どう使おう? ④
「ねぇ、姉ちゃん」
「どうしたの?」
夜、助手ちゃんは姉の部屋でパソコンに向かう姉ちゃんの横で漫画を読んでいた。彼女の傍らには、すでに数冊の本が積み上がっている。
「これの最新刊っていつ発売?」
助手ちゃんは自身の手にある、とある漫画の十六巻をひらひらと振る。
姉ちゃんはパソコンの画面から顔を離し、助手ちゃんの手元を確認する。
「あ~、それは確かぁ今年の冬だったはずよ」
「んー、ありがと」
それからしばらくは、コチコチと時計の針が部屋に鳴る。
少し時間が経ったのち、助手ちゃんは静かに本を閉じる。
「いい、いいよこれ。何回見ても感動する」
「なら、次の巻はさらに感動できるんじゃないかしらぁ」
「え! なんで知ってんの? 立ち読み? 立ち読みしてきたの?」
「違う、違うわよぉ助手ちゃん。クラスの子が雑誌で買ってるからぁ、たまにみさせてもらってるの」
「なるほど。……あ! ネタバレは駄目だからね!」
「わかってまぁす」
姉ちゃんのマウスからカリカリとスクロール音が響いた。
「そういえば姉ちゃんって、はじめてのお給料ってどうしたっけ?」
「えぇー、忘れちゃったの? みんなでお寿司食べにいったじゃない」
「あー、確かにそうだったね。美味しかったよ。ありがとう姉ちゃん」
「いえいえぇ。……なんでいきなりそんなことを? もしかして何に使おうか悩んでるのぉ? ならお姉ちゃんもう一回お寿司食べたいなぁ」
姉ちゃんはパソコン操作を一時切り上げ、妹におねだりする。
「……ねぇ、正社員とアルバイトの給料が同じだと思ってる?」
「お姉ちゃんバイトしたことないからわかんなぁい」
「やってみたらいいよ。結構楽しいからさ」
助手ちゃんは精一杯の笑顔でそう応えた。
「お姉ちゃんのところ、副業禁止だもん」
「くっ」
助手ちゃんは舌打ちした。
「はぁ。そういえば、さっきからパソコンで何見てたの?」
「これぇ? お花の花言葉とかぁ、花屋の予約ぅ」
「なんで? 取引先にもってくの?」
「なんでってぇ、もうすぐ『あの日』じゃなぁい」
「『あの日』って?」
「ほら、は・は・の・ひ」
「あ!」
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