第10章〜どらドラ!〜⑩

「黒田クン……ううん、クロ――――――努力の成果、見せてもらったよ。それに、やっと、あなたが思ってることを言葉にしてくれた……ありがとう」


 そう言って、潤んだような瞳で、こちらを見つめるシロ。

 そのアーモンドのような美しいカタチの瞳で見つめられ、オレは、これまで以上に高まる、自分自身の鼓動を感じながら、彼女の言葉の続きを待つ。


「一生懸命にがんばる姿は、あの頃と変わってなかった――――――今日も、とっても素敵だったよ」


 微笑みながら言葉を続けるシロに対して、目の前のオレだけでなく、ステージ前の観客やステージに立つクラブ関係者たちの誰もが、彼女を見守っているのを感じる。

 オレが、その緊張に耐えきれなくなり、思わず、ゴクリ――――――と固唾を飲むと、シロは再び口を開いた。


「そんなクロの姿を見せてもらって、あらためて、思ったの――――――」



 その言葉のあと、タップリと間を取る白草四葉に、告白の当事者だけでなく、ステージの二人を見守るすべての人間が、拳を握りしめた。

 ステージ前で立ち尽くす桃華は、目を固く閉じ、放送室のモニターでライブ中継を確認する壮馬は、過剰な演出に浅くため息をつく。


「焦らし過ぎだろ――――――」

 

 そして、彼女は、ようやく最後の言葉を口にした……。


「やっぱり、クロとは、、って――――――」


 白草四葉の口から、告白の返答が発せられた瞬間、ステージの周辺とモニターやスマホで、ことの成り行きを注視していた人々の世界は制止した。


「へっ!?」


「えっ!?」


「「えっ!?」」


「「「えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!?」」」


 告白の当事者である竜司、モニターを注視していた壮馬、ステージ前で一部始終を目撃していた桃華と葵、さらに、観客席から、一斉に疑問符と悲嘆の声が入り混じったような喚声が上がる。


「あ〜〜〜〜っと、なんと、なんと! ここで、黒田くん相手にも、まさかのゴメンナサイだぁ〜〜〜〜〜!」


 同時に、吹奏楽部副部長・寿美奈子のアナウンスが校内に響き渡った。

 そのかたわらでは、広報部部長の花金鳳花が、右手を頬にあてながら、


「あらあら、まあまあ……これが、ホントの『大ドンデン返し』ね……」


と口にしながら、哀れな後輩部員の姿を見守っている。

 さらに、ミンスタライブの中継動画は、予想外の展開にさらに加熱し、コメント欄には、さまざまな書き込みが踊った。


======================


えっ四葉チャン、マジで!?


(ノ∀`)アチャー


まさかの展開に草wwwww


これは、恥ずかしいヤツだべ


四葉チャン、ハードル高すぎ


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 そうして、いまだ喧騒のおさまらない中、ステージ中央で茫然自失したまま、


「そ、そんな……なんで…………」


ショックを隠せない竜司に、四葉は、余裕たっぷりの表情で、


「そんな訳で、これからも、クラスメートとして、仲良くしてね、黒田クン」


と、返答し、ニッコリと微笑んだ。

 彼女は、さらに、目の前で、唖然としながら立ちすくんでいる彼の耳元に、顔を寄せ、内緒話を打ち明けるようにささやいた。


「ドラ・ドラ・ドラ! われ、復讐に成功せり、や……」

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