第10章〜どらドラ!〜⑨
さらに、ステージ上のサプライズの模様は、スピーカーを通して校内の隅々にまで届き、その音声が確認できる校内の各所から、ざわめきがあふれる。
======================
キャ〜〜〜〜〜♡
愛の告白、キタ━(゚∀゚)━!
マジもんの告白キタ!
告白の瞬間とか初めて見たべ
めっちゃ、青春やん!
ざわざわざわざわwwwww
======================
《ミンスタライブ》は、ライブ配信の当事者が、同級生の男子から愛の告白を受けた、ということで白草四葉のもはや収集がつかないくらいのお祭り騒ぎになっている。
想いを告げ終えたものの、緊張した面持ちのまま、四葉の目を凝視する竜司。
一方の四葉も、頬を紅潮させたまま、「クロ……」とつぶやき、竜司を見つめる。
「なんと、サプライズは、黒田くんによる白草さんへの《愛の告白》だった〜!!」
客席を盛り上げるべく、アナウンスを続ける吹奏楽部副部長は、
「さぁ、想いを告げた彼に、彼女は、どう応えるのか!?」
と、さらに場を煽るように、声のトーンを一段と上げる。
聴衆をたきつける術に秀でた彼女の話術で、ステージ前のボルテージは最高潮である。
だが、しかし――――――。
ステージの上には、ヒートアップする場内の盛り上がりに、納得が行かないと感じている面々が存在しているようだ。
「「「ちょっと、待った〜〜〜!!」」」
ステージの後方から、大きな声が上がる。
声を揃えて宣言したのは、野球部の佐藤、サッカー部の堂安、ラグビー部の仲村の三名。
いずれも、移動式のフロートで、縁の下の力持ちとして、パレードの成功に大きく貢献したクラブの代表者たちだ。
「なんと! ここで、体育会系の面々から、待ったが掛かった!」
格闘技のテレビ中継さながらに、実況を続ける美奈子の隣には、いつの間にか鳳花が近寄り、
「『ちょっと待ったコール』なんて、私も初めて見たわ。しかも、みんな、タイミングもバッチグー!」
と言って、縦に握った両手の拳に、親指だけを上げるサムズアップのポーズで感想を語る。
そんな、司会進行の語りをよそに、体育会系の面々は、サプライズの主役になろうとしていた同級生男子に異議申し立てを行う。
「おい、竜司! パレードで一番目立った上に、自分だけ白草さんに告白するとか許されると思ってんのか!?」
「そうだ、そうだ! オレたちだって、クラブ紹介の時の白草さんの姿に目を奪われていたことくらい、お前も知ってるだろ!?」
「なんにしても、おまえ一人だけ、美味しい思いをするなど、絶対に許さん!!」
それぞれ、口元は笑っているように見えるものの、目付きは真剣そのもので、竜司の周囲だけ、ただならぬ雰囲気が漂っている。
そして、三人の醸し出す気迫にたじろいでいる竜司を尻目に、四葉の方に向き直った三人は、
「白草さん、クラブ紹介や今日のステージ最高でした! オレと付き合ってください!」
「先月、転入してきた時から素敵だなと思ってました! オレと付き合ってください!」
「実は、ミンスタグラムをずっとフォローしてました! オレと付き合ってください!」
と、それぞれの想いを転入生に告げた。
さすがに、この展開は想定外だったのか、最初は困惑したようすの四葉であったが、竜司にチラリと目を向けたあと、その表情を確認してから、
「みんな、ありがとう」
と、笑顔に戻り、穏やかな調子で三人に応じる。
そして、ゆっくり、しかし、はっきりとした口調で、
「三人の気持ちは、とっても嬉しいんだけど……わたしは、転校してきたばかりで、まだ、みんなのことを良く知らないから……だから……ごめんなさい」
と、体育会系三名の告白をキッパリと断った。
「おお〜っと! ここで、野球部佐藤くん、サッカー部堂安くん、ラグビー部の……誰だっけ? あ、仲村くん? 三人の告白は、玉砕に終わった〜」
鳳花のアシストで、それぞれの部員の名前と告白の結果を告げた美奈子のアナウンスに、会場からは、
「「「あぁ〜〜〜」」」
やっぱり、ダメだったか……と、落胆の声が上がった。
一方、企画者たちすら予想できなかったサプライズの連続と、自分たちがフォローする白草四葉の恋愛強者ぶりに、《ミンスタライブ》のコメント欄は、まだまだ盛り上がりを継続している。
======================
四葉チャン、モテモテ!
ごめんなさいキタ━(゚∀゚)━!
あ〜、なんかもったいない
いきなり告白してもダメだべ
やっぱり、本命は黒田くん?
======================
ステージ上で討ち死にを果たした三名の体育会系男子が、スゴスゴと舞台を降りる中、息を整えた四葉は、あらためて、竜司に向き合う姿勢を取った。
そして、その一世一代の愛の告白に応えるべく、ジッと彼を見据える。
※
ステージ上で上級生である黒田竜司と白草四葉が見つめ合う中、保健室を駆け出した佐倉桃華は、中庭に到着し、壇上の二人に何やら声を掛けようとしたが――――――。
ステージ前での警備も担当している三年生の広報部部員・荒木から、
「はい、イベント中はお静かにお願いしま〜す」
と、注意を受けて、口をつぐむより他はなかった。
そこに、下級生を追いかけてきた天竹葵が、息を切らせながら、たずねる。
「佐倉さん、体調は大丈夫なの?」
「えぇ、
桃華は、一言だけ答えると、悔しさを噛み殺すように、グッと唇を噛んだ。
そうして、ステージ前に到着した二人が、舞台を見上げると、四葉が、ゆっくりと口を開いた――――――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます