Epilogue

第22話


「あのさ、その」

「なに?」

「ごめんね」

「なんであやまるの」

「いやその、」

「後悔してるの」

「そんなわけない」

「よかった。ならあやまらないで、胸を張ってよ」

「そうだね、うん」

「あやまるとしたら、私の方なんだ」

「そんなことは」

「いいよ、そういうのは」

「…………」

「勝手に世界の見方を決めて、勝手に誰かを飾り立てて」

「……誰だってそうじゃない」

「このままの日がずっと続けばいいな、なんておもってて」

「全部そうだよ。慣性の法則ってやつ」

「馬鹿みたいに我儘言って駄々こねて」

「人間なんで大体つきつめて言えば我儘だよ」

「夜空の星が落ちたら、それを空には戻せないんだ」

「まあ、大災害だね。人類滅亡かも」

「むりやり空に投げても、空には届かないでどこか別の所に落ちるだけで」

「秒速8キロじゃあ投げられないからね」

「今でも、空を見上げたくはなるけど、やっぱりそこには何にもなくて」

「きっと飛行船か何かの見間違いだったんだよ」

「私って、案外悪い女なのかも」

「どうしたの、急に」

「だって、あんなこと言ってたくせしてさ」

「くせして?」

「こうやって結局、手が届くのが嬉しいなんて思ってしまうんだから」

「………………ふぅん」

「だからさ……」

 どうかこれからも、その光を私の傍らで。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハイドロゲン・バイナリー 梅雨乃うた @EveningShower

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ