6章173話 死者再臨

「【灼血・血斬】!」

「おい、雪!大技連発するんじゃねぇ!魔力切れたら終わりだぞ」

「そんなこと言っても……!」


 まるで津波だ。死者の行軍が止まらない。無限に湧いて出てくるコイツらに余力を残す余裕がない!


「雪さん!」

「千奈ちゃん何か分かった!?弱点とか!」


 壁画を解読していた千奈ちゃんが何かを発見したらしい。何でもいいからこの大群を何とか出来る情報をくれ!


「それはまだです!」

「マジか!」

「でも、あのミイラのやりたい事はわかりました。生き返るみたいです!」

「もう生き返ってるよね!?」


 既にピンピンしてらっしゃってノリノリで手下量産してますけど!?あぁもううざったい!


「マナス、魔力くれ!」

「わかりました!」


 マナスのため込んだ魔力を変化した本人を纏うことでもらい受ける。それから雪華を短刀状態に!


「緋翠、解き放つよ!【灼竜砲】」


 膨大な魔力の制御を緋翠に任せて鬼化した身体で支えて砲台に。この技なら一掃できる!出来るならそのままミイラまで届けぇ!


 雪華が炎に似た魔力の残滓を纏いながら光り輝く。元々が植物である雪華と緋翠の魔力は雪の灼血の燃える魔力と相性が良く相乗効果でとてつもない威力を生み出す。

 燃え盛る竜と化した魔力の本流はマミーを焼き尽くしながらミイラまで向かう。


「あ"ぁ"〜」

「これでもダメかッ」


 ことごとくを焼き尽くして進んでいた竜も屍の壁に阻まれて食われていった。


「雪さん、それからみなさん聞いてください!あのミイラ、ファラオは死んでいます。そもそも、この壁画自体ファラオが死んでから話が始まってるんです」

「つまり、まだ完全に生き返ってないのか!?アレで?」


 燃え盛る炎でマミーが近づけなくなっている間に千奈ちゃんから話を聞かないと。でも、死んでてこれって生き返ったらどうなるってんだ。

 エジプトの神話とか詳しくないからよく分からないし!少なくとも奴が一生懸命に展開してる魔法陣がそれか。


「はい。壁画ではファラオは死後、冥界に行きそこで復活まで居ると描いてます。そして、これが重要なんですけど生前から太陽に弱いような描写があって……復活の時も太陽が無いんです!」

「それって太陽光が弱点とか!?私たちそんなこと出来ないよ!」

「いや、綾なら光属性の魔力で何とか……」

「なるほど!【極大光球】」

「あっ待って綾さ」


 超特大の光球を生み出した綾、それを見たマミー達は確かに怯んだ。消滅したものもいた。


 が、ファラオが動いた。

 魔法陣の効果は太陽光を

 綾の放った光球はファラオの魔法陣に無惨にも吸収された。


「え」

「あのファラオは太陽の力を取り込んで完全に復活するつもりなんです!壁画で復活した時は日蝕を起こしてました。多分、光はダメかも!」

「じゃあどうしろと!?」


 ほぼ弱点皆無じゃ無いか。


「一つだけ、あるかも、なんですけど……」


 自信なさげな様子の千奈ちゃんに俺達はそれでも、と教えてもらうことにした。


「ファラオが冥府に行った時に心臓を抜き取られてるんです。それはまだ、冥府にあって……棺桶は冥府から戻ってくるための目印だから……あの棺桶を破壊すると心臓とファラオの肉体の繋がりが切れて倒せる、かもです」


 あの屍人ひしめく中棺桶を壊せってことか。しかもさっきの大技ですら棺桶どころかファラオにすら届かなかったのに。

 出来るのか?


「千奈ちゃんありがとう。それから雪!」

「いたッ!?何するんだ!」

「一人で考え込むな、俺たちを頼れ。何のための仲間だ、頼るのが下手なんだからなんでも言ってみろ、こっちが合わせる」


 そう言った司にハッとして周りを見渡す。

 そうだ、俺には仲間が、それに緋翠や翠もいる。一人で抱え込まないで良いんだ。


「何か考えがある人は?」


 どうやっても俺じゃ解決法は浮かばない。なら頼ろう。頼もしい友達を。


「一つ、何とか出来るかも」


 意外にも手を挙げたのは鬼灯さんだった。


「僕には棺桶を壊すような破壊力はない。でも、この眼で注意を逸らすことなら可能だ。千奈さんの情報ならやつは男。なら魅了の魔眼で僕に注意を向けさせる」


「そのうちに破壊する、という感じかな。でもマミーはどうする?無限に湧いてくるから攻撃しても防がれる」

「それに関しては私が」


 次に手を挙げたのは怜。千奈ちゃんを守りながら壁画を見ていた。なら何か分かったのかも。


「無限に見えるかもだけど出てくる奴らは同じだった。壁画を見るに死んだ手下をまた再召喚しているだけみたい。だから」

「私の魔力を全て怜姉さんに渡して凍らせます。そうすれば新しいマミーは出てきません」


 マナスが冷の言葉を繋いで話す。確かにそれなら行けそう。


「ただ、問題が何個か。一つ目は魅了の魔眼は相手が見た時しか発動しないこと。仮面だと通じるかわからない。二つ目はマナスの魔力が足りない。さっき大量に使ってしまったから。それから一番の問題点。棺桶が破壊可能かという事」

「それはやってみないとわからないよね。最悪、ファラオを直接ぶちのめすしかないか」


 ちょっと不安が残るけど確かにその方法なら行けるかも。

 

「なら役割を決めよう。雪、綾、澪、千奈ちゃんは棺桶を。怜、マナスはマミーを頼む。それから鬼灯は魅了の魔眼が少しでも長く続くように魔力を練っていてくれ」


 司がそれぞれの分担をうまく纏めてくれた。でも肝心の司は?


「司はどうするの?破壊担当?」

「いや、俺はあの邪魔な仮面を剥がしてくる。そうしないと全体が崩れるからな」

「援護は?」

「要らない、何のための俺の能力だ?魔力は温存しとけ」


 



 



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