5章155話 魔物料理

 裁縫部を後にした俺と緋翠はそのまま各部の出し物を見に行くことにした。


「どこから行こうか……というよりそこまで全部の部活を知らないんだよなぁ。司に聞いても『さぁ?部室を持ってない同好会レベルの部活はいくらでも出てくるから全体数なんて知らん。』って言ってたしなぁ。」


 部室塔の廊下を歩きながら面白そうな出し物がないか探す。一応魔道具研と錬金術研は見に行く予定なんだけど。選抜戦のこともあってか一年は部活の出し物にはほぼかかわっていないから本当に何をしているのか分からない。


「緋翠はどんなところを見に行ってみたい?」

「うーん、お腹すいた……」


 あれ、緋翠はヘパイストスさんと一緒に食べなかったのか。となると……料理研究部かな。


「緋翠、それじゃあご飯食べに行こうか。」


 確か部室塔にある調理室にいるはずだよな。ちょうどよくやっているといいんだけど。自分の出し物に言っているかもしれない。


 雪と緋翠が廊下を歩いているといい匂いが奥の方から香ってきた。よかった、やってるみたいだな。調理室の壁はレストラン風に装飾されていた。

 中に入るとどうやったのか知らないけどキッチン付きのテーブルが綺麗に片付いていた。アレって取れるもんなんだ。


「いらっしゃいませ、料理研究部にようこそ!今年の出し物は魔物料理がテーマなんです。どうですか?何か食べてみますか。」

「魔物料理!もしかしてダンジョンからとってきたんですか?」


 魔物食材は割と世間では珍味に近い。基本的に魔防隊が倒した魔物の食べられる食材を卸すのだが、殲滅隊が大量に討伐しない限り手に入る量が少ない。そのせいで高いから手を出す人もいない。


「あ、もしかして高かったんじゃ?と思っていません?」

「はい……違うんですか?」

「ここ、魔防学校には管理しているダンジョンで私たちがとってきた食材ですよ。もう少ししたら皆さんもダンジョンに潜ると思いますよ。」


 そういえばそうか、ここにはダンジョンがあるんだっけ。自分が使いたい食材は自分で取りに行くのか。


「おすすめはレッドボアの酢豚、クリスタルディアのロース、チャージブルの肉フルコース。付け合わせはマナベジタブルです!」


 すげぇ、見事に茶色一色。こう、スイーツとかないかな?あんまり脂っこいの好きじゃないんだけども。お、レバーがあるな。これなら食べられる。


「肉ばっかりなのってやっぱりダンジョンで取れるのが肉が多いからですか?」

「あ、いえ。始まってから凄い勢いで売れちゃって今部長がとりに行ってます……」


 そうなのね……魔物食材で作ったスイーツ食べてみたいところだな。あと少しで戻ってこないかな。


「取り敢えず緋翠、好きな奴頼んでいいよ。私はレバニラで!」

「じゃあわたしも!」

「承りましたー!」


 料理研の部員さんが奥に行くとすぐにお肉を持ってきた。あれ、今から焼くの?というか切られたものじゃなくて、ブロックで持ってきた!?


「よっと」

 

 え、なげたぁ!?


「【肉おろし】よっとっと。じゃあ今から焼きますね。」


 待て待て待て。今、何した。いや、切ったのは分かる。ただ、どう切ったのか分からなかった。この人強すぎる。


「レバーですよね。あまり頼む人いなかったので珍しいですねぇ。塩コショウににらを加えてっと。」


 部員さんが俺たちの目の前でフライパンを振り回して作っていく。すごくおいしそうな匂いがする。というかなんだろう、フライパンに魔力がまとっている気がする。


「なんで魔力をフライパンにまとわせているんですか?異常にそのフライパンが重いとか?」

「そういうわけではないですよ?はい、おまちどうさま。チャージブルのレバニラです。」


 美味しそうだな、そこまで手間暇かけて準備したわけでもないのになんでここまでの匂いがすごい。


「魔物食材は普通に焼いてもおいしいんですけど……魔力を込めながら焼くと魔力のお陰なのか味に深みが出るんです。構成されているのが、魔力と肉の混合素材だからなんですかね?」


 へぇ、すごいなぁ。それにしても魔物ってそういう身体してるんだ。もしかして緋翠もそんな感じなのかな?マナスももしかしたら……


「美味しい!お母さん、これ凄く美味しいよ!?なんか体に力が湧いてくるみたい。」

「ほんとだ、体に魔力がみなぎってくる。なんでだ?」

「魔物食材は魔力調理をした料理は食べると体を活性化するんですよー」


 それはまぁ、そうなんだろうけど。そうじゃなくて、魔物の血が多く含まれているからとかかな?すごく満たされる気がする。最近、綾からも血をもらってなかったからなぁ。緋翠もおいしそうに食べてる、俺の特性を受け継いでるとするとドライアドの魔力を吸収する能力に血も吸うこともできたりするのかな?


「ごめーん!遅れたかな!?」


 レバニラを食べ終わったあたりで誰かが調理室に入ってきた。


「遅かったけど、間に合いましたよー。ほらお客さん。」

「およ、いらっしゃい。僕がここの料理研の部長、【鍋島 美玖】だよ。どうだい?うちの副部長の料理の味は。」


 この人、副部長だったの!?確かに強そうだった。


「美味しかったです!」

「それはなにより、まだデザートは食べてないかな?僕が作ってあげようか?」

「だめです。あなたは食べる専門、作る料理は99%でゲロマズになるんですから。そのくせ、見た目だけは美味しそうなんですからたちが悪い。その詐欺料理の作り方教えてくださいよ。」

「ほんと!?あとで教えるよ。じゃあ副部長、私とこの子にデザート頂戴!」


 すげぇ、この人無敵だ!?皮肉とか効いてないな。


「鍋島さん、副部長さんの名前ってなんていうんですか?まだ聞いてなかったんですよね。」

「さぁ?僕も知らないなぁ」

「名前なんてどうでもいいじゃないですか、そんなことより作った料理がおいしいかどうかですよ。はい、ダンジョンパフェです。」


あとがき


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