僕は料理ができない

@kasiwa_SS

第1話 楽しい

僕は小さい頃から料理が大の苦手だ。

幼稚園のときは気にしていなかったが、小学生になって調理実習のときに自分の料理センスを知った。

そのときの料理があまりにも酷すぎて先生もフォローに困っていた、周りからは何も言われず、ただ冷たい視線だけがそこにあった。家に帰って母が料理をしていて、僕は無性に料理がしたくなった、だから母に「手伝うよ」と言った、母は「まぁ、ありがとね、あっそうだ!今日調理実習だったわよね?悠太は勉強もできて運動神経も抜群でセンスの塊だからね今日の晩ごはんは美味しくなるわ」……何も言葉が出なかった。結局、僕は料理を手伝ったが火が強すぎて焦げたり、分量を間違えたり食材を切るのが下手でとても人が食べられる物では無かった。それでも母は何も言わず、僕が料理しているところをずっと笑顔で見ていた、父とお姉ちゃんは少し引きずった顔で食べていたが「美味しいよ」と何度も言っていた、でもそれが本心じゃないことは小学生の僕でも分かった、でも母は違った、僕の料理を宝くじが当たったかのような表情で食べ「日本一美味しい!」と言ってくれた、僕はそれが本心なのだと確信した。

その日から僕は毎日ちょっとずつ、ちょっとずつ料理について母から学び、料理を繰り返した。最初は簡単な卵焼きから作ることにし、母に手伝ってもらいながら作った卵焼きは僕の家族全員が驚いた。一番驚いていたのは僕で夢なんじゃないのかなって思ってた、そして一番泣いていたのは母だった。母は僕が作った料理の見た目が悪くても味が変でも料理に真剣に向き合ってくれてることが一番嬉しいらしい、だから見た目や味が悪くても母は笑顔だったのだ。僕はそのことを知りもっと料理がしたくなった。

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