第25話 種目決め

 ミッションが発表されて、約一週間が経った。


 今日は最後の授業がロングホームルームとなっていて、体育祭の種目決めをするための時間になっていた。


 まず、来見から今回獲得できるポイントについて説明があるようだった。


「えー、さっき言った通り、まず俺から今回のポイントについて説明する。今回の仕組みは、基本種目でのランキングに応じてポイントが獲得できる。100mに関しては組ごと、それ以外は全員でのランキングになる」


 これは四月のスポーツテストと同じだ。


「団体競技はチーム全員に同じポイントが入る。代表リレーは、脱落者を決めるポイントには全員加点されるが、最終的に獲得できる個人ポイントには走った奴しか貰えない。まあ、代表として走ってるんだから、それくらいは当たり前だな」


 つまり、個人種目で最下位を取ったとしても、代表リレーで上位になってポイントが入れば、脱落を免れるということか。


「あと、障害物競走は全学年合わせたランキングがあって、それで八位以内に入ると特別加点がある。一年生じゃ厳しいと思うが、頭には入れておいてくれ」


 なるほど……


 やはり、独自の種目なだけあって好待遇だ。ポイントを稼ぐには持ってこいの種目。これは障害物競走以外を選ぶ道はないか……


「そして、体育祭の定番設定である赤だったり白だったりの勝負だが、もちろんそれもある。AクラスとFクラスが赤組、BクラスとEクラスが白組、CクラスとDクラスが青組として全学年合計で勝負し、順位に応じて200・100ポイントがクラスポイントに加点される」


 最初の実力順で順当に組ませた結果なのだろうが、姉さんたちの学年はAクラスもFクラスもかなりのポイントを稼ぐのではないだろうか。結果、よっぽど他の学年が酷くない限り、赤組が勝利する流れとなるだろう。


「その他にも、今回獲得したクラスポイントのランキングに応じて300から50ポイントまでの加点がある」


 今回は、クラスポイントへの加点がかなり大きい。その分貰える個人ポイントは少ないだろうが、手を抜くことなどできない。元々手を抜く気は無いが。


「それじゃあ、種目決めを始めてほしいんだが……誰か仕切れる奴はいるか?」


 来見がそう言うと、クラスの視線は一気に恵口に向けられていた。


「え……わかった。俺が進行するよ。でも、一人だと不安なところもあるから、美弥もやってくれる?」

「うん、いいよ」


 そして恵口と浦田が前に出て、早速種目決めを始めた。


「まず、種目と人数だけど……」


 恵口は来見からもらった資料を基に説明をする。


 それぞれの人数は以下の通り。


 100m走→男女六人ずつ

 玉入れ→男女五人ずつ

 障害物競走→八人

 eスポーツ→五人

 謎解き→五人

 代表リレー→男女四人ずつ


 代表リレーを除けばちょうど四十人になる。人数が足りないクラスは一人が二種目以上出るのだろうが、このクラスは一人一種目で大丈夫だ。


「まず、やりたい種目だったり、運動が得意じゃなくてそれしかできないとかっていう人から優先に決めていきたいと思う。その後、運動が得意な人たちをバランスよく配置する。それが俺の考えたFクラスの作戦だけど、どうかな」


 恵口が全員に向かってそう聞く。


 最初は沈黙だったが、結局他の案もないし、反対意見もなく、賛成意見で固まった。


 大体、俺の考えもそんなもんだ。まあ、障害物競走のボーナスが狙えるなら狙っていく、というのもあるが、おそらく厳しいだろう。俺は別として。


「じゃあ、これしかできないって人は挙手してくれ」


 恵口がそう言うと何人かが手を挙げる。


 そしてその人たちの要望を聞き、そのまま当てはめた結果、eスポーツが全枠埋まり、玉入れと謎解きが全枠ではないが埋まった。


 このクラスには、勉強だけできる奴とスポーツだけできる奴、そしてどちらもできる奴の三種類がいる。三つ目はなぜFクラスになったのかと言われるような人たちだが、俺や七条の他にも恵口や浦田、市川や榎本などはそうだと思う。


 そんな中で、勉強だけできる奴、つまりスポーツができない奴が唯一できそうなものに当てはめていけば、自然とそう分けられるだろう。


 あまり大きく動く動作がない玉入れや、動くよりも頭を使う謎解き、そしてゲーム。順当な結果だし、スポーツが得意な奴らにはできないものもある。


「えーっと、eスポーツ陣取りのSFPの枠が五枠全員埋まったんだけど、このまま行っていいかな」


 恵口がクラスにそう聞く。


 SFPとは、Scramble for Positionのというゲームタイトルの略称で、体育祭ではそのゲームを使うとのこと。まあ、なんとなく陣地を取り合うみたいな意味になっているタイトルだ。センスがいいかは知らない。


 そのゲームにわざわざ手を挙げたということは、経験者かゲーマーか。変える必要もないし、任せた方がポイントは期待できそうだ。


 おそらく全員がそのようなことを考え、このままでいいという結論が出た。


「じゃあ、他のを決めようか。まず全員の要望を聞いて、それからバランスを調整したいと思う。だから、人数オーバーしていいから、やりたい種目に挙手してほしい。あとできれば無回答はやめてほしい」


 恵口がそう言い、クラスの中からはわかったなどと声が上がる。


 それから、各種目のアンケートが始まった。


 100m走にはスポーツテストで目立った人たちが多く集まり、今井や服部、七条や市川などもそこに手を挙げていた。ただし、人数はオーバーしている。


 玉入れには何人か集まったが、元々枠が少し埋まっていることもあってなのか、あまり手を挙げる人はいなかった印象。


 障害物競走に関してはもっと少なく、俺と浦田くらいしかいなかった。しかも、浦田は誰もいないから渋々手を挙げたようにも見えたし、俺も自信をもって手を挙げたわけではない。


 やはり、実戦力テストと呼ばれるだけあって、何も知らない一年生には厳しいのか。当たり前といえば当たり前だが。


 そして最後、謎解きは藤原が手を挙げ、五枠全てが埋まった。元々恵口が手を挙げていたが、恵口は藤原に枠を譲った。クラスのことを考えれば、恵口は謎解きに行かない方がいいと思う。


 謎解きは会場がこの学園都市ではない場所になるため、クラスの指揮を執る人物になるであろう恵口にいなくなってもらっては困る。ほとんどの女子と仲がいいというだけで恵口の隣に立つ浦田ではクラスをまとめきれるとは思えないし、かといって他の人物も思い浮かばない。


 恵口も自分でそう思ったのだろう。浦田も視線でそれを訴えていたようだし、恵口は自分でなろうとはしていないが、クラスを治めて動かすリーダーとなっていた。

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