エモーション ④
「あ、め、眼鏡子ちゃん」
「助手ちゃん、それと鮫瓦ちゃんも。こんにちは」
助手ちゃんと鮫瓦ちゃんは、二人のお目当ての文房具コーナーにいた眼鏡子ちゃんをみつけた。
助手ちゃんはさっきの時計をさっと背後に隠した。
「二人も買い物に来たの? それとも、助手ちゃんの答え探し?」
「ま、まぁソンナトコロカナァ」
「今日はなにの答えを考えてるの? ここに来るってことはカワイイかな」
「おお、それもいいね。けど今は違うかな。今日はエモいを探してるの」
「エモーションの意味を探してるの?」
「意味って言うか、それぞれのエモさ? 何に対してエモいって思うか、みたいな」
「うーん。エモーションは、心が動いたって意味だよね。私が心が動いたと思うときは、……笑顔になったとき、かな」
「笑顔?」
「うん。嬉しいときにも、楽しいときはもちろんだけど、泣いてるときも笑顔になることってあるでしょ。きっとそれぞれは『嬉しい』『楽しい』みたいな感情だとおもうんだけど、そういう笑顔がでちゃう感情を全部含んでる感情が私のエモいかな」
「おお。おお?」
助手ちゃんは腕を組み、目を瞑る。ついでに、首も傾けた。
「うーんと。数学の部分集合みたいなことだよね? 『エモい』の集合の中に『楽しい』や『嬉しい』がある、みたいな」
「ま、間違ってはないと思うんだけど。どうしてかな、少しもやっとするな」
「眼鏡子ちゃん、ありがとうね! あっそうそう、そういえば、さっき団長さん……」
そこで助手ちゃんはフリーズした。腕も胸の前の中途半端な位置で止まっている。一秒ほど、そのまま凍っていたが、すぐさま、ハッとした顔に変化した。
「やばっ、そういえば私まだ先輩の監視バイトの途中だ!」
助手ちゃんはすぐさま、文房具コーナーの棚の中から、お目当てのペンを探しだす。
「ごめん、眼鏡子ちゃん! 続きは学校で話そう!」
そうして棚から取り出すや否や急いで会計を済まして、鮫瓦ちゃんを引き連れて店先に停車していた車に乗り込んだ。
「またね!」
「よかった、思い出して。あのままだったら、日が暮れるまで話し込んじゃうところだったよ。……そういえば鮫瓦ちゃん、さっきから全然喋んないけどどうしたの?」
「そう、でしたか? 確かにずっと助手ちゃんに見惚れてましたけれど」
「あー、なるほどー。……それで、どうだった? エモかった?」
「はい! もちろん」
「そりゃ、よかった」
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