第4話 Hospitals are about Healing-Irwin Redlener

その日は、やっぱり夏休みの宿題が終わっていないので、どうしても行きたくない、2学期始業式の日だ。小学1年生から6年生までこの日の朝は絶対お腹が痛くなる。

「田中さんに連れてってぇ。」

町にある内科•小児科の医院だ。

仮病バレバレなので、母もおばあちゃんも誰も付いてきてくれない。なので、一人元気に田中医院へ向かう。医院の待合室には、おおきな振り子時計があり、小学校の理科室と同じ匂いがした。先生は私のおなかに聴診器のチェストピースを当てているが、イヤーチップは、耳の中には入っていない。「ふーん、今日はおなかの痛い子が多いな。」と言って、だだあまーいシロップの瓶を処方してくれる。そして、家に帰る途中駄菓子屋によってミルクパンを食べてから家に帰り、「お布団敷いてえ~」でる。


この辺りでは、医療施設は、だいたいLast name で、区分されていた。

「甘い物を食べすぎると、①岩崎さんにいかなあかんようになるで。」

「なんべんゆーても、ゆーこと聞けへん子やな。②梶川さんいってき。」

「そんなにはしゃいだら、捻挫して③西村さんいかなあかんで。」

「テレビそんな近くで見たら④林さんに診てもらわなあかんよ。」

①〜④に入る医療施設は、①歯医者②耳鼻科③整形外科④眼科が正解である。


しかし、タブーの苗字がある。

「七山」である。ここには、さんはつけず、「七山」と呼び捨てで、かなり怒りながら、

「ゆーこと聞けへんかったら、七山連れてくぞ💢」

と使われる医療施設の名前だ。


Umi辺の家の姉と弟も小さいとき、この施設の名前を聞くと怖すぎるて泣いた。ちびるくらい怖かった。…


ここの施設の患者は、鍵のついた部屋に入れられてしまうのだという。暗い部屋で一日中過ごすのだそうだ。ずっと笑っている人や、ずっと黙っている人や、ずっと怒っている人が行くところだという。


しかし、少し大きくなって怖くなくなったころには、喧嘩したら「お前とこのオカンお前を七山で産んだんちゃうんか。」と平気でディスるようになった。


もっと上級になると、ヒィヒィ笑う、おもろい話をした人に「おまえ七山か。」=「You’re so crazy」とか使った。


小学校の林間学校で加太にいったとき、お土産屋の店員さんの胸に「七山」の名前をみつけた私と友達のちかちゃんは、帰宅するやいなや、それぞれ、「今日な、加太で「七山」見つけた❗️」と、鉄板ネタで家族を大爆笑させたのだった。

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umi辺の家に生まれて。 Nono The Great @nonothegreat

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