5章158話 衝撃

 俺は緋真姉に話を聞くために置き手紙を残して先に学校に向かった。


「あいつの言うことに従うわけじゃないけど緋真姉が何か知ってるなら確かめないと。」


 早る気持ちから足取りも駆け足になっていた。そうして学校に着いた俺は緋真姉を探し始めた。


「クラスにはいなかった。となるとあそこか?」


 俺は魔道具研の部室に向かった。おそらくあの開発していた魔道具を見ているのではと考えたからだ。


「失礼します……あ、いた。」

「雪、どうしたの?こんな早い時間に。」


 案の定緋真姉は居た。数人の生徒と魔道具について話していたので話が終わるまで待つことにした。


「緋真姉に聞きたいことがあるんだ。」

「良いわよ?なんでも答えたあげる、どんなことが聞きたいの?能力のこと?それとも魔防隊のこと?」


 きっとこんな事を聞いてもわからないと思うけどそれでも聞かなければならない。


「私って緋真姉と朱音以外に兄弟なんていない、よね?」


 俺がそう緋真姉に質問した瞬間、いつも穏やかな緋真姉の顔は硬直した。まさか、心当たりでもあるのか!?


「どうして、そんなことを聞くの?」

「少し気になって。」


 夢で出た奴が自分は双子だと言っていたなんて信じないだろうから嘘をつく。悪いとは思いつつそれでもハッキリと居ないと言って欲しかった。


「何故そんなことを聞くのか知らないけどいないわ、もう。」

「そっか。そういえば一つだけいい?緋翠の名前をつけたのは誰って聞いたのはなんでなの?」


 これは本当に偶然、ふと思ったことで夢のアイツとは自分は無関係なんだと確信したから出た言葉だった。

 だけど、その質問は俺の思いもやらぬ真実を開ける鍵だった。


「もう雪に話した方が良いのかもしれないわね。私がなんで緋翠ちゃんを警戒してたのか。少し場所を変えましょう。」


 緋真姉は真剣な顔で俺を屋上まで連れて行った。


「ここなら邪魔も声を出しても迷惑かからないわ。多分、私がこれから話すのは雪には信じ難いことだと思うけど落ち着いて聞いてほしい。」


 俺は今、何を聞かされるんだ。夢でのあいつとは無関係なはずだ。きっと何か別のことだ。


「雪が生まれる時、お母さんのお腹の中にはもう一人子供がいたの。」

「!!」


 緋真姉の口から俺は双子だと言うことを告げられた。だが、俺はそんな事は聞いていないし、会ったこともない。でも頭の中で夢であったあいつのことが思い浮かんで仕方ない。


「雪の名付け親はお父さん。そしてもう一人の女の子の名付け親は……私。」

「なんて……名前だったの?」

「なんの偶然なのかしらね、私は生まれてくる妹を守る意味も込めて自分の名前から1文字取ってと名付けたの。緋翠ちゃんを警戒してたのは魔力が変とかよりも緋翠って名前はあの子だけのものだと思ってたから。」


 衝撃的だった。夢であったアイツも自分のことを緋翠だと名乗っていた。つまり、夢であったアイツは俺の双子の兄妹って事なのか!?


「それで……その緋翠はどうなったんだ?今まで私が知らなかったのはなんで?」

「お母さんが雪を出産する時、私は隣にいた。先に出てきたのは雪、あなた。そのあと緋翠が出てきたの。でも、息をしていなかった。」


 俺は今まで双子の存在を知らなかった理由を知った。つまり、産まれる前に既に死んでしまったってことなんだ。


「お母さんは緋翠が死んでしまったことで落ち込んでたけど雪を育てることで持ち直したわ。雪に話さなかったのは自分自身まだ、受け止めきれてないのかもしれない。」

「その、私の双子の妹はどんな姿だった?」

「私は緋翠ちゃんの名前に驚いたけど貴方の姿にも驚いたのよ?あの子は銀髪だったから。」


 そこまで聞いて俺はまたアイツ、俺のもう一人の妹に会わなければならないと思った。と言うか、勝手に姉を名乗ってたけど妹じゃねぇか!


「ありがとう、緋真姉。知りたいことが知れたよ。」

「ごめんなさい、本当はもっと早く教えるべきだったわ。」

「いいって。それじゃ、またね!」


 俺はきっと待たせているであろうクラスのみんなのもとに走る。きっとまた寝たらあの場所に行けるだろうから焦る必要はない。もし、俺の見ている景色を見てるんならアイツにも見せてやらないとな。


あとがき


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