第23話 ペロル、付与に目覚める
領主様との面会を終え、部屋を出たペロルは執事さんとともに馬車に乗り込んだ。行き先は中央街に用意された商会の店舗だ。
「ここ、商業ギルドじゃん」
ペロルの独り言は商業ギルドの喧騒に包まれ消えていく。執事さんは堂々と商業ギルドの隣にある豪邸に入っていく。後ろにペロルはついてきていないことを悟った執事さんはペロルに話しかける。
「どうなさいました。ペロル様。こちらが領主様の用意された商会用の店舗ですよ」
「ええっ~」
ペロルはあごが外れるかの如く口を開けて叫んでしまった。流石に周囲の注目を集めてしまったためお辞儀をして謝っておく。
豪邸の中に入ると、役所のようにカウンターが伸びており、客と従業員の壁を作っている。その奥にはとても広い倉庫が備え付けられていた。裏手に回ってみれば商業ギルドとも行き来ができるように整備されている。流石になに用に作られたのか気になったペロルは執事さんに質問する。
「ここって一体何なのでしょう?」
「もともとは商業ギルドの配達業を専門とした建物でした。しかし、その業務をペロル様が担うとおっしゃっていたのでこの建物を取り上げたのです。商業ギルドでも行商人の死亡者が多いと困っていたので快く譲っていただきました」
ペロルはただ苦笑いするしかなかったが、ペロルが行おうとしていることは確かに行商人の仕事を奪うことになると思った。まあ、その人たちを雇い入れれば問題ないとも思ったのだが。
そこからはとんとん拍子に話は進んでいく。職員の採用は執事さんが行ってくれ、護衛は領主様から兵士を借りることとなっている。馬も街の外に一区画与えられた。
馬の飼育に慣れた人も採用され、早馬を各村や中間地点に配置するために大量に必要になった時に、ふと取得可能なスキル欄に『繁殖』、『スキル付与』の文字を見つけてしまった。
『スキル付与』の効果はすさまじく、ペロルが取得しているスキルを他人、他の生物にまで与えられるスキルだった。ただし付与したスキルはペロル自身から消えてしまう。要するに好きなスキルを二ポイント消費で与えられる効果だった。
ペロルはスキルポイントを四ポイント使い、雄と雌の早馬へ繁殖スキルを付与した。繁殖スキルを取得したときにペロルのペロルがムラムラしたのは内緒である。
こうして馬の確保問題を解決したペロルのメロス商会は一気に辺境伯領の運送を変えていくことになるのだが話はもう少し続く。
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