5章162話 後夜祭

 四日目も終わり一般客も居なくなった。ヘパイストス達はミスコンが終わったのちに雪たちの元に訪れ一言「可愛かった」と言って帰った。


「いろんなことがわかってスッキリしたな……今日で聖火祭も終わるし濃い数日間だった気がする。」


 翠との会話が終わり目が覚めるとまだいつも起きる時間より早かったので外を見ながら黄昏ていた。


「そういえば緋真姉とかに翠のこと話したほうがいいのかなぁ?絶対混乱するしそもそもとして合わせる方法がわからないからなぁ。」


 そういえば、緋翠が俺のことをお母さんと呼ぶけどどっちのことを呼んでたんだ?実は俺の方はお母さんとは思ってなかったり……?いやいや、そんな事ないよな!………………後でこっそり聞いとこ。


 そんなどうでもいいことを考えていると綾が起きて来た。


「おはよぉ雪ちゃん起きるの早いねぇ。今日は仕込まないから遅くてもいいんだよぉ?」

「目が冴えちゃって。そう言う綾だっていつも起きる時間より早いでしょ?」

「確かにね。」


 起きたと言ってもまだ眠そうな綾は目を擦って欠伸をする。


「もう少し寝てたら?後夜祭まで少し時間あるし。」

「二度寝したら遅刻しそうだからやめとく。緋翠ちゃんは?」

「雪華の中で寝てる。中どうなってるんだろうね。」

「もしかしたらすっごいリゾート施設になってたりして。」

「そうだったら面白いね。どうしようか、クラスに行ってみる?一人くらい人がいそうだけど。」

「うん、そうしよう!」


 制服に着替えた俺たちはクラスに向かった。

 すると……


「おう、雪。お前達も来たのか!」


 一人どころではなく、ほぼクラスメイト全員が来ていた。


「あれ、今日何かあったっけ?」

「いや、それがみんな早く起きすぎて片付けを開始してる状況だな。さっき江口がここを打ち上げ会場にしていいか聞きに行ったところだ。」

「なるほど、だからみんな片付けてるのか。手伝うことない?」

「いや、あまり無いな。テーブルとかは打ち上げで使うから置いとくし、残った売り物は俺たちで食べるから。」


 よく見るとみんなやることないのか雑談してる。確かになさそうだ。


「みんなー教室使っていいって!」


 江口君が先生からOKをもらって帰って来た。何やら封筒を持っているな。


「遅かったな、江口。何かあったのか?」

「写真部に寄って現像してもらって来たのさ!みんな、ちょっと集まってー?」


 江口君が封筒から取り出したのは聖火祭の俺たちの写真だった。


「欲しいのがあったら言ってくれ、何枚でも現像出来るから。」


 江口君はそう言うと封筒をバックの中に入れた。中には何も無いはずだが、それにしては膨らみがあったような気がする。


「おい、江口。水臭いじゃあ無いか、俺たちメイド喫茶をする為に頑張ったよなぁ?ん?」


 江口君と共に異様な頑張りを見せた男たちが取り囲む。ある意味一番聖火祭を楽しんだのは彼らだろう。


「な、なんのことかなぁ〜」

「声が震えてんぞ、やれ。」

『おう!』


 江口君は拘束され、バックに入れられた封筒を開く。すると中からは割とギリギリを攻めた写真が出て来た。


「おおおおおおおおおおおお!!」

「流石盗撮部だぜぇ!」

「伊達にいろんな場所にいるだけある!」

「しっかり絶妙な構図!」

「分かってるぅ!」


 流石に犯罪レベルのものでは無いとはいえ少し、いやかなり恥ずかしい構図の写真ばかりだ。おい、お化け屋敷の俺の写真とかいつ撮ったんだよ。


「くそぅ、独り占めできるチャンスだったのに……」

「諦めろ、俺たちがいる限り独り占めなんかさせねぇ!」

「江口君、それに馬鹿ども?」


 油を刺したようにギギギと後ろを振り向く彼らは燃え盛る髪の毛を目にする。


「怜様の写真をお前らなんかに渡すかぁあああ!」

『あああ!?』


 江口君達の持つ写真は全て燃やし尽くされた。怜様って。ファンクラブにいつの間に入団したんだか。


 まぁ正直よくやってくれたと思うよ、流出なんてして見ろ恥ずかしさで死にたくなるからな!


「だ、大丈夫!写真部にまだデータはあるッ」

「その部なら既に同志が制圧したらしいわよ。」

「そんなぁ……」


 諦めろ、江口君。待て、そのデータ削除したとは言ってないな!?ファンクラブ貴様ァ!



 時間も経ち、後夜祭の開始時刻になった。始まりと同様、全生徒が集められ理事長の話を聞くことに。


『諸君、聖火祭は楽しんだか?楽しんだようで何より。例年の選抜大会は無くなってしまったが楽しめたのならそれでよし!では聖火祭の表彰を行う!放送部頼んだ。』


 理事長が発表するんじゃ無いんかい!


『はい、理事長に変わりましてここからは放送部がお送りしまーす。ではでは、まずは一番来場数の多かったクラスから!』


 それから色んな賞を発表していった。うちのクラスは販売部門で一位を獲得した。確かにすごい人だったからなぁ。 


『さて、最後は総合優勝!全ての出し物の頂点。それは〜!?1年B組!おめでとう!選出理由は「リアルすぎ」や「外のお化け屋敷よりお化け屋敷していた」などが寄せられたぞ!』


 異議あり!あんな怖いものに負けたのか!?俺たちのメイドよりあっちの方が良かったのか……。ちょっとショックだ。


『これにて後夜祭の開催式を終わります!この後、聖火から持って来た炎でキャンプファイヤーをするのでその周りで踊ったりしても良いよ!」


 そう言い残して式は終わった。俺たちはクラスに戻って打ち上げを開始した。肉やお菓子など割と食べられるものが多く、食べながら四日間のことを各々話し合ってる。


「楽しかったー!綾は?」

「私も!全部は回れなかったけどまた来年あるしね。私たち来年はどんな出し物やるのかなあ。」

「おばけやしきだけはやめてくれぇ!」

「フフッだといいね。そういえば緋真姉は?」

「朝から見てないかな、多分何か魔防隊で呼び出されたとかでしょ。気にしなくていいよ。」

「だね、ひょっこり出てくるよね。」


 その後も俺たちは売り物のお菓子をつまみながら会話を弾ませていく。


◆◆


「そんな!?警報なんて鳴ってないのに!」


 緋真はと言うと魔道具研の部室に居た。

 化紺先輩から黒真珠のアクセサリーを受け取り、魔道具研の装置で厳重に警備していた筈なのだが。


「魔道具は壊されてない。警報もなってない、のに!なんで、黒真珠が消えてるの。」


 緋真はアクセサリーを魔防隊に持っていくため回収に来たのだが、入り口で気絶している隊員を見つけ嫌な予感がしたので急ぎ確認しに行くと荒らされた様子もなく中のものだけが抜き取られていた。


「警報は私以外の全てに反応するように設定してもらった。一体どうやって……?」


 まだ、悪夢は覚めてはいない。


あとがき


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