の姿が無くなり、田畑が大量に広がったことで大きな穀物地帯となった。ペロルはいつも変わらず四つの都市を領主様及び代行様の書類を届ける専門の配達人とかしていた。
さらに十五年後、辺境伯内には都市部間で念話を持つ者が現れた。ご想像の通りペロルがスキルを付与した者たちだ。それにより都市間の通信が迅速になった。
そんな平和が訪れた辺境伯領だったが、オランド聖王国より戦線布告を受ける。理由は聖王国に平穏なる土地を併合するためと理由になっていない内容だった。
戦争が始まることは街中に知れ渡ったが逃げるものはほとんど出なかった。メロス商会は足の速さだけはお墨付きであり、魔物を排除しきった軍は負け知らずとして有名だったからだ。
戦争が始まってみると、魔物との戦闘で集団戦に慣れた辺境伯軍は奇襲などの作戦を平気で行っていた。反対にオランド聖王国軍一人一人は職業の力で強いのだがオーガなどと相対してきた辺境伯軍の敵ではなかった。
ペロルのオートマップと念話、辺境伯軍の分断と各個撃破によって聖王国軍はみるみる数を減らしていく。戦争と呼ぶには呆気なさすぎる展開で一月後にはオランド聖王国は降伏した。
その後十年でペロルは現役の引退を表明すると、辺境伯領の全員から賞賛を浴びた。最後の仕事として、次期辺境伯党首へオートマッピングと念話のスキルを渡した。これによりペロルは余生を辺境伯領で過ごし、辺境伯領は二世代の間は平穏な領地として知られることになった。それは特異な職業とそれを善意のみで使い続けた一人の青年の物語として受け継がれていったのだった。
走れ、ペロル るいす @ruis
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