absolute

ーーーところで、さっきからあたしの背中ですすり泣く声が聞こえているが…


「ねえモカ、重い。そろそろ寄り掛かるのやめてくれない?」


「えー!ちょっと待って、わたし今感動に浸ってるところだったのに〜!」


「モカにも心配かけて悪いと思ってるから」

「でも、もうあたしの気も晴れたし、お祭りに戻ろうよ」


「そうだね!」


「ところでモカ、ほんとに太ったんじゃない?」


「やっぱり浴衣の魔改造が必要だね」


「だから太ってないし、魔改造も必要ないって!」


あたし達は、3人で祭囃子の聞こえる方へ歩き始めた。


ーーーーーーーーーーーーー


「ごめん、元はと言えば私がスーパーボール掬いに夢中になってしまったからで」


「ううん、大丈夫」

「おかげで良い話も聞けたから」


「ちなみに記録は99個!あと1個で100だったのに、ほんとさやかってば詰めが甘いよね!」


「失礼な、私は2進数では表現できない世界を演出した方が人類としては優秀だと判断して」


「はいはい、そうだね。にしんすう、にしんすう!」


「モカ、絶対意味分からないで言ってるな」


まあ、あたしも分からないけど。


「失礼な〜、それくらい分かってるよ」

「あれでしょ、魚の!」


「それ、ニシン」


「まあ、良いのいいの!」

「詰めが甘くて、よく分からないこと言ってるのがさやからしくて」

「負けず嫌いで、それなのに時々1人で抱え込んで座り込むのが唯香らしくて」

「それで、そんな2人を大好きなのがわたしってことで!」


さっきまで真っ暗闇だったこの場所が、急に輝いて見えた。

正面にいるモカの姿がちょうど祭りの灯りと重なって、そんな光景が眩しくて、あたしは目を細めた。


「そうだね、ありがと」

「でも、ほんっと、モカってよくそんな恥ずかしいこと口に出せるよね」


「え?だってほんとのことだし」


「モカは嘘つけないから」


「そっか。まあ、それがモカの良いとこかもだけど!」


自然と表情がほころんだ。


「ちょっと唯香!ほんとにそう思って言ってる?」


" ほんとに、2人に出会ってから楽しいことがいっぱいだ "


これも、あたしの本音。

今はまだ恥ずかしくて言えないけど。



後ろを振り返ると、そこにはモカとさやかが居る。


そして、どこからかこの祭りの終わりを告げる花火の音が聞こえてきた。


楽しかった夏祭りは、まもなく終わりを迎える。

だけど、これからもあたし達3人のアイドル活動は続いていく。


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【Dream Planet♪短編】Confidence, It's a component of Absolute. 伊藤キース @huwritten

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