地区予選 3位決定戦
週末は、等々中部地区の3位決定戦と決勝戦が始まる。
準決勝で負けた星彩だが、せめて3位で入賞して県大会では少しでも楽なブロックで出場したい。
本日も強豪な部活でもないので、現地集合で球場に集まる。
ロッカールームに入り続々とメンバーは着替えていき、メンバーではない部員達はベンチで水分補給用のタンクや棒入れ《バットスタンド》の準備を行う。
メンバーたちは着替え終わり、本日の対戦相手である久能学園の練習風景を見ていた。
「久能学園は安定して毎年県大会に出れるほど実力があるチームだ。油断しないように」
それを見て、浅野はみんなに聞こえるように言った。
「まぁ油断するやつはいないと思うが、なんだってこの学校が入賞できるかもしれないからな。 それに勝ったら部費が増える」
元々弱小だった星彩は、浅野と芝井が入ってから徐々に強くなった部だけにまだ入賞したことがない。
「部費が増えたら何を買いますか?」
浅野に質問してきたのは、2年の神園だ。
「そうだな。ピッチングマシンの中古や球、ネットとか欲しいな。 せめて、ここまで勝てるようなチームになったのだからピッチングマシンは欲しい」
「試合形式のフリーバッティングもいいけど、たまには基礎的な球の軌道を見ながら打ちたいわ」
芝井もピッチングマシンを買うのに賛成の意見を言った。
他の子も流れで部費でどんなものが欲しいか、話を咲かせ徐々に話題が脱線するのであった。
◇
球場の観客席には二つの団体が見える。
一つは、藤枝中央女学園のレギュラーメンバーでもう一つは、その対戦相手である梅ヶ島北農業高校のレギュラーメンバーだ。
それぞれ対極する形で席に集まっている。
白滝は隣に座っている薔薇ヶ咲に話しかける。
「なぁ千歳、お前はこの試合どう見る?」
「十中八九、星彩側が勝利ですね」
「千歳もそう思うか。 久能側もそこそこ強いが、前回戦った感じだとあの打順は強い、並みの投手なら点差は付けられるだろうな」
「そうですね、星彩は今年になって即戦力の選手が入ってきました。それにより前回は打撃と守備が以前より増したので、注目はやはり一年生メンバーと思いますの」
考察し合いながら、県大会やその後の大会のために一年生達がデータを取る準備に3台のビデオカメラを設置している。
「カメラ、パラソルを設置しました! 薔薇ヶ咲様」
「ご苦労様です。 そこのあなた」
「はいっ!」
「2台を星彩選手を集中的に撮りなさい」
「はいっ!」
簡単の命令を指示して、薔薇ヶ咲自身は双眼鏡を使い星彩側のブルペンで投手を観察してる。
「あの金髪ちゃんは出るのかなぁ?」
「金髪ちゃんだなんて……。いくら名前を覚えるのが苦手だからって、ちゃんとライバルの名前くらい覚えておきなさいよ……。 綺羅投手ならブルペンで投げていますの」
「あらぁ~」
九条がブルペンで投手を見ると、右手に持っていた素振り用のバットが震え、武者震いをしていた。
一方、梅ヶ島北農業高校側ではマネージャが1台のビデオカメラを設置していた。
「キャプテン、設置完了しました!」
「ふむ。ありがとう」
キャプテンと呼ばれている女性は、
インナーシャツから浮き出る割れた腹筋に平均よりも太い上腕と筋肉質でスレンダーだが、腰まで伸びる綺麗な茶髪のストレートロングに前髪を左右に別けるヘアピンがトレードマークな女性だ。
今年で3年になったこのチームのエースである。
エースだけはなく、2年生と3年生は普通の女子高生よりも筋肉質が多い。
それは、土地と高校による賜物だ。
梅ヶ島北農業高校は、山に囲まれた土地に建てられている。
土地が広く、通常授業に加え畜産や農業を学ぶ。
それにより、通常より運動量が多くなり自然と鍛えられたのだった。
「浅野投手に、次の対戦高には白滝と薔薇ヶ咲。 この地区は厄介な投手が揃ってるな」
「浅野投手なんてただ速いだけの投手、余裕ですよ」
「いや、高速スライダーが来ることが分かっても打てないもんずら」
この二人は、防御の要でありながら打者としても一流の二遊間コンビだ。
打率平均が3割強を超える好打者。
もう一人は
「そう言えば噂で聞いたのだが、東地区の海竜に新たな一年生をデビューさせたみたいだな」
「それは珍しいですね。あの強豪校が入学したての一年生を起用するなんて……」
「星彩も藤枝女子に対して4人の一年生を起用して、そのうち二人は投手としてそれなりに抑えたさー」
「強豪校じゃなくてもいきなり4人か、偵察の甲斐があるな」
グランドの二校が挨拶をして、試合が開始される。
次の試合を行う決勝予定の二校は、ウォーミングアップをせずに星彩側の様子を眺めていた。
天真爛漫な投手とヤンデレ気味な捕手が最強バッテリーを目指します! 抹茶プリン @Green_tea_pudding
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