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街へ

———中国武漢で原因不明の肺炎が蔓延しており

———武漢が感染拡大防止のために閉鎖を

———新型コロナウイルスによる肺炎などの感染症が指定感染症と

———乗客の感染が確認されたクルーズ船が

———マスクの買いだめが

———中国の感染者が三万人を突破し、死者は六百人を

———WHOが新型コロナウイルスを「COVID–19」と名付け

———国内で初めて感染者が死亡し

———政府が感染拡大に備え、基本方針を

———首相が全国全ての小中高校に臨時休校要請の考えを

———WHOが世界的な危険性を「非常に高い」に

———三条件が揃う場所でクラスター発生のリスクが

「ねえ聞いた？学校休みになるかもだって。」

「ね。テストなくならないかなぁ。」

「きっとすぐ終わるさ。」

「マスクに手洗いうがい、換気と消毒の徹底ね！」

「寒いー。閉めようよ。」

「マスクなくなったじゃん？トイレットペーパーもやばいらしいよ。」

「どれがデマでどれが本当かわかない…。」

「俺は関係ないよ。どうせかかるわけないし。」

「本当にこんなことあるんだね。」

「買い物行くのも大変……。」

「会社、こんなんで大丈夫だろうか…。」

「三連休どうする〜？」

　街には色々な言葉が溢れていて、僕はちょっと苦手。楽しい言葉も、悲しい言葉も、痛い言葉も、優しい言葉もたっくさん。

「学校休みだって！」

「テスト勉強してなかったから助かったぁ。」

「三密、クラスター、ソーシャルディスタンス。新しい用語に知らない言葉がたくさん。」

「アベノマスクもらったぁw」

「十万円もらえるって！何に使う？」

「親の年収が高いとかで、私もらえないって…。」

「オンライン授業は下パジャマでいいから楽〜。」

「リモートワークやらオンライン授業やらでみんな家にいて大変…。」

「オリンピック、2020でカッコよかったのになぁ。2021ってなんか、ね…？」

「おうち時間ってどう過ごしてる…？」

「お昼も含めて食事のバランスを考えないと…。」

「外に出れないって暇！！」

———政府はこの事態を国や社会として記録を共有すべき「歴史的緊急事態」として

———東京五輪・パラリンピックを一年程度延期することを

———七都道府県に緊急事態宣言を出し、人との接触を最低七割、極力八割削減の呼びかけを

———国内の感染者が5,000人を超え、一日の人数としては最多の五百人を

———緊急事態宣言を全国に拡大させ、十三都道府県を特別警戒都道府県に

———全ての国民を対象に一人当たり十万円の給付の考えを

———世界全体の死者が二十万人を超え

———全国高校総体の中止が

　久しぶりに歩いた街は閑散としていて、僕としてはすごい変な感じだった。いつもは揉みくちゃにされないようにするので手一杯で、言葉の中で酔っていたのに。今はとても楽にすり抜けられる。足の間を通る必要すらない。

　僕には何にも関係ないはずなのに、ただ人間内で起こってることなのに僕はただ、ただ、寒気と不安に襲われた。名前も原因もわからない不安に。