5章157話 謎の存在
「疲れたなぁ、緋翠も綾ももう寝たか。綾はともかく緋翠はここ数日はしゃいでたからなぁ。」
俺も緋翠の正体とかで疲れた、かも。すごい眠い……明日は、はや、くおきないとな……
俺は1日の疲れを感じながら意識を沈めていく。
◆
「何処だここ……?」
俺は真っ白な空間に一人立っていた。自分がどうやってその空間に来たかすら覚えていなかった。
確か……疲れて寮で寝たはずだ……ならここは夢か?それにしては自由も効くし、何より夢だと自覚できてる。白昼夢ってやつか。
「夢ならいつか覚めるだろ。少し歩こうかな。」
俺が少し歩くと遠くに光が見えた。それは俺にとって見覚えがある光だった。
「なん、でこれがここに?」
それはかつて怜を助ける為に来た魂の世界で見た魂そのもの、光り輝く結晶のようなものだった。怜の時とは違うのは単色ではない事。赤い結晶に黒い結晶が混ざっている。
「ここは、夢じゃないのか?怜のでもなければ化紺先輩の所とも違う。まさか、俺の……!?」
俺はそこまで喋りかけて止まる。何故なら……
「俺……だって!?今まで言えなかったのに?どう言う事なんだ……本当に。」
自身のことを私としか言えなかった雪はそのことに動揺する。思考の中では確かに俺と言っていたとはいえ、自分が言葉として発するのは久しぶりすぎて驚く。
「ここが魂の世界だって言うなら……雪鬼!居ないのか!?」
あいつなら何か知っているかも、何もないのに急に魂の世界なんて言ってたまるか。絶対あいつ何か知ってる。
俺は雪鬼を呼ぶが全く反応はなかった。そういえば、しばらくは出てこないとか言ってたかあいつ。
「しょうがない、夜が明けるまで大人しくしとくか。」
俺は座り込んで今日あったことを思い出していた。
「楽しかったなぁ、久しぶりにヘパイストスさんやアーデにも会えて。流石に緋翠の正体には驚いたけど。まさか、本当に俺がお母さんなんてな。」
俺が緋翠の名を呼んだ瞬間、結晶が輝く。それは徐々に結晶から離れ、光の塊となり雪の正面に降りてくる。
「なんだ?何が起こってるんだ」
俺は身構えるが光は次第に収まっていき、一人の人間が立っていた。
「雪鬼……?いや、違う。いつもの俺だ。」
「違うよ、私は私。貴方は男の子でしょ?」
俺、いや女になった俺が指摘したことで改めて自分を見ると以前の男の姿になっていた。
元に戻ってる……なら正面のコイツはなんだ。
「私は緋翠。雪が生まれる前から一緒にいたお姉ちゃんかな。」
「は?」
まて、今コイツなんて言った。緋翠だって?いや、そんな事はどうでも……いいわけじゃないけど!それよりも。
「お姉ちゃんって何だ!?俺の姉は緋真姉だけだ!お前は何者なんだ。」
「そのままなんだけどなぁ、雪。事件に巻き込まれた後、能力を発動した時、なんで女になってるんだって思ったでしょ。」
それはそうだ、だけど身体が能力に合わせて変化したって……
「能力に合わせて何で私の姿になったと思うの?雪は男の子なのに。」
「考えてる事が何でわかるんだよ……」
少し気味が悪い。自分の姿で自分とは違う奴が喋ってる。本当に何者なんだ。
「お父さんに聞かなかった?事件に巻き込まれた時、雪たちを血のドームが守ってた事。何でだと思う?」
「母さんが俺を守る為に……」
「違う事は自分が一番わかってるくせに。私が守ったんだよ?」
そうだ。母さんは意識はなかったし、俺はそもそも能力を使おうなんて思ってもいない。きっと無意識に使ったんだと思ってた。俺の中にコイツが居たならあり得ないとはいえない。千奈ちゃんとマナスの関係のようなものなのか。
「もう、ずっとコイツとか言わないでよ〜緋翠って言う名前があるのに。あ、でもドライキャリアの子も同じ名前かぁ。翠姉でいいよ?」
「だから!何で姉だって名乗ろうとする!!お前なんて知らないぞ、俺は。」
くそ、本当にどうなってる。俺の姉だと名乗る奴が出てきて明らかにおかしいのに警戒心よりいつも居たような……まるで家族のような感覚がして気持ち悪い。
「まぁ、知らないよね。会った事ないし。そろそろ時間かな。私のことは緋真姉に聞くといいよ。じゃあね、雪。」
◆
「緋真姉に聞け……?起きても覚えてるし、本当に何だったんだ。」
俺は起きた後自分の体を確認するとちゃんと女の身体だった。ただ、あの夢のような体験だけはしっかりと覚えていた。
「私には、知らないことがまだあるって事なのか?確かめないと……。」
今更、女になった事に疑問も違和感も感じなくなってきた。でも、自分が何者なのか知りたくはなる。化紺先輩が言っていた、無能力者の事。二つの種族が混ざることでどちらも特性が使えない子供。
「なんで私が三つも能力があるのか、分かるかもしれない。それに、雪鬼にも聞かないと。」
あとがき
ここまで読んでくれてありがとうございます!
面白いと思ってくれたら星とフォローをお願いします!作者のモチベーションが上がりますので!何とぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます