第2話 深化
「今日は久しぶりに5階層に行ってみるか」
「そうね」
あのボス戦以降一度も五階層には立ち寄ってなかったものの、昨日ミカエレギルドが五階層のボスを倒したということを聞いたので久しぶりに行ってみることにした。
「今回はボスはいないはずだけれど一応準備していきましょう。」
「そうだな」
念には念をいれるのは大事なことだ。
「久しぶりに来たけどあんまり変わってないな。」
結局なぜボスが復活していたのかは分からなかった。
「それはそうよ。そんなにすぐダンジョンは変わったりしないわ。」
ただ今回は以前よりも魔力と力が増しているのもあり、簡単に突破できた。
「そのままいけるとこまで行きましょう」
「そうしよう。いける階層を増やしておきたいし。」
6階層、7階層まで一気に駆け下りていった。途中、トカゲ型のモンスターのリザードに不意を突かれたりしたものの火力で押し切って倒すことが出来た。
「ここまで来るともう出稼ぎに来ている人はいないわね。」
「まあ、ここまで来る必要は貴重な素材以外でないからな」
出稼ぎに来ている人達は大体いても4階層までだ。1階層、2階層はそういう人も多いためかダンジョン内なのに賑やかなことが多い。
話しているうちに俺たちは8階層の階段の前までたどり着いた。
「あそこ、ラピッドが大量にいるな。ここまでにして気づかれないように引き返すか?」
ラピット。ウサギ型のモンスターで攻略者を見つけると群れで襲ってくる。近距離の攻撃しかないととてもやっかいな相手なのだが。
「大丈夫よ、私に任せて」
「大気に満ちる空気よ、凍てつく槍で敵を貫け。」
「フロストスピア!」
俺が最初に見たときの5倍くらいの大きさで氷の槍が飛んでいった。
そしてラピットの群れを壊滅させてしまった。
「ええ、、、、」
十分範囲魔法ではないだろうか、、これは、、、。
「さあ、これで8階層にいけるわね!」
心なしかマリンが喜んでいるのは気のせいだろうか、、。
そうして八階層にはいっていくのだった。
「8階層はどんなモンスターがいるんだ?」
「んーと、いままでいたリザードやラピッドのほかにモグラ型で赤い体のレッドモール、ペリカンのような嘴を持っているガランがいるわ。」
「ほんとにマリンって物知りだな。いつも助かるよ」
「憐也はもっと勉強しなさいよね」
どうやら俺が勉強不足なだけらしい。
カンッ、カンッ
8階層を進んでいくと、石を叩くような音がしてくる。
「なんだろう。この音」
カンッ、カンッ
「あそこで何かやってるわね」
鉱石を採掘しているようにみえるが、それだけなら気にすることはない。ただ、
どう見ても10歳くらいの子どもだったのだ。
「なあ、君はどうやってここまで来たんだい。」
「お兄さん誰?」
「俺は憐也だ。君の名は?」
「リュウ」
「リュウっていうのか。なんでこんな所にいるんだ?」
「見て分からないの?鉱石を取ってるんだよ」
そりゃそうだ。見て分かる。俺が悪かった。
「どうやってここまで来たんだ?強力なモンスターもいたし、見たところリュウは1人じゃないか」
「うん、1人だよ」
「よくこんな所まで来れたな」
「何にも戦わずにここまできたんだ。走るのは得意だから」
走るのは得意って言ったってなあ、一度もモンスターと戦わないなんてことが出来るのか?
「じゃあ僕はこのまま9階層に行くから。じゃあ」
と目にも止らぬ早さで行ってしまった。
後ろで見ていたマリンが、
「あれは身体強化ね。俊敏性を格段にあげているわ。一度も戦ってないって所を聞くと俊敏性に特化していそうだけど」
マリンの話によると魔力を体に流し込むことで自身の身体能力は強化出来るらしい。
「そうなのか」
結構便利そうな能力だな。
「俺たちも9階層まであがるか。」
「そうね。そこまでなら安全でしょう。」
リュウを追うように9階層まで上がっていった。
場面は変わって街の中。
「前回は覚醒者として申し分ない結果を残してくれましたが、今回はいかがなさいますか?」
ローブの男は言う。
「そうだな。あれを投入しよう」
もう1人のローブの男は答える。
「かしこまりました。ではそのように致します。」
「9階層は8階層とモンスターは変わらないのか?」
「ええ、変わらないはずだわ」
にしては静かすぎる気がする。8階層はラピットの鳴き声やガランの羽音がしたのに
「たまたまか、、、。」
「ガギャァァァァ!」
「え!?何この鳴き声!」
「リュウが心配だ。いってみよう!」
そこで目にしたのは白い大きな鳥だった。足と目だけが黒くこっちを見つめている。
「カラドリウス、、、。」
「あいつをしってるのか!」
「ええ、情報だけは知っているけど、あれは15階層以上でしかでないはずよ!なんでこんなところに、、」
カラドリウスの下をみると、
「リュウ!」
ただ、おびえているのか動こうとしない。
「やるしかないか」
「そうね」
炎舞でまずは斬りかかる。威力自体は上がっているもののあまり効いてはなさそうだ。
カラドリウスは、飛び回って炎を吐いて攻撃してきたり、高速で突撃してきたりする。なんとか躱しながら、
「炎雷!」
「ガギャァァァ!」
やはり雷が効くらしい。
「蒼き我の魂よ、呼応せよ。楔を解き放って力を示せ。」
「エターナルブラスト!」
「ギィィィィィ!」
マリンの魔法が直撃したカラドリウスは、空高く飛んで逃げていった。
「リュウだいじょうぶか!」
「ありがとう助けてくれて。」
「どうしてこんなところにまでくるんだ?」
「いろんなものを発明して有名になりたいんだ。そのために貴重な素材を取りに来てる。」
「そうだったのか。なら俺たちとくるか?」
「え?」
「もっと上まで行って良い素材取りたいだろ?」
「でもいいの?戦闘じゃ僕、役に立たないよ」
「いいんだよ。そのかわりいいもの作って俺たちに使わせてくれよな!」
そういって笑いかけた。
「分かった!」
こうして、俺たちのパーティの三人目の仲間にリュウが加入した。
憐也 スキル一覧
覚醒何かのスキルに突然目覚める確率が上がる
炎舞剣に炎を纏って攻撃する。
攻撃力上昇
火属性
物理属性
炎雷剣に炎と雷を纏って攻撃する。
攻撃力上昇
火属性
雷属性
火事場 ピンチになると攻撃力上昇
マリン スキル一覧
フロストスピア 発動キー「大気に満ちる空気よ、凍てつく槍で敵を貫け」
氷属性
魔法属性
小威力
エターナルブラスト発動キー「蒼き我の魂よ、呼応せよ。楔を解き放って力を示せ。」
氷属性
魔法攻撃
中威力
リュウ スキル一覧
身体強化(俊)足がとても速くなる。
最近おかしな出来事が立て続けに起きている。この前の五階層のボス、今回のカラドリウス。
「何か不穏な事が起こってないと良いが、、」
「ん?何か言った?」
マリンに聞かれていたようだ。
「いいや、なにも」
「ねえ、憐也さんとマリンさんはどこにかえるの?」
「宿かな」
「私はダンジョン近くのホテルに泊まっているわ」
「なら、うちに来ない?1人じゃ大きすぎる家があるんだ。」
「私は遠慮するわ。じゃあまたね。」
「俺は行ってみようかな」
「わかった!案内するね!」
最初とは比べものにならないくらい明るくなったな。
「ここだよ!」
連れてこられたのは、街の中心から少し離れたレンガ作りの家だった。
「おお!すごいな、、、」
「中も案内するよ」
入ってみると綺麗なお風呂だったり、大きな部屋やキッチンもあり、いままで泊まっていた硬いベットの宿とは大違いだった。
「この部屋を憐也さんの部屋にしていいよ!特にまだなにもおいてないけど」
「いいのか!?」
「うん。」
こんなに広々と使えるなんて夢のようだ。
「でも、こんな家なんで持ってるんだ?」
「昔は両親の家だったんだけど、もういないんだ。」
「そうだったのか」
夜はリュウがご飯を作ってくれた。毎日作っているから得意なようだった。
「鉱石を集めて何を作ってるんだ?」
「んーーいろいろかな。武器や防具も作るし、この家を改築したりとかもしたし。」
「結構いろいろするんだな」
「ものを作るのは楽しいからね。」
その後はお風呂で体を洗い流して、まだベットはないから今日の所はリビングのソファーで寝た。リュウは自分のベットを使って良いよと言ってくれたが、部屋をもらえるだけでもありがたいのにそこまでされては年上の自分が恥ずかしくなるので断った。
「どうでしたか?」
「まだまだ足りないな」
「そうでしたか」
「あいつにはもっと強くなってもらわなければならない。」
そういってローブの男達は消えていった。
今回も換金所の職員に10階層にいまボスはいるかどうか聞いてみたがいないそうだった。
「多分、今回は出てこないと思うけど、、、」
前回のこともあるしなあ、、、。
あ、あそこにいるのは
「お久しぶりです。ラビアさん」
「憐也じゃないか。元気になって何よりだ。」
「ラビアさんはどちらにいかれるんですか?」
「35階層の攻略だな。お前は上位攻略者の間では噂になっているぞ」
「そうなんですか?」
「ああ、実質五階層のボスを一人で倒したんだからな。」
「あれはたまたまです。」
「たまたまでできることじゃないさ。うちの団長もお前のことを気にかけていたぞ」
「ミカエレギルドの団長さんにも知られているなんて光栄です。」
まあ俺はその人全く知らないんだけど、、。
「でもこんな早朝に換金所の前にいるなんて。ダンジョンで鍛錬ですか?」
「私も弟子みたいなのが一人できてな。その鍛錬に付き合っていた。」
「そうなんですね」
ラビアさんの弟子か。きっと魔法が凄い奴なんだろうな。
「お前は今日はダンジョンに行くのか?」
「はい。今日は10階層に挑戦しようと思います。」
「10階層か。この前タルタロスギルドがボスを倒していたから大丈夫だろう。ただ、気をつけるんだぞ」
「もちろんです。いつか一緒に戦える日を楽しみにしています。」
「ああ、じゃあな」
最前線の35階層まではまだまだ長そうだ。
「そろそろ、俺も魔法の1つくらい覚えてみようかな、、」
今日から初めての3人でのパーティだ。とはいえやることはいつもと変わらない。前線で俺が戦って後ろからマリンが援護する。この形だ。そこにリュウも前線で戦う。持ち前の速さで敵をかく乱するのが狙いだ。
「今は10階層にボスはいない。今のうちに攻略してしまおう。」
「そうね。危険がない今なら10階層も通れるわ」
「僕もなるべく頑張るね!」
9階層まで来たが、連携も問題なかった。
「リュウって思いのほか戦えたんだな」
凄く失礼なことを思ったが、戦えないと言っていたので驚いた。
「さすがに全く戦えないってほどじゃないよ。」
「一人で前線にいるよりやっぱり楽だな。二人だと。」
身体強化を生かした立ち回りで8階層までの敵は翻弄してきた。
9階層もこのまま進んで10階層手前の階段までやってきた。
「よし、これを登ったら10階層だ。気を引き締めてね。」
「ええ、分かってるわ。」
10階層に上がるとそこには、、、人がいた。
真っ黒なローブを被った人だ。
「ようこそ、10階層へ。憐也君。」
「誰だ。なんで俺の名前を知っている?」
「君は有名なんだよ?5階層のボス、一人で倒したでしょ」
そんなに知られていたのか。
「何の用だ?」
「君は忘れているみたいだから教えてあげにきたんだ。」
「なにを忘れていると言うんだ。」
「君は何の目的でダンジョンに潜っているんだい?」
「このダンジョンを攻略するためだ。」
「そう、君はなんとしてもこのダンジョンを攻略しなければならない。そのためには強くなることが必要だ」
「当たり前じゃないか!」
イライラするローブの男の物言いに冷静さを失ってくる。
「なのになぜボスモンスターを避けて通る?」
「死んだら意味ないからじゃないか!」
「そうか。では良いことを教えてあげよう。君に限っては死なないで強くなるのではなく、死ぬとしても強くなることが最優先だ。もし死んだとしても私たちはまた君の代わりを探すだけだからね。」
「どういうことだ?」
「まあ、とにかく今の君のままならこの先無駄死にするだけだから家に帰ったほうがいいよ。」
「なんだと!」
「言っても分からないようなら、、。」
そう言ってローブの男は斬りかかってきた。
「なっ、、、、」
二本の剣でローブの男の太刀を受け止める。
「ここで帰すまでだけど。」
一旦距離を取って最大火力の炎雷で突っ込む
「炎雷!」
ガキンッ。
「君の剣は軽すぎる。そんなんじゃ僕に傷もつけられない。」
「がっっ、、、」
太刀で受け止めてはじき返された。
すぐ立ち上がってもう一度斬り込みに行くが、、
「いない、、、」
「君は遅すぎる」
後ろと思ったときには既に斬られていた。
「なんで、、、、、、」
消えゆく意識の中でローブの男は言った。
「あ、忘れてた。僕の名前はカペラだよ。」
そうして俺の意識は完全に途切れた。
「俺はどうなったんだ、、、」
「憐也はあのローブの男に斬られて意識をなくしてたのよ。」
そうだったのか、、、
「ここは?」
「リュウの家のベットよ」
「そうか、、」
「あの男、憐也を斬った後私達には何もせず去っていったのよ」
「痛たた、、、」
「まだ起き上がっちゃだめよ。直ったわけじゃないんだから。でも治りは早いみたいだから大丈夫そうね」
まだ傷はあるもののもう大分塞がっている。
「どれくらい意識がなかったんだ?」
「二日ね。」
「ずっといたのか?」
「ずっとじゃないけど、殆どいたわね。」
結構な時間看病してくれたみたいだ。
「ありがとな、マリン」
「別に、あなたが死んだら私がダンジョン攻略できなくなるじゃない。」
素直じゃないやつめ。
「憐也さん気がついたの?」
「リュウもありがとな。心配かけてすまなかった。」
「ほんとに良かったよ!看病はほとんどマリンさんがしてたけどね。」
しばらく安静にしてた後、またダンジョン攻略に向けて準備を始めることにした。
ただ、俺が強くなるためにどうしたらいいかは見つからないままだった。
俺は強くなるためのヒントを得るために、また古びた図書館に来ていた。
文献を読み漁っていると、気になる本を見つけた。
「魂の昇華か、、、」
文献によると、この魂の昇華を行うとその者の基礎能力が格段に上がるらしい。この魂の昇華は深化と言われ、詳しく読んでいくと、力、守、俊、魔力の4つの能力が格段にあがるということだった。
「ただ、肝心の方法がなぁ、、」
書いてないし。何か大きなものを成し遂げた時、深化の条件を満たす。
「でも深化した感覚なんてものはなかったし、まだ要件を満たされていないのか?」
かといってこんな古い文献に書いてあるということはあまり表向きになっていない方法なのか、、?
昔は昇華師という人達がいて、その人達が昇華の条件を満たした人を昇華させるという役割だったそうだ。
「昇華師なんて今もいるのだろうか。」
次の日、昇華師の事を聞きに雑貨屋に来ていた。
「おじさんいる?」
「おう、元気してたか?」
「まあ、何とかね」
ついこの前大怪我させられたけど。
「突然なんだけどさ、昇華師について知ってることはない?」
「昇華師か。大きなギルドには大体一人はいるな。」
「え、そんなにいるの?」
もっと珍しい人なのかと思ってた。だって全然話にも聞かないし。
「そんなにといっても。大きなギルドはこの町に5つくらいだからそんなに人数はいないけどな」
「小さいギルドやパーティの人はどうしてるの?」
「そういう人達は大きなギルドの人の伝手でそのギルドの人にしてもらうか、商売をしている個人の昇華師にお願いするしかないだろうな。」
「なかなか大変だ。でも人数が少ないのはなんでなの?たくさんいれば深化しやすくなるのに」
「それは昇華師は天使族にしかできないからな」
「天使族?」
「ああ、天使族はこのダンジョンとルミナスの街が出来たときに一緒に出現したとされる人々だ。」
「そんな人がいまも生きて昇華師をしてるの?」
「さすがに今はいないさ。1000年も前のことだからな。いまはその末裔が昇華師をしている。」
「なるほどね」
「天使族は深化の条件を満たしているかを見ることが出来て、特殊な魔力で深化させるんだ。」
「じゃあ俺が深化するには個人の昇華師か大きなギルドの伝手を辿るしかないか。ラビアさんにきいてみようかな。」
「その必要はないよ。」
突然店の奥からでてきたミズキに驚かされた。
「その必要はない?どういうことだミズキ」
「私、できるから。」
「深化?」
「うん、そう。憐也が深化の条件を満たしていればね」
「じゃあみてもらってもいいか。」
「わかったわ。」
そう言うとミズキの瞳の中に十字架のような紋章が浮かび上がった。
体の中が少し温かい気がする。
「一段階目の深化の条件は満たしているわ。」
「え、、、」
なにかやっただろうか、、。思い当たるのは5階層のボスくらいか?
「そのまま深化させるわね。」
力がみなぎるような気がする?あんまりそんな気はしないけど。
「あんまり変わらないんだな」
「ダンジョンに行ったらよく分かるんじゃない?」
といわれたので一人でダンジョンに行ってみることにした。
「7階層まで来たけどここまではあんまり強くなった感じはしないな。」
前から苦戦してたところではなかったから感じないだけかもしれない。
「相手が複数体でも被弾しなくなったな。俺が速くなったのか。」
向かってきた敵に炎舞を放つ。
「一撃か。威力も上がってるな。やっぱり能力が全体的にあがってる。」
ただ自分の能力がある程度見れるようなものがあれば分かりやすいんだけどなあ。
「憐也さん!」
「どうしたリュウ」
家に戻ってくつろいでいると、焦った声で話しかけてきた。
「換金所で自分の能力が見れる道具を配ってました!」
はいどうぞ、といってリュウが紙を手渡してくる。
「なんだって!」
ちょうど欲しかったものじゃないか。
「おいおい、なんでこんなものが配られてるんだ?」
「なんでも、この前の5階層の事件で自分の能力値を知っておいた方が戦力的に無理な階層には立ち入らないのではという観点から研究が進められていたみたいです。ただ、この事件の論点はそこじゃないとは思いますけどね。」
「まあでももらえるものはもらっておいて損はないな。」
「そうですね。」
「とにかく自分の能力を見てみましょう。」
説明を見るとこの紙をもって魔力を入れるイメージをすれば良いようだ。
ステータス★1
STR380攻撃力
DEF270防御力
RES450抵抗力
AGI230素早さ
MAG230魔力
これはどうなんどろう。高い能力なんだろうか。一番高い能力は抵抗力か。その次に高いのは攻撃力だな。
「憐也さんどうでした?」
「ああ、こんな感じだ。」
「凄い!能力高いですね!」
「リュウはどんな感じなんだ?」
「僕は、一番高くてAGIの280ですね。あとはほとんど100以下です。」
「そうなのか」
「俺の紙の右上に星のマークが付いているけどこれはなんだろう。」
「説明書によると深化回数みたいです。」
ふむ、★1とかいてあるということは深化にももしかすると段階があるのかもしれない。
10階層でローブの男に襲撃されてしばらくたったある日、俺は早朝にダンジョンの近くに来ていた。
「ラビアさん!お久しぶりです。」
出待ち3日目でようやく会うことができた。
「憐也か久しぶりだな。どうした。」
相変わらず柔らかい口調で話しかけてくれる。
「少しお願いがあってきました。」
「どんなお願いだい?」
「今度10階層のボスに挑戦しようと思うのですが、一緒に来てくれないでしょうか。」
「なるほど、、、。少し考えさせてくれ」
「分かりました。」
「また明日、この時間、この場所で結論を出そう。」
自分でも無茶苦茶なお願いをしている自覚はあるのであまり期待しないで待っておこう。
次の日の早朝また同じ時間にラビアさんはやってきた。
「憐也、昨日の話なんだが。すまない。私は行くことはできない。」
「そうですか。」
もとから多忙の身のラビアさんにお願いしているんだ。ダメ元である。
「だが、代わりの者を用意した。」
「代わりのもの?」
「すまん!遅れた!!」
時計台の方から大男が走ってくるのが見える。
「寝坊か?マーズ」
「そんなに怒らないでくれよ。ちょっとだけじゃないか。」
「なんでこう、マーズは時間に緩いんだ。」
そういってラビアさんは嘆いている。
「この人が代わりの人ですか?」
「ああ、そうだ!俺が代わりの人だ!」
もしかしたら変わり者を用意してくれたのかもしれない。
じとーっとマーズの方を見ていると、
「すまんな。こんな感じでも実力は一級品なんだ。前にお前のことをうちの団長が気になっているといったが、マーズがうちの団長だ。」
「え!?」
「俺がミカエレギルド団長のマーズだ。よろしく!」
背中に大剣が入った鞘を掛けて、グーサインをしている。
「憐也です。よろしくお願いします。」
これがミカエレギルド団長のマーズとの初めての出会いだった。
「よし、10階層のボスの挑戦だったな。期待させてもらうぜ。」
「俺も初めてみる相手なのでどうなるかは分かりませんよ。」
今回は俺とマリン、マーズさんの3人でダンジョンに来ている。リュウは家で発明をしていて不参加だ。
「なんでミカエレギルド団長の人が付いてきてくれてるの?」
「俺たちがボス戦で死なないようにするためだ。俺たちの実力がどれだけあるのか試したい。」
「そうなのね」
この前のローブの男に言われたことを気にしているのね。
「よし、せっかくボス戦に挑戦するんだ。その前に削られるのは全力勝負がみたい俺からしたら残念なことだ。道中は俺に任せろ!」
といって10階層まで連れてきてくれた。モンスターに攻撃をさせる暇もなく屠り、大剣とは思えないスピードで剣を振るう。
さすが、一級攻略者だ。あれだけのモンスター相手に汗の1つもかいてない。
「さあ、ここからはお前さん達の出番だ。俺は一切手出しをしない。」
といって俺の肩を叩いた。
「よし、マリンいくよ」
「ええ」
「ガギャー!!」
この道の奥からおそらくボスであろう声が聞こえる。
これが10階層のボス。クジャタか。
見た目はそこまで大きくないが、あの大きな角に鹿のようなフォルム。素早い蹴りや魔法攻撃もあるが、一番の注意は角による串刺しだ。これに関しては食らったら即死級のダメージを負う。
向かってくるクジャタに対して炎舞で向かい撃つ。
「ガギャー!!」
クリーンヒットだ。俺が追いつけないスピードでクジャタは向かってくるが反応は出来る。鮮明に視えている。
「この前までなら追いつかなかったけど」
遠距離から魔法攻撃を放ってくる。
それをダッシュで躱して距離を詰める。
今なら追える。戦える。ようやく深化であがった能力が体に馴染んできた。
「蒼き我の魂よ、呼応せよ。楔を解き放って力を示せ。」
「エターナルブラスト!」
マリンの魔法を受けて立ち止まったところに炎雷で突っ込む。
「ギァァァァァァ」
クジャタは声をあげて消滅した。
こうして10階層のボスを撃破した。
憐也 ステータス ★1
STR 380 攻撃力
DEF 270 防御力
RES 450 抵抗力
AGI 230 素早さ
MAG 230 魔力
憐也 スキル一覧
覚醒 何かのスキルに突然目覚める確率が上がる
炎舞 剣に炎を纏って攻撃する。
攻撃力上昇
火属性
物理属性
炎雷 剣に炎と雷を纏って攻撃する。
攻撃力上昇
火属性
雷属性
火事場 ピンチになると攻撃力上昇
治癒 身体の回復速度が上がる
マリン ステータス
STR 150 攻撃力
DEF 150 防御力
RES 200 抵抗力
AGI 200 素早さ
MAG 540 魔力
マリン スキル一覧
フロストスピア 発動キー「大気に満ちる空気よ、凍てつく槍で敵を貫け」
氷属性
魔法属性
小威力
エターナルブラスト 発動キー「蒼き我の魂よ、呼応せよ。楔を解き放って力を示せ。」
氷属性
魔法攻撃
中威力
「まじかよ。俺付いてくる必要なかったか?」
「いえマーズさんがいてくれたので、ボスフロアまで魔力が温存出来ました。 ありがとうございます。」
10階層から帰ってくるとラビアさんが待っていた。
「あれ、ラビアさんどうされたんですか?」
「少しお前達が心配だったんでな」
「この子ら凄い強いな!10階層のボスも簡単にたおしてたぞ!」
マーズさんが興奮しながらラビアさんに話していた。
「そうか。そこまでだったか。私としてはそれも驚きだったが、憐也がマリンとパーティを組んでいたことも驚きだったがな。」
「マリンのこと知ってるんですか?」
そう聞くと後ろでいままで静かだったマリンが声をかけてきた。
「知ってるも何もほぼ毎日、ラビアさんに鍛えてもらってるわ。」
そうだったのか。この前ラビアさんが弟子みたいなのをとったと言っていたが、マリンのことだったのか。
「どうりで最近魔力が上がっている訳だ。」
せっかくラビアさんも来たので、このまま4人でマーズさんがオススメする酒場に行くことにした。
「いやーここは今日も賑やかだな。」
「いろんな人が居ますね。」
「ここは、安くて量が多いからな。男連中には人気なんだ。」
「私はこういう所にはあまり来ないけどな」
私もです。とラビアさんとマリンが口を揃えて言っている。
「たまにはいいじゃねーか」
エプロンドレスを着た従業員が次々と料理を運んでくる。
こういうのも男性に受けている1つの要因なのかなと思ってみていると、
「こういうのが憐也の趣味なの?」
と冷ややかな目でマリンに見られてしまった。
「いやそういうわけじゃないけども」
「ふーん」
憐也が好きなら、、と小声で聞こえてきた気がするが気のせいだろう。
食事を終えて、(食事は4人ともとても満足した)解散し、俺とマリンは明日から11階層に向かうことを決めた。
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