第21話
***
新設戦域地区奪還作戦、通称「オペラツィオン・ウィンドホーゼ」は失敗に終わった。
原因は多岐に渡るが、最大のものは誘引を行った竜種の規模を見誤った事であるとされた。
交戦区域に突如出現した大型種。
それは数分のうちに交戦中だった共和国軍と王立空軍の巡航艦計3隻を撃沈、2隻を大破に追い込み、そして旗艦「アテーネ」に肉薄した。
王立空軍は直ちに残存戦力を結集。戦闘母艦も至近距離での砲戦を展開し「アテーネ」の喪失は免れたものの、大型種の撃破には失敗。巡航艦一隻をさらに喪失し、二隻が中破。戦闘艇・制圧艦も多く喪失する事となった。
加えて、それとほぼ同時に出現した小型種及び中型種の大規模集団。この集団に食人種が数多く含まれていたことが更に戦局を混乱させた。
食人種の攻撃対象となった共同作戦中の陸上予備軍より救援要請が殺到。
作戦総司令より指揮を移譲されていた作戦総司令代理は、竜種と共和国軍双方と並行して戦闘を継続する事は困難と判断。展開中の陸上予備軍の人員を強襲艦に収容し艦隊に撤退命令を発令したことで、本作戦は目標の達成に至らず終了した。
出現した竜種は作戦において交戦区域に誘引予定の集団であったが、その規模は予想をはるかに上回るものであり、誘因にあたっていた任務隊の一つが共和国軍との戦端が開かれる以前の早期に消息を絶っていることから、捕食行動として自発的に人間の多く集まる交戦区域に集結したものと判断された。
作戦の一週間ほど前に報告されていた小型種による大量食人現象などから、専門家はこの現象を当該戦域地区の民間人が多数竜種に捕食されたことに起因する食人種の大量発生と狂乱索餌によるものと推測。大型種については、この中型種以下の個体密度が上がった事により現れたとの説が濃厚とされた。
なお、本作戦の前に発生した新設戦域地区防空戦における大規模集団も同様の理由により生じたものと推測され、集団捕食現象は予備軍では広く知られていた事などから、予備軍と王立軍の間での情報の共有が十分に為されていれば一連の事態も予見できたとの指摘が噴出。両軍の協力体制の見直しを求める声が上がった。
また、一連の作戦において共和国との交戦の戦端は共和国軍による先制攻撃によるものと発表があったが、多くの作戦参加者が予備軍は当初より共和国軍との交戦状態にあったと証言。臣民の間では作戦の失敗よりこの件の真偽に関心が集まっている。
連邦王国政府は、これについて未だ沈黙を保っている。
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