第8話 黄金は色褪せて

 ひらひらと、目の前に舞い落ちるの葉。ペンギンの足跡みたいなその三角形はペタペタと黒い道を塗り潰す。

 それは芯の通った穏やかな黄色。どこか懐かしい色。辺りに満ちたその実の匂いが、いつかの深い記憶を呼び起こす。しかし、喉の奥でつっかえて……。


「そういえば、少年」

 ふいに立ち止まるお姉さん。すぅーっと辺りに影が射し、温度がさぁーっと下がった気がした。

 見上げると空を横切る白い雲。暖かい秋の陽射しを僕の側だけ遮った。曇ったようでも空は明るい。突き抜けるような鮮やかな青。


「……あのね」

 なぜかお姉さんは明るく照らされて見えた。彼女の淡く煌めくポニーテール。手を伸ばせばすぐそこにいるはずなのに、僕は動けない。何だか別の世界にいるみたいで。


「今から学校にも行ってみない?久々に」

 風は木の葉を舞い散らし、足元の葉もざわめいた。排泄物じみた不快な匂いに、僕の心は強い吐き気で満たされた。

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