第9話

 昔と比べると、カーマは随分と大きくなった。国の法整備も浸透して、今では保安官まで居る。……というか、僕がその保安官なのだけれど。

「よう保安官」

 声をかけてきたのはスティーブおじさんだった。にこやかな笑顔で挨拶をしてきたので、僕も挨拶を返す。

「おはようございます。スティーブおじさん」

「おいおい、何度も言っているだろう。おじさんは勘弁してくれ」

「そうはいっても、随分と老けてしまったじゃないですか。もうおじさんの方が似合ってますよ」

「ほうコイツめ、言ってくれるようになったじゃねえか」

 僕は首を持たれて頭を拳でぐりぐりされる。痛かったが、心地よい痛みだった。

「今日も行くのか?」

「はい」

「そうか、気をつけてな」

「ええ。ありがとうございます。良い一日を!」

 そう言って僕は街を歩いていく。そして、しばらく大通りを歩いて、【カーマタウン】と書かれた大きな門を通り抜ける。それでもまだまだ歩いていき、街の外れに行くと、僕は墓地についた。

 とある大きな墓石の前で僕はそれに手を合わせる。墓石には、【カーマ襲撃事件死亡者供養】と書かれてある。僕はそこに手を合わせながら、昔のことを思い出した。


 ジャックが死にかけたあの日、奇跡的にジャックは一命を取り留めた。彼が目覚めたとき、僕らは熱く抱擁した、ひたすらに泣いた。その様子を、アリシアさんは複雑そうな表情で見ていた。

 それからジャックはまた療養生活を送り、一年経つとアリシアさんと共に村を出ていった。今までの罪を償うと、ジャックは言っていた。そして、またここに戻って来る時、お前の立派な姿を楽しみにしておくと二人に言われた。

 ……僕は今、あの二人に認められるような人間になれているだろうか。

「おい、お前蜂蜜獲りにいけよ!」

「え、でもそれって森の中じゃ」

「なんだよ、俺のいう事が聞けねえのか⁉」

 そんな子供の言い争う声が聞こえる。僕は思わず笑って呟いた。

「因果、なんだな」

 さて、仕事をしよう。

 僕はいじめを止めるため声のする方へ駆けて行った。

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