「愛してるのは私だけ」
「何で……何で、佐藤が!!」
「……先輩、250番の刑を早く執行してくれるよう大臣に頼みましょう‼︎⁇」
レンは周囲のたくさんの人に愛されていたみたい。レンは優しいからその気持ちはわかるけど、レンを愛してるのは私だけでいいのに。
でも彼はちゃんと私の目を見て言ったもの。苦しそうに、だけど私にははっきり聞こえたわ。『あいしてる』って。本当は最期に私の名前も呼んで欲しかったけど、仕方ないわね。
「三原!」
「は、はい!」
「250番を独房に連れて行け。今すぐだ!」
「はい!」
レンが宿直の時の逢瀬、彼が疲れて眠ってしまった後でキッチンから取ってきたナイフはもちろん取り上げられたけど、すっごく甘美的な彼の血の香りは覚えてる。ものすごくいい香りがしたわ。だってこれで、レンは私のモノ。本当は彼の体も大事に取っておきたいけど、ここじゃ無理よね。
どれくらいの時間が経ったかしら。分からないけれど、レン、貴方の居ない日常はこんなにも退屈で、苦しかったのね。貴方のおかげで、愛する人が死ぬ、殺される気持ちが初めて分かったの。殺すことには慣れているのに、愛する人ってだけでこんなにも苦しいなんて、知らなかったわ。
「250番。今日は刑の執行日だ。着いてこい」
だからね。今は、ただ早く貴方に会いたい。
「貴女は……天道には、行けないかもしれません」
僧侶さんの言う仏教の六道輪廻の話だと、私は三悪道のどれかに生まれ変わるんでしょうね。さすがに天国に行けるほど、良いことをしてない事くらいは知ってるわ。
でも貴方も、最後は私のために規則を破ってくれたものね。また、私と一緒に居るために、共に堕ちてくれるかしら?
「最後に、誰かに遺言はありますか?」
貴方の居ない世界に、もう用なんてないけれど。
「佐藤さんのご家族に、こう伝えて。『私はずっとずっと、誰よりも強く、レンのことを愛してる』、って」
──彼を愛してるのは、私だけで良いもの。
「付き合いたい」と言ったら命拾いした僕の運命。 天城早雪 @Amayuki-35
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