第10章〜どらドラ!〜⑩
「黒田クン……ううん、クロ――――――努力の成果、見せてもらったよ。それに、やっと、あなたが思ってることを言葉にしてくれた……ありがとう」
そう言って、潤んだような瞳で、こちらを見つめるシロ。
そのアーモンドのような美しいカタチの瞳で見つめられ、オレは、これまで以上に高まる、自分自身の鼓動を感じながら、彼女の言葉の続きを待つ。
「一生懸命にがんばる姿は、あの頃と変わってなかった――――――今日も、とっても素敵だったよ」
微笑みながら言葉を続けるシロに対して、目の前のオレだけでなく、ステージ前の観客やステージに立つクラブ関係者たちの誰もが、彼女を見守っているのを感じる。
オレが、その緊張に耐えきれなくなり、思わず、ゴクリ――――――と固唾を飲むと、シロは再び口を開いた。
「そんなクロの姿を見せてもらって、あらためて、思ったの――――――」
※
その言葉のあと、タップリと間を取る白草四葉に、告白の当事者だけでなく、ステージの二人を見守るすべての人間が、拳を握りしめた。
ステージ前で立ち尽くす桃華は、目を固く閉じ、放送室のモニターでライブ中継を確認する壮馬は、過剰な演出に浅くため息をつく。
「焦らし過ぎだろ――――――」
そして、彼女は、ようやく最後の言葉を口にした……。
「やっぱり、クロとは、
白草四葉の口から、告白の返答が発せられた瞬間、ステージの周辺とモニターやスマホで、ことの成り行きを注視していた人々の世界は制止した。
「へっ!?」
「えっ!?」
「「えっ!?」」
「「「えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!?」」」
告白の当事者である竜司、モニターを注視していた壮馬、ステージ前で一部始終を目撃していた桃華と葵、さらに、観客席から、一斉に疑問符と悲嘆の声が入り混じったような喚声が上がる。
「あ〜〜〜〜っと、なんと、なんと! ここで、黒田くん相手にも、まさかのゴメンナサイだぁ〜〜〜〜〜!」
同時に、吹奏楽部副部長・寿美奈子のアナウンスが校内に響き渡った。
そのかたわらでは、広報部部長の花金鳳花が、右手を頬にあてながら、
「あらあら、まあまあ……これが、ホントの『大ドンデン返し』ね……」
と口にしながら、哀れな後輩部員の姿を見守っている。
さらに、ミンスタライブの中継動画は、予想外の展開にさらに加熱し、コメント欄には、さまざまな書き込みが踊った。
======================
えっ四葉チャン、マジで!?
(ノ∀`)アチャー
まさかの展開に草wwwww
これは、恥ずかしいヤツだべ
四葉チャン、ハードル高すぎ
======================
そうして、いまだ喧騒のおさまらない中、ステージ中央で茫然自失したまま、
「そ、そんな……なんで…………」
ショックを隠せない竜司に、四葉は、余裕たっぷりの表情で、
「そんな訳で、これからも、クラスメートとして、仲良くしてね、黒田クン」
と、返答し、ニッコリと微笑んだ。
彼女は、さらに、目の前で、唖然としながら立ちすくんでいる彼の耳元に、顔を寄せ、内緒話を打ち明けるようにささやいた。
「ドラ・ドラ・ドラ! われ、復讐に成功せり、や……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます