1‐3 エドガー・プライベートアーセナル

閑話 リリサ・アンブレラからの手紙(2)

 拝啓、親愛なるエドガー先輩へ


 どぉおおおしましょう! どうしたら良いですかせんぱあああいい‼ リリサは、リリサは、もう何もかも嫌になってしまいました……。



 すいません。感情のままに書きなぐってしまいました。


 まず何があったか説明をします。ミラージュの追加生産が見送りになりました。


 第一ロットとして、生産された十六機ですが、各基地に配備された後、六機が不具合を、二機が事故を起こしました。


 対策チームとして再編成された私たちは原因究明と対策に当たっていますが、理由は明白です。急な仕様変更に伴う、機体の耐久力不足です。


 やはりベンメル少佐の修正案では機体の剛性が不足していたんです。


 そして、一番の問題は、中央国防省にとどまらず、アゼルデンの主要メディアで取り上げられてしまった事なんです。軍の安全管理はどうなっているのかと、世論が紛糾しています。ラトクリフ局長も火消しに奔走するはめになって、疲れ切っているみたいです。


 でも全然気の毒だとは思えませんよ!


 局長は、今回のことを全部エドガー先輩のせいだと言い出したんです。先輩がこうなるように、仕組んでいたのだ。エドガーがすべて悪いのだと。


 もちろんそんな言い訳が通るはずもなく、局長と、ベンメル少佐の責任問題に発展しています。開発チームも黙っていませんでしたよ! 


 私たちは全員で一致団結して、局長とベンメル少佐に意見をしました。エドガー先輩を更迭して、ミラージュを台無しにしたのは、局長たちの責任であると、はっきり言ってやりましたよ! リリサだって、やるときはやるんですから! 


 私たちに詰め寄られた局長は何も言えなくなって自分の部屋に引きこもってしまいました。


 後で、「エドガー――ッ‼ よくもぉぉお!!」って怒鳴り散らす声が聞こえていましたけど、いい気味ですね。近々責任を取らされるっていう噂もあります。因果応報ですよ。


 ベンメル少佐も局内の立場がなくて、仕事もせずに雲隠れしているみたいです。私を含めて、みんなに冷たくて、もともと好かれてはいませんでしたし。なんていうか、気取ったのが鼻につくんですよね。


 局長たちはいい気味ですが、私たちチームは苦境に立たされています。


 ミラージュの今後が危ぶまれています。場合によっては、生産中止になる可能性もあります。先輩が残してくれたミラージュを守れなくて申し訳ありません。


 また、続報があればお手紙を出します。先輩もお体に気を付けて。



 あなたの部下 リリサ・アンブレラ


 ※この手紙は、王立中央工廠研究室から郵送されたが、検閲のため、遅れていた。最新装備に関する記述があるため、メディア流出を危惧し、郵送局にしばらく保存されていた。本書は複製であり、原本は六カ月遅れで、ユルシカ基地へ届けられた。

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