第12話 コアに必要なもの(2)
それはこの世界で広く使われている、動力発生機だ。
通常魔素と呼ばれるエネルギーは、星を絶え間なく循環している。
地中のものを集めて活用したり、海中からくみ上げたりと、採取方法は多様にある。
それらは、採取が容易であるという点でメリットだが、地形に左右されるという弱点があった。
大地の魔素には濃淡がある。
現在大規模な採取型魔素動力機が置かれている場所は、過去は聖域だとか、霊脈などの名前で呼ばれていた場所だ。
大型魔導艦に積んでいる動力機は、停泊中に基地から融通されるか、航行中でも海中から
動力問題は兵器開発にどこまでもついて回る。
しかし、大戦後期にそんな常識を打ち砕く新技術をグラナダが開発した。
それが、『
少量のバッテリー程度の魔素があれば、縮退をはじめられる。
補充も必要としないために、どこでも設置ができる。
おまけにとんでもなく高効率だ。
もちろんリスクもある。
基本的に大型になるし、制御が難しい。
攻撃を受けようものなら暴走し、魔力災害を引き起こす。
大戦末期では縮退炉の爆発が原因で不毛の土地になった地域もある。
さすがのエドガーも顔が引きつった。ステラも斜め下を向き、目を逸らした。
「月光といい……、なんでそんなものがここにあるんだ?」
流石に異常だった。
整った設備、大きすぎる基地規模。集められている有能な人材……。
この基地って、一体なんなんだ?
――その時、爆発音と共に地響きがエドガーたちを襲った。
地が揺れ、灯が明滅し、棚においてあるステラの私物が次々と倒れる。
振動そのものはすぐにおさまったが、通常の地震ではありえない揺れ方だった。
ステラと共にテーブルの下に逃げ込んでいたエドガーは、揺れが収まったのを確認し、そっと頭を出した。
「ステラちゃん。君はここにいて。いいね」
ステラに怪我がないことを確認したエドガーは、短く告げると、部屋を飛び出す。
彼も技術職とはいえ軍属である。
戦時下ではないものの、敵性勢力の攻撃である可能性も考慮した。
まずは状況把握が必要だ。
ドックから出るやいなや、まぶしい光に目がくらむ。
海原から、轟音を立てそびえたつ、翠色の閃光が見えた。
うねるようなエネルギーの
それは巨大な蛇のようにも見える。現在の魔導科学文明の根幹を支える、循環する惑星のエネルギー。すべての生命の根源、
それが、本来の流れを外れて海上に噴出しているのだった。
「エドガーさん! 外どうなっていますか⁉ ――ってなんですかこれ!」
遅れて出てきたステラに振り向きもせず、問いかける。
「一応確認なんだけど、ステラちゃん。停止中の縮退炉のトラブルって、何?」
「――炉の過剰ドライブ、いわゆる暴走状態です。朝から姫が基地中の隊員を集めて対応に当たっていました」
――エドガーは絶句する。
寒気がした。
冷や汗が背中を伝う。
最悪だ。
これはまずい奴だ。
「なんてこった。大災害一歩手前じゃないか……。炉心融解を引き起こせば、ここら一帯重大な魔力汚染を引き起こすぞ!」
もっとも、炉心が吹き飛べば、直上の基地にいるエドガーたちもどうせ無事ではすまない。
「ご、ごめんなさい……」
「いや、ステラちゃんのせいじゃない」
そう言いつつも頭痛がひどい。
エドガーはひどい時にひどい場所に来てしまったと悔やみながらも次にするべき行動を模索しはじめる。
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