7章179話 意外なる出自
「いやぁ、そこまで驚いてくれると内緒にしてて良かったなぁ」
「いや、本当にビックリしました。でも何で案内人に?」
前に化紺先輩は純血の獣人だと言っていた筈。エルフとは何の関係もない筈なのだが……。
「実はウチ、エルフと獣人のハーフなんよ。子供の頃はエルフの森で育ったから案内役に抜擢されたっちゅうわけ。嘘ついててごめんなぁ?」
申し訳なさそうにしかししてやったりと言う感じに笑いながら答えてくれた。そういえばあの時!
『狐の話は話半分くらいで聞いとくもんやで』
とか言ってたな!やられた……。
あの時先輩はハーフは生きづらいと言ってた。あれは自分の事を言っていたのかな……?
「いやぁ私も彼女が獣人とエルフのハーフだと聞いて驚きましたよ。エルフってかなりそう言うの嫌う種族ですから。特に獣人とは仲が悪い筈なんですよね」
魔防隊員はかなり感心した様子で喋っていた。確かにエルフは高潔で潔癖なイメージがある。そういう意味でも化紺先輩はエルフらしくないとも言える。
少しだけ親近感を感じながら化紺先輩の話を続けて聞くことに。まだまだエルフの森までの道は長い。
「パパとママの仲は悪いどころかめちゃくちゃおしどり夫婦やったで?里からは少し離れた場所に住んでたけど二人で協力しながら生活してた」
「里から離れてたのはやっぱりエルフの反対があったから?」
「そうやろうなぁ。ウチが里に一人で行った時なんかえらい事になったから」
昔のことだと割り切ってカラカラ笑う化紺先輩はやっぱり心の強い人だ。言葉を濁してはいるもののたぶん迫害に近いことをされたんだと思う。
自分たちとは違う異形のもの。人は理解するより遠ざける方が楽だし安全だから関わることをしない。俺の場合は受け入れて接してくれる周りがいたから幸運だった。
話に参加していた魔防隊員が思い出したかのように化紺先輩に質問する。
「そういえば化紺さんのご両親ってエルフの森にいらっしゃるんですかね?ご両親に相談なくお願いしたらしいのでそこらへん気になってしまって」
「そうなのかい?それは申し訳ないことをした」
「問題ないですよ。二人とも今何してるのかウチにもわからんので。小さい頃居なくなってしもうたから」
思いっきり地雷を踏み抜いたー!それって化紺先輩を置いて行っちゃったってことでしょ?しかもエルフのいる里に一人で。
重苦しい雰囲気が車内に漂うのをどうにかしようと父さんの足を蹴る。
「それはその……そうとは知らず」
「あぁいやええんよ。ウチはそのことに関して恨み言も何も無いから。どっちかっていうと有名になって見つけに行ってやるー!って感じやから」
はにかみながらそう喋る化紺先輩は悲しい顔は一切見せなかった。
「そろそろ聖域結界に入ります!」
運転していた魔防隊員がそう車内に聞こえる声でアナウンスした。
「聖域結界って?」
「世界樹を守る為の結界さ。エルフの森を囲むように発生している霧のような物で正しい道順を知らないと入り口に戻されるんだ」
「へぇ弾く以外にも結界ってあるんだ」
車は化紺先輩の指示で進行方向を決めながら進んでいく。正直なところどっちが正解かわからないし、ちゃんと前に進んでるのかすらこの濃い霧の中だとわからない。
進み続けて数十分。
「そろそろ霧を抜けるで!」
真っ白な霧が晴れその先に見えたのは樹海とそれとは比べようもないほどの巨木だった。
「何て壮大な景色なんだ」
「んふふ、そうやろそうやろ?ようこそ、エルフの森へ!」
自分の宝物を見せるみたいに嬉しそうに笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます