7章182話 巫女の役目

「そもそも巫女、とは何をするのですか?神職の類ではあると思うのですが」

「世界樹は放出された魔力を濾しとってまっさらな状態にする役目があります。しかし、その過程で魔力に込められた穢れを少しずつ溜め込んでしまうのです。それを解消するのが巫女の役目。強力な浄化の光を持つものが選ばれます」


 浄化の光……ただの光属性じゃない。おそらく聖属性、発現率はかなり低いらしいし発現しても出力は本人の資質に関係する属性だ。


 綾や司もこの属性は使えない。もちろん俺も。


「代々巫女はエルフから選ばれました。しかし……先代の巫女が亡くなった後、エルフの里には巫女になりうる者はいなかった。そこで取った手段が獣人の里から候補者を連れてくること」

「それで化紺先輩のお母さんが?」

「えぇ彼女は先代すら超える浄化の力を備えていました。それに獣人の里との確執を無くす事もできるのではという期待もありました」


 確かに里のエルフたちは獣人が嫌いな様子だった。見ていて気持ちのいいものでは無かったしそれを無くそうと考えるのもわかる。

 でも、今も続いてるって事はその企みは身を結ばなかったみたいだ。


「森を愛し植物と共に生きるエルフと森に生き動植物を食べる獣人は同じ場所に生きていながら対立していました。それに疲れた族長同士で子供を結婚させようとし、二人は結ばれました。幸いなことに彼らの仲は良好でした」

「はい、それは化紺先輩を見ていればよくわかります」


 家族のことを話す先輩の顔はすごく懐かしそうに楽しそうに話すから。


「私が話せるのはこのくらいです。母が皆さんを連れて来たという事は何か意味があるのでしょう。私の権限で里での自由を約束します」


 族長さんは全て話したという感じで立ち上がって奥にいなくなってしまった。

 何か先輩の両親について手掛かりとかないか聞きたかったんだけどな……


「さて、族長さんから話も聞けたことだしこれからの方針でも決めよう。まず、黒葉病の原因解明。この後患者を見に行って実物を見させてもらおう。次に巫女。これはかなり望み薄だ。化紺さんのご両親を今から探したら年単位で時間がかかる」

「それだと何も出来ないよ?巫女がいないと入れないんでしょ、世界樹」

「うん、だから勝手に入ろう」


 何言ってんだこの親父。聖域だって族長さんが言ってたの聞いてなかったのか?見ろよ、他の隊員も絶句してるぞ。


「雪の中にいる神様が何かできるかもだし外からじゃ何も分からないからね。それに族長さんは何か隠してる。里の入り口は警備してるのに世界樹の周りには警備がいないみたいだから気になってね」

「黒葉病の原因の葉っぱが落ちてくるからでしょ?そもそもよくここから世界樹周りが把握できるね」

「うん、まぁそうなんだけどさぁ。巫女と今回の黒葉病。完全に無関係だと思う?」


 確かに枯れかけてる世界樹から落ちて来た黒い葉。いなくなった巫女。関係ない方がおかしい。どうにかしたい人が締め切って何もさせないというのは違和感がある。


 それに黒葉病から感じた既視感も気になる。


 良くないかもだけど魔力を吸って見て既視感の正体を探るのも良いかもしれない。


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