セリスティア・メロディア①
『女神』は、そもそもこの世界の存在ではない。
では何なのか、と尋ねられると答えづらい。『どんな物に擬態することも可能で、かつ知的レベルが非常に高く、社会の中に巧妙に溶け込んでいる、漠然と定義するなら生き物と言って差し支えないようなもの』である。よく分からなかろうが、もう、そういうものなのだと納得してもらうしかない。彼女らは大抵、人間のような外見をして、社会に適応して暮らしている。とは言っても、その大多数が、アウトサイダー的な立ち場で認識される者ばかりであるのだが。
その、世界中ばらばらに散らばって長い間好き勝手に暮らしていた『女神』達がある日、「この世界に楽園を創ろう」と突然ぼんやりと思い立ち、人類には解する事の出来ない素晴らしい情報浸透手段を用いて結束を固め、あれよあれよと言う間にある一つの組織を発足させたことが、大まかに言ってこの事件の本当の始まりである。
その組織には名前など一切無く、とりあえず楽園創造に障害となりそうな要因を一つずつ摘んで行く活動を地道に続けるのがいいのではないか、という曖昧な方針のみが決まっており、基本は隠密活動を予定していた。だが、どこの世界にも馬鹿はいるもので、記念すべき最初の活動に大成功したのを良いことに、調子に乗った一人が勝手に組織に名前をつけ、裏社会の人間に対して大々的に宣伝を行ってしまった。勿論、白々しくも華々しい目標が同時に掲げられていたのは言うまでもない。そういう類の奴ほど一人前に偉そうな主張をぶちたがるのもどこの世界でも共通なのだ。ところが、大概の場合世界に対して何の影響も与えぬまま埋もれて行くはずの薄っぺらな主張が、今回に限っては違った。その内容というのがこんな感じだった。
「我々の名は『世界秩序機構』。その目的は、全エターナル・ギミックの管理である!」
確かにその最初の活動は、偶然とはいえ、エターナル・ギミックを人間達の組織から強奪するという風にも見えたため、聞いていた人間達には尤もらしく響いただろう。(実際の目的は、過去その政府の研究所で開発され、現在は世界的に使用禁止になっている強力な殺虫剤の製造法を調べることであった。『女神』は、蝗の大群を快く思っていないのだ。)だが『女神』が、エターナル・ギミックのことをこんな風に扱うのは、それ自体ブラックジョークみたいなものなのだ。真に受ける必要など実は全くない。
そもそも、エターナル・ギミックとは何なのか。全二五五種類。どれ一つ取ってみても、一見すると何の変哲もない普通の物品でしかない。エターナルとはよく言ったもので、その内の一四種類は食べ物であるため、作り出されてもあっという間に消費されてしまう。それでも、一つが食べられた瞬間に世界のどこかで新しくギミックの機能を持つパンやパスタやアイスクリームが生じるため、エターナル・ギミックの総数が減ることは原則的にない。
エターナル・ギミックはその存在を続ける限り、周囲に何らかの影響力を振り撒き続ける。これが、「ギミック」と呼ばれる所以である。所有者に必ず凄惨な死を届ける呪われたダイヤモンドや、飲むだけであらゆる病が治るといわれる不思議な湧き水など、表の社会でも噂話のレベルで語られているものがいくつかあるが、一般人には基本的に関係の無い話である。エターナル・ギミックの概念を知らないものには、本物か偽物かを見分けることなど絶対に出来ず、実際上記の例に関しても、統計学の権威は、「不審な死は全て起こりうる範囲の出来事であり、ダイヤモンド所有の事実との関連性は無い」と断じたし、医学部の教授は、「マイナスイオンやミネラルが多分に含まれていることと、噂が広まったこと自体によるプラシーボ効果が、魔法の水の正体ですね」などと素晴らしい講釈をたれていた。いやいやそれらは本当に本物で、エターナル・ギミックという、神様からの得体の知れない贈り物なんですよ、と真顔で言う人間は表社会には一人もいなかった。よしんばいたとしても、オカルトにのめり込んでいる変人でもない限り、そう簡単には信じないであろう。喩えるならこれは、昔話に関して時折語られる、「浦島太郎は竜宮城ではなく、亜高速の宇宙船を用いた宇宙旅行に行ったため、戻って来た世界が未来になっていたのだ」という愉快な仮説に近い(ちなみに、浦島太郎の陥った状況を正確に再現可能なエターナル・ギミックが現存するのだが、こちらの噂はまだ表社会に流通していないらしい)。
『女神』は全員、あらゆるエターナル・ギミックの効用について熟知しているが、それは何のことはない。エターナル・ギミックは、『女神』がこの次元の世界にやって来た時一緒に産み落とされた代物であり、人間にもわかるような言葉を借りると、生物に擬態しているのが『女神』であるなら、非生物に擬態しているのがエターナル・ギミックである。『女神』とエターナル・ギミックの本質は形而下に存在せず、この世界での形態は全く違えど、その総体を生物の概念に当てはめれば、少なくとも同種ではあり、あわよくば兄弟と言えるような、非常に密な関係にあるのだ。その本質がどの程度似通っており、どの程度の差異があるかに関しては、後々判明することとなる。
ご察しの通り、人間達の中にエターナル・ギミックの存在を知る者がいるのは、元を正せば、『女神』の中に面白がってそれを人間にリークした者がいて、リークされた裏社会の上層部の人間の中にオカルトにのめり込んでいる変人がいたからである。結果としてとても幸運だったその変人は、最期こそ天に唾を吐きながら惨めたらしく死んでいったものの、存命中は闇世界のカリスマの名をほしいままにするくらいには、エターナル・ギミックの恩恵を受けることが出来た。さらにその闇世界のカリスマは、長きに渡る研究の末に『インスタント・ギミック』という、劣化版エターナル・ギミックとでも言える代物の作成に成功した。インスタント・ギミックは、その媒体さえ把握出来れば、誰でも好きな時に起動が出来、エターナル・ギミックと同様、何らかの影響力を周囲に撒き散らすという概念装置である。全体的にエターナル・ギミックに対して、見劣りするような効果の代物が多いが、発動と同様、終了も任意に出来るという汎用性が強みである。『女神』は、その存在を知った時まず大爆笑し、それから、地球上の生物のことを少しだけ見直した。侮ってはいけないのだと、少しだけ自戒した。勿論、本当に少しだけだが。
さて、そんな流れの中で出て来た、「全エターナル・ギミックの管理」である。その、あまりに頓珍漢な振る舞いについては、敢えて説明するまでもない。『女神』自身が流した情報を元に、インスタント・ギミックという流通品まで作られた現状で、今更しかつめらしくエターナル・ギミックを管理するなどと豪語したところで、説得力の欠片もない。『女神』がエターナル・ギミックに露ほどの注意も払っていなかったことは、誰の目にも明らかだった。
世界の秩序と安寧のために全エターナル・ギミックの管理をしろ! 我らが同胞に監視の目を向けろ! 手綱を引いておかないと、我らが兄弟は世界の秩序と安寧を破り、楽園の創生を妨害し、混沌と闇を呼び込むぞ! 何千年と放置してきたが、今からそれが起こるのだ! きっと起こるのだ! そうに違いない! だから管理が必要なのだ。
全くもって痛快だった。なんと空虚で、なんと苛烈なスローガンであろうか。あまりの馬鹿馬鹿しさに、『女神』は皆それが気に入ってしまった。皮肉にも、これが実は、楽園の創造という最終目的には決して矛盾しないのだ。便利なエターナル・ギミックを手中に収めて管理することは、楽園創造にとってある意味非常に有益だったのである。適当に吐いた嘘が本当だったような、珍妙な事態であった。説得力もなければ必然性もなかったはずなのに、辻褄だけが合ってしまっている。
かくして、『女神』によるエターナル・ギミック回収が始まった。基本的に享楽的な性格をしていた『女神』が、まさに愉快犯となった瞬間だった。
実際、随分と場当たり的に、清く楽しく面白くをモットーにミッションをこなしていた。そのドタバタ劇は、珍道中という一言で片付けてしまって大袈裟でない。
ただ、全体的に見ると、その手際の良さは驚愕に値するほどだった。『世界秩序機構』はその華麗な登場に負けない怒涛の快進撃を続け、多くの裏組織を壊滅させながら、表社会に名前が出ないすれすれのラインで「全エターナル・ギミックの管理」を着々と遂行していったのである。登場からわずか五年。実に五九ものエターナル・ギミックが世界秩序機構の手で回収されている。尤も、真の『女神』の目的に有効利用できるものは全体の三分の一以下といったところであるが、今更そんなことに構う『女神』は残念ながら一人もいなかった。本当の目的を忘れている者もいないのに、それに深く拘泥する者もいない。統制がとれているのかいないのか、実に曖昧模糊とした高次元集団は、とにかく他の闇世界の組織に対して、絶大なる脅威として君臨した。
『女神』には、エターナル・ギミックの存在する地球上の座標が何となく感知出来る。だが、あくまでも大雑把な範囲でしか絞り込みを行えないし、実際に近くまで行ってみないと、そのエターナル・ギミックがどんな形をとっている何なのかも全くわからない。今回、日本の関東地方にまでわざわざやって来て、住宅地の中でどうにか一つの家に当たりをつけたその彼女にしても、それは同じことだった。
『女神』は基本的に個々人の名が無く、会話などの際に誰のことを指し示しているのか、その区別を、人間の範疇に無い概念で行うため、呼称も持たない。そこで、ここでは彼女のことを便宜的に、後に一度だけ名乗ることになるセリスティア・メロディアという無駄に華やかな名で呼ぶこととする。
メロディアはまず当然、その家の内部を探ろうとした。どのようなエターナル・ギミックかを早々に把握し、回収する必要があったためだ。
が、大部分の『女神』の例に漏れず、彼女もエターナル・ギミック回収にさほど熱を入れているというわけはなく、楽しければ何でも良い、楽しくなければ任務でない、というだらけた前提で行動していた。だから、その家に真っ当な方法で潜入する気などさらさら無かった。誰にも見つからないように民家に忍び込み、エターナル・ギミックを盗み出して逃走するなど、冗談にもならない。容易に過ぎるのである。ただでさえ、ここのエターナル・ギミックはまだどの組織にも発見されていない。ライバルとの競争、闘争、戦争も望めないというのに、そんな退屈なこと、やるはずがなかった。もっと面白い方法を考えなくては気が済まない。それが、『女神』の「生き甲斐」なのだ。生きているからこそ、『女神』にいつまでもだらしなく付き纏っている、無駄なそれだ。一捻りも二捻りもなければ、やる気が起きないのだった。
『女神』は、面白そうなことは後先考えずにやってみる。それでどんなに追い込まれても、後からどうにか対応出来るほどには、人間達と格の違う存在だ。何せ、その本質の立ち位置が人間よりも一つ高いところにある。文字通り次元が違うのだ。実際、例の記念すべき最初の活動に際しても、勝手がわからず随分と後手後手に回っていながら、結局は世界最強と名高い裏組織を出し抜くことが出来たのである。大体のことはどうにかなるに決まっている。そのため、勇気と無謀を履き違えた若者が徒党を組んだ時くらいに、『女神』は単独でも平気で無茶をやらかす。
そういうわけで、『女神』であるメロディアは敢えてこの住宅地に堂々と姿を晒すことを画策した。しかも、思い切り目立つ方法で、だ。それくらいしなければ、スリルやショックやサスペンス、その他諸々の自分を楽しませる状況は訪れないだろうから……。
そんな時、ふとメロディアの頭に浮かんだのは、所謂「落ち物」や「押し掛け女房物」とジャンル分けされるラブコメディーの手法の一つだった。突然降って沸いた見知らぬ美少女が純朴な少年の家に押し掛けてきて、何故か一つ屋根の下で仲良く一緒に暮らすことになり、すったもんだを繰り広げるという、例のあれだ。
長く人間社会に溶け込んでいたためか、『女神』の中にも低俗な人間の文化に触発された者がいくらか存在する。メロディアも典型的なその一人であり、露出の高い格好をした異星人の娘が、ぱっとしない男子高校生の元に突然現れてやたらとべたべたくっ付き、その常識外れな行動が様々な騒動を引き起こすというドタバタ劇を描いた日本の漫画が大好きだった。
そして、一度、やってみたいと常々思っていた。
二、三日、外から見張っていたが、その家には高校一年生の男の子が一人だけ住んでいるようだった。条件は必要十分。メインキャストは、間違いなくその男の子なのだから、家族は居ない方がありがたい。
また、メロディアがヒロインとして、ひと際垢抜けて破天荒なことばかりをやらかす予定だったので、男の子の方はそれを引き立たせるために、出来るだけ目立たない没個性人間であってくれた方が良かった。だが、残念ながら彼の個性は目に見えて明らかだった。「全く、それでもお前はれっきとした男なのか」と心の中で何度もツッコミを入れていた。こんな様では、街でも絶対に目立つはずだ。
だが、やけにイライラさせられるその人間性の一方で、隣家に住んでいる幼馴染の女の子との関係は、なかなか見物であった。その女の子は、メロディアの対人間評価軸においては中の上くらいに位置する容姿をしており、その男の子とは、「おそらくお互い好き合っているのだが、どうしても距離を縮められない甘酸っぱい関係」にあるようだった。正確には、「片方が相手の母親代わりに振る舞おうとしている」という、微笑ましいのか歪なのかわからない状況なのだが、それは、友達以上恋人未満、という二人の曖昧な関係性を反映しており、どんな形でも良いから一歩でもそこからの脱却を計ろうと、鎖に繋がれたままもがく、若さゆえの一途な行動であるように見えた。……メロディアの分析である。
自分が関わっていない現段階からして既にドラマチックではないか。素晴らしい。実に素晴らしい。それで全て許してしまえる。自分がその二人の間に割って入れば、いとも簡単に三角関係の成立だ。パーフェクト。それこそ押し掛けヒロインの醍醐味ではないか。幼馴染の女の子は、男の子の中で膨らんでいくメロディアという存在の大きさを想ってどんどん追い詰められていき、メロディアなんていなくなればいいのに、と邪なことを考えてしまう卑怯な自分自身を嫌悪して、その悔しさのあまりに泣いてしまうのだ。ぼろぼろと、鏡の前で涙を流すのだ。嫌だよう、嫌だよう、ずっと私の傍にいてくれなきゃ嫌だよう! そして訪れるメロディアとの対決の時。白黒はっきりつけましょう。私は彼のことが好き、あなたは? どっちが彼のハートを射止めるか、勝負よ、と。勝負も何も、彼の心はもう、こちらを向いているというのに!
メロディアは、恍惚の中で甘い溜息をついた。痛快だ。これほど痛快なことはない。決めた、この家に衝撃的な方法で押し掛けて、この男の子を一気に篭絡しよう。そうして、幼馴染との仲をびりびりに引き裂いてやろう。純真無垢な笑顔で、何にも知りません、という風を装いながら、ドタバタラブコメの裏側で、誰もが傷つかずにいられない愛憎劇を演出しよう!
こそこそと天井裏から少年を見張っている期間がさらにもう二日あって、その間に本来の目的であったエターナル・ギミックは二階にある少年の部屋のクローゼットであっさりと見つかった。メロディアは、潔いほどにその回収任務を放棄した。どうやって少年の前に登場しようかと、そればかり考えていた。出来る限りありふれた展開が望ましい。勿論、メロディアの考える「ありふれた」展開は、決してこの世界にありふれてなどいない。むしろ気の触れた感さえあるが、とにもかくにもメロディアの虹色の脳はフル回転の末に衝撃的な答えを出し、それが結果としてこの事件の直接的なきっかけとなる。
この手のストーリーにおいて、ヒロインの初登場シーンはサービスショットであるのがお約束である。健全なお色気を振り撒くことで相手のハートを鷲掴みにすると共に、衣装の異常さから端を発した『異世界の住人』『天使』『記憶喪失の美少女』といったファンタジー色丸出しな設定で畳み掛け、長期的なスパンで続け様にばら撒かれるご都合主義的な展開(ヒロインの追跡者、あるいは親族などの名目で主人公の周りにさらに美少女が集まってくるなど)でとどめを刺す。あっと言う間にドタバタラブコメの完成である。実に上手いやり口であろう。ファーストコンタクトではお色気インパクトを与えること! その時点で、主人公はヒロインに一目惚れするため、計画は半ば以上成功となる。こんなにも素晴らしい手口はない。
そんなわけで、メロディアは迷うことなく服を脱ぎ捨てた。勿論、これは比喩に過ぎなくて、姿を自在に変えられる『女神』は衣装を自分の身体で表現している(自分に一番似合う服を作れるのは他ならぬ自分以外に無い)ので、一部変身を解いた、というのが正しいのだけれど。芸術的な美を感じさせるその裸体を人間に晒すことには、何の羞恥も沸かない。人間が昆虫の前で裸になるのを躊躇しないのと同じことだ。
だが、『女神』は偉大であることに、そこで考えを止めなかった。そもそも、昆虫の恋路を邪魔するために自分がどうやって割って入れば良いか考えているような存在なのだから、普通の人間の枠組みで捉えられる筈が無い。一昼夜、思考が続いた。人間の文化に浸り切っていながら、『女神』特有の情動理論に基づいているせいで、ひどくもどかしく、空転と暗闘に七割の時間を費やしたその過程については割愛するが、導き出された結論は簡単なものであった。
全裸よりも、あえて一枚だけ上に羽織ったくらいの薄着の方がより効果的に性的魅力を表現し得るのではないか。
おぞましいほどに、ある種の真理を突いている。ずば抜けた洞察力を持ちながら、その使いどころを明らかに間違っていたが。メロディアは早速、裸の上に羽織るべき何かに皮膚を擬態させようとした。記憶の中にある、それらしい薄手の衣装をいくつも具現化させてみるものの、如何せん、その全てが現実的な格好でないため、いざ本当にやってみると、どこか不自然な感が否めない。狙い過ぎた部分と、作り物めいた部分が合わさって、何だか妙に興醒めになってしまうのだ。あざと過ぎて笑えない。こんなことならまだ全裸の方が良いような気がする。行き詰まって、裸にエプロンというリーサルウェポンの投入まで考えた。だが、わずか一発で相手の大脳辺縁系全領域を焦土に変えられるという噂の爆撃を最初から見舞うのは明らかにやり過ぎだ。オーヴァーキルは逆効果である。水着よりセクシャルで、裸エプロンよりもスマートに。……下着姿はどうか。条件には合う。だが、可も無く不可も無い。もう少し、捻りが欲しい。ありふれた展開でありながら、その中で個性は出して行きたい。
そうやって煩悶していた折にふと目に付いたのが、少年の部屋のクローゼットにあったエターナル・ギミックであった。灯台下暗しとでも言ったところか。話は落ち着くところに落ち着くものである。メロディアは、皮膚を擬態化させるのを諦め、回収するはずであったそのエターナル・ギミックをおもむろに身に纏った。肌触りは良い。なかなかしっくり来る。鏡を見て気に入った。これだ。なかなかに前衛的で、どうやっても一般人の賛同を得られなさそうな、尖ったセンスを感じさせる格好になった。非常にクールである。かつセクシーである。服装は決まった。完璧だ。
……皮肉なことに、メロディアにとって、このエターナル・ギミックを羽織ったことこそがまさに命取りになるのだが、それはこの時の彼女には知る由も無いことだった。
メロディアは考えもしなかったのだ。『女神』も気を抜くと、エターナル・ギミックの完全なる影響下に置かれてしまうということを。
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