新入部員の濡木さん

さらに新キャラが出ます。

まだ増えるかも?

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6限目が終わり、LHR(ロングホームルーム)が始まった。

教卓の前に担任の女性が立ち、前の席からプリントを配る。


「えーっと、プリントが行き渡ったかな?」


前の席から回って来たプリントに見ると、学年遠足の案内のプリントだった。

学年遠足とは年に一度4月にある学年行事である。

学年ごとに行く場所が決まっており、大型バスに乗って向かう。


「来週の金曜日に遠足があります。 まだ入学したてクラスに馴染めていない子もいるだろうし、来週までに4、5人でグループを組むように」


そう言い、先生はさらにもう一枚プリントを配る。


「グループが決まったら、メンバーを記入して提出するように。 この後はLHRは自由にしていいから、何ならこの時間でグループ決めて提出していいからね。 というか、して」


そう指示が出て、教室は話し声で賑やかになった。

先生は椅子に座り、本を取り出して読書し始める。


「セイちゃん、一緒にグループ組もう」

「あっレイちゃん! 私も誘うと思ってたとこだよ」


水瀬はすぐに綺羅の席に向かい、丁度立ち去っと生徒の席に座る。


「私もそのグループに入れてもらってもいい?」

「うん、さよちゃんも誘うと思ってたよ!」


隣の席から小夜香が話しかけてきた。

3人もメンバーが集まったことで、3人ともプリントにそれぞれの名前を記載していく。


「残り一人だね」

「セイちゃんは当てはある?」

「うーん……」


綺羅は賑やかな教室を見渡す。

すると、席から立たずにポツンと座っている、前が髪で隠れている黒髪の子がいた。

その子の周りには陰のような黒いオーラが放っていた。


「あの子は……、たしか……」

「目隠れの少女って昨日入部してきた子?」

「そう! せっかく野球部に入ってくれんだから仲良くしたい!」

「セイちゃん、誘うならグイグイと攻めてはダメだよ? ほとんど初対面だからね。 あと、すぐにスキンシップしてはダメよ」

「わ、分かってるよ、レイちゃん。 あとその目怖い」


水瀬は最後のセリフだけ綺羅に迫り念押しをする。

綺羅はその勢いによりたじろいでしまう。


「じゃあ、行ってくるね」

「……勧誘頑張ってね」

「無理やりはダメだからね」

「分かってるー」


綺羅は自分の席を立ち、プリントを持って彼女の方へ向かう。


「えーっと、たしか昨日、野球部に入った濡木ちゃんだよね?」

「は、へ、えっ、はい、そうですけど……」

「私は綺羅 星奈同じ野球部だよ! よろしくね!」

「はわわわ……、陽キャだぁ。 ど、ど、どうしよう」

「えっと……、濡木さんってまだ遠足のグループに入ってないよね?」

「は、はい、そうですけど」

「良かった! だったら一緒に組まない? 同じ野球部として仲良くなりたいから!」

「(グイグイと迫ってくるよぉ……、これが陽キャの光……)わ、私で良ければ……」

「濡木ちゃんありがとう! 折角空いた時間だし、一緒には話そっ!」


綺羅は濡木の前に手を差し伸べて、それを取る濡木を引っ張って二人の方へ向かう。


「(はわわわ……、柔らかくて温かい……)」


席に近づくと水瀬は綺羅が濡木を手を引っ張る姿を見て「やっぱりかー」と表情に出ていた。

綺羅は席に着くと、彼女を紹介する。


「……私は濡木 瞳と言います。 昨日から野球部に入りました」

「私は水瀬 麗華よ。よろしくね、濡木さん」

「私は篠田 小夜香。 気軽に小夜香って呼んでいいよ」

「私含めて、三人は野球経験者だから、いつでも相談乗るからね!」

「あ、ありがとうございます。 私、野球初心者で何も分からないですが、よろしくお願いします」


4人は、さっさとプリントにメンバーを記載して提出をする。

その後4人は残った時間で野球談議をする。


「そう言えば! 昨日の練習で見てたけど、濡木ちゃんって目っていいよね」

「そ、そうですか?」

「うん! レイちゃんとさよちゃんが守備練してる時に私、新入部員の初心者達と一緒にキャッチボールに参加してたけど、濡木ちゃんブレブレな球も手が届く範囲についてきたの見たもん!」

「濡木さんってこれまでスポーツはやったことある?」

「いえ、ないです……」

「初心者で目が慣れていない状態で、球の軌道を見れるのは凄いよ。そこのセイちゃんは、始めたてのころはキャッチボールで山なりの球でも外してたものね」

「レイちゃん! 私のそんな昔の話を覚えてたの!?」

「ふふっ」

「わ、私、このまま頑張れば上手くなれるのでしょうか……? 私、運動音痴で体育の評価も低かったですし……」

「よく野球部に入ろうと思ったよね」

「今のこの性格を変えたくて高校デビュー?してみたかったんです。 それに……、野球は少女漫画を見てたのでスポーツの中では、野球に興味がありました」

「それは言いことね。 野球の楽しさを知ってもらわないとね」

「さよちゃんの言う通り! 最初はウォーミンングアップとか基礎練は厳しいかも知れないけど慣れて、試合に出れるようになると楽しくなるよっ!」

「はい、ま、まずは野球の楽しさを知るためにスポーツゲームもやりますね」

「うん! 何であれ野球に興味を持つことはモチベーションが上がるからねっ!」


この時から濡木という少女は綺羅という陽キャの光に照らされ、徐々にと変化していくのであった。

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