6章176話 不審者
既に俺の身体には雪鬼と翠がいてもう同居人は要らないんだけどこの老人いたからここに?
「えっと、あなたは?」
横に伸びる白い眉毛と綺麗に整えられたふさふさの髭が印象的な老人。基本的に俺の中にいるのは俺と関係のある魂か能力に関係のある奴だけだ。
そういうことならばこの老人も何か関係があるのだろうか。まさか未来の老いた姿がこれとか言わないでほしい。流石にショックだ。あ、いや老いたらお婆さんになるだけか。
というかあれ?耳が遠くて聞こえてない?全く反応がないんだけど……
「貴方は誰ですか!!」
「………ん?おぉ寝とった。すまんのぅ、眠くて」
寝てたよ、自分から話しかけたくせに。
なんか物凄くマイペースな老人だ。
「お前さんに居候させてもらって悪いの。ワシはユグド。神をやっとる」
「おじいちゃん、朝ごはん何食べました?」
「ボケとらんわッ」
いや、ねぇ。ほら、自称神とか言う老人ほど疑うものはないでしょ。いつこのボケ老人が入ってきたかと考えたらやっぱりミイラと戦った後、だよなぁ。
あの球が原因っぽい。勝手に体の中に入ってきてどこかに行ったと思っていたらこんなところに。
「で、その自称神様がなんで私の中に?正直出てって欲しい」
「正直過ぎないか?だが断る!」
「なんでさ!」
もう翠と雪鬼で手一杯なの!これ以上心でシェアハウスしてたまるか!他所に行け他所に。
そうだ、父さんとかどうだろう。孫バカになる前に爺さん飼ってプラスとマイナスで打ち消し合え。
「誰がマイナスだ!」
「心を読むなよ!で、本当になんでいるの」
「そりゃあ主がワシを助けてくれて掴んでくれたからじゃ。神核、触ったじゃろ?」
あの球がやっぱりこの老人か。触らなきゃ良かった。
「それにの、他の者だとワシは宿れんよ。特別強靭なお主以外はな」
「別にそこまで強くはないと思うけど」
「いやいや、翠を宿しても動けたお前は特別だぜ?人より魂の容量が格段に多いからな」
そうなの?雪鬼が言うならそうなのかもしれない。確かに一人の体に魂一つ。それが普通だもんな。いやそれにしたってじゃない?
これ以上シェアハウスして同居人増やしたくないんだけど。
「まぁ、そこのジジイが入ると容量オーバーだけどな、クハハハハ!雪お前体動かせないだろ?」
「やっぱジジイ、出てって?」
「いやじゃ!そうしたらワシ死んじゃう!」
大丈夫、きっとなんとかなるって。このままだと俺寝たきりなんだからさ。元凶はさっさとおうちにおかえり。
「わ、ワシが居れば力は底上げされるしドライキュリアじゃったか?の面倒も見れるぞい」
「緋翠に手ェ出したらコロス」
「違う違う!ドライアドとしての力の使い方を教えるってことじゃ。ワシは世界樹の神、植物のことなら全て知っとる。元々、ドライアドとはワシが作り出した精霊が変質した者じゃからの」
胡散臭い……そもそも世界樹ってなんだ。神なんて見たこともないし聞いたこともない。そんな得体も知らない奴に緋翠は任せられない。
緋翠のことならアーデにでも聞けば大体のことはわかるから困ってないし。
「どうじゃ?少しは気が変わったかの?」
「いや全く」
「お願いじゃあせめて世界樹に接続するまでで良いから!」
「だからその世界樹って何なの?そんなもの見たこともないけど」
「?」
しがみついてくる老人を引き剥がしながらそう俺が言ったら不思議そうな顔をした。なんだ?何か変なことでも言ったかな。
「お主、魔力を使ってるじゃろ?ならばある筈じゃ。世界樹とは世界を巡る魔力をコントロールする根幹機構じゃ」
「ん〜でも聞いたことないなぁ。それに動けないからそこまで行けないよ?アンタのせいで」
「ぐぬぬ……」
世界樹までって約束ならいても良いけどそこまで移動することはできないんだから諦めて欲しい。そうしないとずっとあの見慣れた天井を見続ける事になる。
「それなら雪、そろそろ門を開けるか?」
雪鬼が提案してきたそれは願ってもない話ではあるものの、それで動けるようになるのか?
「翠の方はまだしも俺の方はお前自身の力だからな。拡張すれば少しはマシになるだろうさ」
「ならやろう。一刻も早くこの老人を追い出したい」
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