Alice in Wonder school.~ふしぎな学園のアリス~

砂糖餅。

第一章 第一幕 摩訶不思議な入学式


_____『Alice・in・Wonder・school(アリス・イン・ワンダースクール)』。それは、童話に出てくるタイトルと同じ名前の"不思議の国"に設立された中高一貫の魔法科の寮のある学園である。色々と要素が多いけど、まあこれから実際に分かっていくだろう。



かくいう自分もまたこれからその学園に通うこととなる。一体どんな人達がいるんだろう?友達はできるのかな?楽しみだなぁ……。そんなちょっとした不安と期待混じりの思いを抱きながら私は歩を進めた。










_____これは、異世界に設立された学園に通う、個性豊かな少年少女達の摩訶不思議な青春物語。





-------❁ ❁ ❁------




「あ〜、…いい天気だなぁ〜。」


春の暖かい陽光に包まれながらボヤいている青髪碧眼の少年の名は『五月雨さみだれ 真宙 まひろ』。

今年から『Alice・in・Wonder・school』に入学する事となり今は学園まで向かっている最中である。


「うーどーん〜♪うっど〜ん♪」


鼻歌を歌いながらくるくる一人歩いていると、曲がり角から突然ふっと現れた少女と衝突してしまった。


「……つッ……」



尻もちを着いたからなのか痛みを伴う。


「あ!すみませんん!!!思わず余所見してたらつい……!大丈夫っすか……?」


少女の方を見やるとピンクの独特な髪型と眼帯をしておりこれから自分が向かう所の制服を着崩していたのが少し印象的に思えた。



「…。」


真宙が頭を下げ手を差し伸べるも、少女はそんなものお構い無しと言わんばかりにすっと立ち上がりスカートについた砂埃をぱぱっとはらったあとポケットからハンカチを落としたことに気付かぬまますたすたと歩いて行ったのだ。


「あ…!」


真宙はハンカチともう1つ学生証を拾い、少女の元まで駆け足で歩いていく。


「おーい!!ねえ!ちょっと!これ落としましたよ!」


「……」


大きい声で呼びかけても返答がない。


「ねえってば!!!!」


ので、先程よりももっと大きな声で呼びかけてみる。


「…何?」


「……これ!落としてましたよぉッ!」


「…ああ、…ありがと。」


「いやいや!これ位はお易い御用ですからぁ!」


「…でも学生証は私のじゃない。ほらっ。」


気の所為だろうか、さっきから少女はあまり浮かない顔をしていた。


「…えっと!!さっきから思ってたんだけど、もしかして君もこれから入学式向かってるの?俺もそうなんだけどね!」


「…?」


真宙自身、おしゃべりな部分も兼ね備えており少しだけ話題を広げてみようと試みたのだが、ほんの少し気まずい空気が流れてしまう。


「いや、だから!それ!ワンダースクールの制服…だよねっ?」


「そうだけど、……もういいだろ。」


少女は何食わぬ顔で踵を返すと駆け足で場を去ってしまった。


「…え、ちょっと!」


「…ッ何なんだよさっきから…てか付いてくんなッ!!」


「いやそんなこと言われても!俺も行くとこ同じだし!」


「…はぁ〜…ッなんで入学式早々こんな面倒くさそうな男と話しなくちゃあなんねぇんだ…」


「はぁ!?えっ、ちょ面倒臭い!?いや、さっきのは確かに自分自身キツかったし軽過ぎたなとは思ったけど!」


「…あ〜、うるせぇ…!」


____________________


…言い争いながら歩くこと数分。いつの間にやら学園に到着していた。ふと目をやると少女は姿を消していた。まあ入学式早々トラブルが起きては困るからだろう。


「うわ〜、すげぇ…学校ていうかこれは…改めて見るとお城みたいだなぁ〜!」


学園のゲートは遊園地のテーマパークにもある様なデザインで建物は本当に城のように大きく聳えていた。


そんな光景に鳥肌を覚えつつも正門まで向かおうとしたその時。紫茶色のお下げ髪の少女が校門でなにやら困ったような顔で佇んでいたのが見えた。


「…あの、…なにか困り事でも?」


早速少女に何があったか訪ねてみる。


「えっ、えっと…実は…っ」


すると。


「…入学式まで向かう際、学生証が必要ですのでそちらを先ず確認させいただくことになります。」


門番らしき厳つい男が説明をし始めたのである。


「…あ、学生証…?」


「はい。学生証を持っていない場合はお引取りしていただかなければならないのです。」


「…えっと…でも私、確かに学生証は持ってたんです…でも道端で落としちゃって…」


「…そうなんだ…ん…?学生証…?もしかしてこれ?」


真宙は先程の道端で拾った学生証を少女に手渡す。


「…あ!これ…!…ありがとうございます…!」


「いやいや、まあ、もう無くさないように気をつけなよ!」


「はい…っ!」


少女は学生証を受け取り門番にまで届ける。その流れで真宙も学生証を鞄から取り出しもう片方にいる門番に確認を取らせる。


「…ふむ。」


ゴクリ、と息を飲み門番の返答を待つ。


「…問題はなさそうですね、入門を許可致します。」


門番はそう言うとゲートを開く。すると、眩い光が現れたのである。


「こちらを進むと会場まですぐに行けます。さあどうぞ、お進み下さい。」



真宙は門番に言われた通りゲートを通り抜ける。



_______すると、先程の男の言うように入学式の会場に移り変わっており、周囲を見渡すとかなりの人数の生徒が場所を取り囲んでいた。


「えっと、席はっと……あった!」


会場はやや暗く、見づらく感じたがパンフレットに書いてある座席に書いてあった場所をやっと見つけ腰をかける。


隣にはあの眼帯の少女が座っておりそちらも視線に気づいたのか、


「…なんでこいつと隣なんだ…」


と舌打ちしながらぽつりと呟いていた。気まずくなり視線を逸らすともう片方にブロンド色に翡翠色のインナーカラーが入った髪と紺色のリボンが特徴的な少女がほのぼのした雰囲気で微笑んでいた。


「(なんか癖ありそうな人ばっかだな…)」


そんなことをふと思っているとカーテンが開く。


「えー、それでは、これから新年度Alice・in・Wonder・school入学式を開始致しますっ!」


照明がつくと共に演目が開始される。

演目をしている人物は銀髪に片眼鏡のミステリアスな風貌した男性。一句一句、丁寧にはきはきと話し始めていた。


「皆様、ご入学、もしくは進級おめでとうございます。司会は学園長であるこの私ルーカス・ロゼベルトが努めさせていただきます!才能ある貴方達は今年からこの学園にて無数の魔法についての学習をしていくこととなります。まず、どのような科目があるかと言いますと基礎知識は無論。主に呪文学、錬金術学、召喚学に魔法史それから…………影獣えいじゅうの討伐任務!」


…そう。この学園は中高一貫の魔法科学園にして、人々を脅かす存在、"影獣"から人間を守る為に設立された国家機密の魔力軍組織なのである。

真宙も当然それを知ってこの学園まで遥々訪れたのである。

だがしかし、影獣の討伐任務は認められた者しか与えられない任務なのでまた個別で定期試験を受ける事となるのだが。


「まあ、影獣討伐試験は定期試験を受けてその実力を見極めてから任務が与えられることとなりますので皆様は基礎的な知識をまず学んでからになりますね!…さて、ここで寮についての話になります!」


魔法科についての紹介が終わったあと、寮の発表に変わる。


「前の席から順番に石をお渡しいたします。そちらからまずどこに入寮するかを判断させていただきます。」


寮分けはまず、学園長の言葉通り特殊に作られた石を渡され生徒の特性や気持ちなどに応じて色が変わるのでそれから見極められる事となる。


「簡単に説明させていただくと、紅色の場合ローゼン・ハーティクル寮。藍色はプラネット・ディアモン寮。緑色はフォレスティア・トレーフル寮、金色はトゥインクル・スペーディア寮、という形になります!」


司会は石を順番に生徒に渡していく。真宙もそれを受け取り、石を見つめる。すると、紅色に石が光り出したのである。


「…それでは皆様!自分がどの寮へと入寮するかご理解いただけたでしょうか。演目後、各寮ごとへ点呼致しますので石はそれまで離さず持っていてくださいね!」


真宙は石を落とさないようにしっかりと、ポケットに仕舞い込んだ。


「さて次。クラス発表!クラスは全部で5つになります!」



学園長は魔法でモニターの画面をクラス表に切り替える。


「1人ずつクラス毎に点呼していくので呼ばれたら一言返事して下さいね!それでは1-aから…」


1人ずつ滑舌よくはっきりと生徒の名前を点呼していく。相当な人数がいるのでほんのちょっぴり退屈になりそうだ。


「…なんか時間かかりそ〜」


ぽつりと右隣のブロンド髪の少女が呟く。どうやら彼女も相当退屈しているようだ。


「…ねぇ、君。」


悟られないよう、指で軽く肩をつつき読唇術で一緒に式典を抜け出さないかと語りかける。

それが上手いこと通じたのか少女は少しばかりきょとん、としていた。


「…でも、怒られちゃうんじゃ…」


「まあまあ、俺に任せろって…!」


真宙はそう言うと、少女の手を引き足音も僅かに立てることないようこっそりこっそりと扉まで向かった。幸い、扉は半開きで丁度2人が出られるぐらいの状態だった。


そのまま、外に出たあとささっと少女を抱え会場から少し離れた場所である別校舎の屋上まで向かう。屋上には梯子の様なものがあり、それを利用し見晴らしの良いとこまで上がった。



「…ふぅ…!これで暫くは長話に付き合わされないで済むな!」


「…ちょっとだけヒヤヒヤしちゃったけど、意外とすぐ抜け出せたね……」


「へへっ!ちょろいもんだぜぇ〜!!!…そういえば、君、名前は?」


「…私?私は…来栖くるす 縫乃ほの。君は…」


「五月雨 真宙!…てか、来栖って確か、なかなかの有名財閥だった気が…」


「…うん。そうだよ?」


有名財閥なのが確かということを聞いた真宙は少しばかり息を呑む。それがどういう事かと言えば、有名財閥の令嬢をサボりに付き合わせてしまったのだ。


「え、じゃあ俺もしかしてガチで悪いことしちゃった…??今すぐにでも戻る…??」


恐る恐る返答を待つ。


「……………………いや、良いよ!退屈だったのはほんとだったし…それにしても、五月雨くんって面白いね!一応お礼言っとくよ!ありがと!!」


……………が、意外にも彼女はくすくすっ、と笑っていたのだ。心做しか、表情も少しだけ明るくなっていたようにも見えた。真宙は予想外の返答に動揺を覚えた。


「…!は、はは…!!…いやぁ〜!!!!お礼なんてそんなぁ、にしても、お主もなかなかの悪よのぉ〜!!」


「そういう君だって!……でもほんとに、面白いことするよね、…うちの家だとそんな人いなかったし…」


「…来栖さんとこのお家って、そんな厳しいのか?」


「まあね、……でも、卒業までの間は顔を合わせなくて済むんだ!」


一瞬、縫乃の表情が曇っていたように見えたがすぐに切り替えた。


「……こほんっ!!来栖さんってさ!なんか得意なことある?」


それを見た真宙は彼女の表情から何か悟ったのかまた違う話題を持ちかける。


「え、特技?…そうだなぁ、裁縫かな!服の縫い直しとかはよく自分でしてたから…後はぬいぐるみ作るのも好きだよ!」


「手先器用なんだなぁ〜!!」


「えへへ……もし服のこととかで困ったら、私に言ってね!ほんとに裁縫には自信があるんだ!」


「そりゃ頼もしい!!んじゃ〜、俺の特技は…」


そんな他愛もないような話をして段々とお互いに緊張が解れていく。




と、共に。



________ドガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッッッッッ…!!!!!!!!!!!!!!!!!



…突如、爆発音が響いてきたのだ。


「…な…ッ!?なんだ今の!?」


「…まさかッ!!」


その爆音に居ても立っても居られなくなった真宙と縫乃は一度、会場の様子を確認しに走る。が、会場にいる人々は異変には気付いておらず、どころから学園長も淡々とスピーチを続けているだけだった。


「(会場の人達は気づいてない…!!となると…ッ!!)」


徐々に真宙と縫乃の脳内に嫌な予感が過ぎる。


すぐさま、爆発音の聞こえた方まで二人が急いで向かう。



…校舎まで辿り着くと、2人は教室の中の様子を確認していく。徐々に進んでいくにつれ、教室が荒れているのが見えた。


「…多分あそこだな…」


…窓ガラスは見事に割れており、机や椅子も原型を留めないぐらい酷く粉々に散乱していた。


「…うぉあ〜ッ…こりゃひっっでぇ…」


千鳥足で歩を進めていく。不気味な雰囲気の所為か、やや寒気がする。


「…とりあえず慎重に行こ。」


「そ、そうだな…ッ!」


真宙がさらに踏み込もうとしたその時、散乱していた椅子の残骸がバキッ、と勢いよく踏まれ音を立てた。

…背後から凄まじい殺気が漂い始める。恐る恐るぎこちない動きで振り返ると、影のオーラを纏った獣が鋭い眼差しをこちらに向け佇んでいた。



「グヴ…ッアヴア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゛ア゙ァ゙ア゙ァ゙ア゙〜ッッッ!!!!!!!!」


…そう、この鋭く牙をチラつかせる怪物こそが影獣である。


悍ましい咆哮が、教室中に轟き、その音圧で全身にビリビリと鳥肌が立つ。影獣は、凄まじい勢いで此方に飛びかかる。二人は咄嗟にそれを上手いこと躱し、影獣は壁に頭から衝突した…のだが、あろうことか影獣は呻きながら躰から触手を生やし始めたのだ。



「げっ…!!!どうなってんだこいつ…!!!」



「ッ!五月雨くんッ!!うしろ…ッ!!」


縫乃がそう叫ぼうとするも、触手はそうはさせまい、と言わんばかりに彼女の身体を拘束し、そして後ろから真宙の足を絡め取りそのまま勢いよく地面へと叩き付けた。


「…ぐッ…ぁ゛…ッ!!!」


衝撃により身体のそこら中に激痛が走り、苦痛の声が漏れる。全身を酷く打ち付けたからなのか、意識が一瞬飛びかかりそうになる。


「…ゲホッ、ゲホッ…ッ!!ッ…来栖さんっ!!」


が、視界に縫乃が触手に捕縛されていたのが映り、意識が引き戻される。


「さ、みだれくん…!私の事は良いから逃げて…!」


縫乃は、自分の心配をする所か、真宙の身を案じた。


「…で、も…ッ!!」


「…い、いから…はや、く…ッッう゛ッぁあ……ッッ…!!!!」


「来栖さん…ッ!!」


触手の締め上げる力が一気に強くなり、縫乃はどんどん呼吸すらままならくなっていく。真宙もそれを早く解放させなければ、と思い無理矢理重い身体を起こす。視界が揺らぐ。正直意識を保っているだけでもやっとだ。それでも。


「…もう少し…踏ん張れぇ…ッ!!!」


それでも、真宙は、いつの間にか手に握っていた木の破片を影獣目掛けて突き刺した。

当然影獣は何事も無かったかのように、と思われたが、…寧ろ、息を荒らげ逆上し始めたのである。


「…やるんなら、俺だけにしとけ…!!こっちだッ!」


頭がふらふらする。身体に上手いこと力が入らない。


「グルルルルル…ゥ゛ゥ゛ゥ゛…ッッッッッッ」


膝が崩れ落ちる。また、立ち上がらないと。せめて、来栖さんだけでも逃がさないと。


「ヴゥ゛…ア゙ア゙ア゙ア゙…ァ゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゛ァ゛ア゛!!!!ーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



「あ〜ちょっとほんとこれは詰んだかなぁ…ッ」



____________目を瞑ったその時。



「とぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜りゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!!」


上から、突然天井が突き破られ、そこから女性が勢いよく影獣をぱっくりと切り裂いた。

影獣は塵の如く消え去り、その触手から解放された縫乃を優しく受け止め華麗に着地をする。



「いやぁ〜何とか間に合ったなぁ〜!!真宙く〜ん!!」


「…あ…え…!?!?














________美桜姐さん…なんでこんな所に…ッ!?」




"美桜みお"、そう呼ばれた緑色の髪に濃いピンクのメッシュが入った女性はにっこりと紅い目を光らせながらふわっと微笑んだ。




To Be Continued___________.

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