6章168話 初めてのおつかい
「皆、集まったようなので少し早いが説明に入る。」
まだ、日が昇って少ししか経っていない暗い学校に俺を含めた生徒は集められていた。
「これからダンジョン研修を始める。今回は初回ということもあり魔物との交戦は絶対ではない。ダンジョン内にある資源を持ち帰ることが今回の課題だ。何か質問のある者はいるか?」
ダンジョン研修。ついにこの日が来た!この日のためにいろいろ準備してきたからな、楽しみで仕方ない。ほかの生徒たちもそんな感じだ。浮足立ってそわそわしているのが空気で伝わってくる。
先生の問いに何人か手を挙げて質問していた。
「魔物がいた場合は交戦しても問題ないんですよね?」
「当然だ。次回からは指定した魔物の討伐もあるからな」
「ほかのチームと連携するのはアリですか?」
「基本的になしだ。指定した場合や緊急時のみとなる。ほかに質問は?なさそうだな……では最後に。これは遊びではない。最悪死ぬかもしれないことを頭の片隅に刻んでおけ!以上だ」
最後の先生の警告じみた空気の引き締めは緩み切った空気を断ち切るほどに協力だった。
ダンジョン研修の説明が終わった俺たちは先生の案内のもと地下に向かって歩き出した。何重にも扉がある厳重な警戒があるものかと思っていたけどそんなことはなく。
「うわぁ………」
黒い壁の部屋の真ん中にある門。
さながらゲームに出てくるボス部屋みたいだ。
他の生徒もこの異様な雰囲気に驚き、そして興奮していた。これで心躍らない高校男子はいないだろ!まぁ……俺女になっちゃったけど。
「あらかじめ決めた番号の順にこの門をくぐりダンジョンに入ってもらう!もし、自分たちではどうしようのない魔物や状況に陥った場合はこのビーコンを使うように!」
先生は小さな棒を取り出して再度注意を促している。
「雪ちゃん、これどうやって使うんだっけ?」
「おい、綾。まさか話聞いてなかったのか?発煙筒と同じだ、折れば先生に伝わるから覚えとけ」
「司君に聞いたわけじゃないんだけどなぁ……」
(知らなかった……ナイス司!)
とまぁ雑談をしながら待っていると俺たちの番が来た。先に怜たちはダンジョンに入っていった。
「パーティー番号7 ダンジョン研修開始!」
先生の合図の後、俺たちは門の奥に入っていく。門を超えた先で見たものは一目でここがダンジョンの中なのだと理解できる光景が広がっていた。
「見渡す限り木ばっかりだね……ドライアドの森を思い出すよ」
「確かに。司、ここで手に入る資源だとやっぱり果物とか薬草とかか?」
「だろうな。澪、周りに魔物がいないか索敵お願いしてもいいか?」
「わかったわ」
澪は符を取り出して頭上に放り出す。次第にそれは鳥やネズミの形になって周囲に散らばっていった。
澪の担当は索敵。式神で周りの索敵をしてもらって俺たちが討伐する形になってる。俺が【鬼化】して探してもいいんだけど無駄に体力使うよりあらかじめ魔力を込めている式神の方がいいという判断だ。
「澪の式神が魔物以外の情報も持ってきてくれるから探索が楽でいいね~」
「綾?私だけ探すの疲れるしあなたも探してよ」
「ごめんごめん」
綾はもっぱら最終兵器だ。どうしたって周りに被害が大きすぎるし魔法を使えば魔物にばれるリスクもあるからな。
「ここが平原エリアなら綾の出番なんだけどな、迷宮エリアじゃないだけましか?」
「綾が役に立たなくなるからな」
「それはそうだけど今言わなくてもいいでしょー?ほら、反転草。」
「はいはい」
俺と司はというと荷物持ちだ。一応軽量化の効果のある魔道具のバックを持ってきているけどそれでも重い。接敵するの俺たちなのに何で俺たちが持ってんだ。
「正面から2体接近してきてる、狼型!」
遂にきたか!
「司!私にやらせて」
「初戦は譲るからしっかり仕留めろよー」
「ありがとう!」
俺は司に持っていたバックを投げ渡して腕に嵌めていた雪華に話しかける。
「緋翠、いきなりだけどやるよ!」
『うん!』
「樹刀形態!からの〜【灼血】!」
「アッおい!?それはヤバいだろ!!」
なんか司が言ってるけどもう茂みから狼が出てきてるしあとで聞くから!
「【血斬り・灼】!」
「何か言うことは?」
「……すみませんでした」
新しく手に入れた力【灼血】は血に火属性を付与する力であるわけで。どうなったかと言うと…………
「もーせっかくの素材燃やしちゃうしオマケに森も燃やしてどうするの?」
「全くよ。新しいことができるようになって試したいのはわかるけど、限度ってものがあるでしょ」
「申し訳ない」
結果として素材は炭化。森はボヤ程度だったが綾に火消しを頼んだせいで森を破壊。結局、俺の班だけ魔物素材の提出なしとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます