第5話 ゲームオーバー、そして

 目を覚ますと留置所の檻の中だった。なぜか同じ檻の中にジョージがいる。

 彼は俺を助けおこしながら言った。

「何やってるんですか かす゛の さん、カタギの女は殺しちゃダメですって」

「おう」

「脱獄を手伝いますよ」

 ジョージは何の躊躇いもなく檻の扉を開いた。キイという軋み音と共に開いたそこから、ジョージが俺を連れ出す。

 なぜか檻の前にいた警察官は、大いびきをかきながら眠っていた。

「かす゛の さんを助けるのに邪魔だから眠ってもらいました。他の警察官たちもみんな眠っているから大丈夫ですよ」

 どうやら貯水タンクの中に大量の睡眠薬をぶち込んだらしい。さすがはジョージ、やるときはやる男だ。

「こっちです」

 ジョージは警察署の中をスタスタスタと早足で歩く。これだけ大きな警察署なのだから、当然警察官はたくさんいた。例えば窓口に、その奥に並んだデスクに、だけどどの警察官も深く眠り込んでいてピクリとも動かない。警察官の人形をずらりと並べただけの、無人の博物館みたいだ。

 スタスタスタスタ。

 かなりの早足で歩くジョージを追って、俺は警察署の表玄関から堂々と外へ出た。

 外に出ると、昼下がりのまだ空高くにある太陽が眩しかった。

 そのままさらにスタスタスタスタと、連れてこられたのは商店街の入り口。

「おう!」

「え、なんでここにきたのかって? これを返すためっす」

 ジョージが俺に言う。

「これ、 かす゛の さんの財布とコルトです。あ、手間賃として所持金は半分もらっておきました」

「おう!」

「あ、それて商店会長夫人ですが、どうやら弾は急所を外れたようです

「おう?」

「え、確かに仕留めたはずだって? 夢でもみたんじゃないですか。商店会長夫人は、商工会館の前で かす゛の さんを待っていますよ、うまく逃げてくださいね」

「おう!」

「それじゃあ、頑張って空港を目指してください!」

 ジョージに背を押された俺は、コルトを構えて商店街に駆け込んだ。

 こうなったら、世界の果てまで逃げてやるっ!

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世界の果てまで逃げてやるっ! 矢田川怪狸 @masukakinisuto

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