第26話 エピローグ(第一章)

 一か月後、完治した僕は、冒険者組合の部屋を後にした。


 別の部屋にいたホーラは、僕よりも一週間ほど早く復帰していた。


 彼女は、完治して組合の建物を去るときに、僕の部屋までやってきてくれて、「セレ、無茶しすぎです」と泣き笑いを浮かべていた。


 カザミユキはそのときに彼女に返した。


「さて、久しぶりの化石掘りだ」


 組合の建物を出た僕は、背伸びしながらそう呟き、ダンジョンの入口へと向かう。


「セレ!」


 そんな僕の背中を、聞き慣れた声が呼び止める。


「ホーラ!」


 こちらに駆けてくるのは、ホーラだった。


「どうしたの、その荷物⁉」


 ホーラは真新しいザックを背負っていた。


「私もセレと化石を掘りたいなと思って、買いました」


 ホーラは嬉しそうにそう言った。


 僕たちは特別依頼を達成できなかったけど、組合は結構な額のお金をくれた。


 ひょっとするとクレアさんが組合の上の人と交渉してくれたのかもしれない。今度会ったときにお礼を言っておこう。


「ハンマーも買いましたし、タガネもあります。あとは――」


「早速たくさんお金使っちゃったんだね……。残りのお金は大丈夫なの?」


 ホーラは一瞬目を逸らしてから、


「今日たくさん化石を掘って稼げばいいんです! ――セレ! 早く行きましょう!」


 僕の手を引いて、歩き出す。


「だから、化石じゃ全然稼げないんだって……」


「大丈夫です。セレがいれば百人力です」


「……はぁ~。酒場のミラネさんにはちゃんとお金返したの?」


「……」


「ホーラ?」


「今はそんなことよりも化石掘りです! 色々と教えてください!」


「分かったから、そんなにぐいぐい引っ張らないで。危ないよ」


 僕は彼女の隣に並んで、歩く。


 ダンジョンには、輝く宝石にも負けないほど美しい化石たちが眠っている。


 僕は、いや僕たちは、まだ見ぬ化石を求めて、ダンジョンへと潜る。


 もちろん楽しいことばかりじゃなくて、モンスターに襲われて命からがら地上に帰ってくることもある。


 それでも、化石を見つけるまでのわくわく感や、掘り当てた瞬間の喜びは、何物にも代えがたい。

 

 だから、これからも化石を掘り続ける。


「ホーラはどんな化石が掘りたいの?」


 僕の問いに、前を行く彼女が振り返る。


「私が最初に掘りたい化石は、もちろん――」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダンジョン化石ハンター~モンスターの化石を掘って暮らしてます~ まにゅあ @novel_no_bell

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ