6章172話 幻想図書館
〜引退した魔防隊員のインタビュー〜
「現役中で一番死にかけた事は何ですか?」
記者がそう質問すると男はこう答えた。
「魔防隊に入って30年余り……死ぬと覚悟した事は色々あったよ。でも一番怖かったのは図書館だ」
「図書館、ですか?」
男のあまりに恐怖とかけ離れた言葉に記者は疑問しか湧かなかった。
「一般の人はダンジョンの危険は魔物だけだと思っているだろう。ただ、ごく稀に、雷が一人に何回も直撃するよりもあり得ない確率でダンジョンが割れる事がある」
男は震える手を押さえながら過去にあった出来事をさらに語り出す。
「私たちは物語に殺されかけた」
「ああああああ!?」
ヒビに吸い込まれた俺達は勢いよく地面に叩きつけられ転がった。
さっきまでいたダンジョンと違い、切れ目すら無い綺麗な石の床だったから余計にゴロゴロと回転しながら着地した。
見渡す限り続く大図書館、その中で倒れる八人にさらに追い打ちをかけるように異変が起きる。
数多ある本棚の中から一冊の本が飛び出して一行の前まで移動してくる。
そして開いた。
本に書かれた文章の大群が本棚を図書館を空間を埋め尽くしていく。
まるで本が空間に染み出すようにして侵食していく光景を俺はただ見ていることしかできなかった。
そうして、本が浸食した後の図書館は壁画の描かれた石造りの空間に置き換わっていた。
「棺桶……?」
目の前に置かれた棺桶。それはいつか見たエジプトのミイラが入っているようなそれ。
ものすごく嫌な予感がしてきた瞬間、棺桶の蓋が横にずれた。
「みんな……これってアレかな。蘇ったファラオ的な」
ダンジョンではマミーが居た訳だが出てきたそいつは仮面をした包帯男。言うなればモブとネームドボスくらいの格の違いを感じる。
『あ"ぁ"あ"あ"」
魔物のような気迫こそ感じないものの、ジトっとした殺意のようなものを振り撒きながらミイラは叫んだ。
「魔法陣!?まずい何かする気だ!【灼血】」
マミーには良く効いたこの技ならばミイラにも良く効くだろうと俺はいち早く攻撃を開始。
ミイラらしく緩慢な動きで避けることもなく着弾した。
「見た目だけみたいだ。司、何処かに出口とかないか探そう」
「いや、そうでもないみたいだぞ」
もう終わった気でいた俺は司の声でミイラのいた方を見る。
燃える血で派手に燃えていると思っていたミイラはなんとマミーを召喚して盾にしていた。
肝心のやつは全くの無傷。
「手下で守った!?どんどん湧いてくるぞ!」
冥府から蘇ってくるかのように地面から出てくるマミー達。そしてその後ろで何やら準備しているミイラ。
つまり、コイツらを倒せばいいんだな?
「よし!あったから出てきてくれたんだ。倒してここから出るぞ!」
「と言ってもどうしよう!私の魔法でも次から次へと出てきてキリがないよ」
綾が先ほどから超火力でマミーを焼き払っているが無限に出てくる為ミイラに攻撃できていない。他のみんなも似たような感じだ。
特に司が酷い。一対一が基本の司は集団戦には不向きだ。負けはしないけど勝てもしない。
「これ何とかしないと魔力切れて死ぬ!澪、何かわかる事ない!?ほら、式神とかと似てるし」
「こんなのと一緒にしないでよ!ミイラが召喚してるのが良くあるやつだけどそんな様子はないのよ!勝手に湧いて出てきてる感じ」
ミイラとは無関係に湧いてるとなると魔道具がそれに近い何か、か?あの仮面が怪しいけど……
そもそも図書館とこのミイラ達。何か関係があるのか?ヒビの中にあった図書館、飛んできた本、それにミイラ。元々棺桶に入っていたミイラ。
「雪さん、これってピラミッドの中みたいじゃないですか!?それにこの壁画、あのミイラそっくりです!」
「!」
千奈ちゃんの言葉で何となく分かった気がする。
棺桶に眠る王様とその眠りを妨げる侵入者を守る手下。王様がメインかと思ったけどどっちかっていうと王様が入っている棺桶、それを守る兵士がメインの話なんだ!
「壁画にどんな事が書いてあるかわかる?千奈ちゃん!」
俺と澪、綾の広範囲攻撃持ちがマミー達を足止めしている間千奈ちゃんに解読をお願いする。
「ピラミッドと仮面の人……それから民?もう一つは……棺桶に入った王様とその周りで……一緒に眠ってる?」
千奈ちゃんが一生懸命見ている間周りに湧いたマミーは怜、司、鬼灯が対処していた。
「千奈には触らせない!」
「コイツら知能あるのか!?俺たちより千奈ちゃんを狙ってやがる」
それぞれができる事をしている中、千奈が気になるものを見つけた。
「棺桶から出てきた王様と……これは太陽?それから太陽を隠してる?」
あとがき
復活しました!
色々と生活が変わってきて時間が……ともあれリハビリはしながら毎日投稿できるように頑張って参ります!
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