5章154話 化紺明那のトラウマ

 まさか緋翠が人間じゃないとは思わなかったけど俺の娘であることだけは変わらなかった。これからもこの関係を続けていきたい。ん?そういえば雪華から反応がなかったのって緋翠が外に居るからってことだよな。

 もしかして、雪華使えなくなった?


「緋翠、この雪華を動かしたり出来ない?」


 元雪華なんだから何か出来ないかと緋翠に聞いてみる。すると、緋翠がブレスレットになっている雪華に触れた。

 その瞬間、緋翠が消えた。


「緋翠!?どこに行ったの!緋翠!」

「こっちだよ、お母さん。」


 緋翠が消えたことで探していると雪華から声が聞こえた。


「私と雪華は同じものだから中に入れるの!えっと刀になれば良いんだよね?えいっ」


 するといつも使っていた樹刀形態に変化した。


「おぉ、いつも使ってる刀だ。」


 でも、雪華の中に緋翠がいるって考えるとちょっと斬るの躊躇いそうだなぁ。そんなことを考えていると雪華から緋翠が出てきた。


「アーデお母さんに分身作るやり方教えてもらったから私が居なくても雪華を使えるよ!」


 良かったー。ナイス、アーデ!これで心置きなく使えるよ。


「むー、私も一緒に戦う!」

「いや、緋翠に痛いことなんてさせられないよ。」

「私は雪華の魂そのもの、一緒に戦うんだからね!」


 緋翠と俺の意見は平行線のままお預けとなった。緋翠は自分がいない時のための分身であって通常は自分が雪華に入ると言う。ただ俺は緋翠で人を魔物を切れる自信がないと言うだけ。

 正直なことを言うと緋翠を守るとかそう言うことではない。


 話がうまくつかないまま俺と緋翠は教室に戻る。化紺先輩に会いに行って明日のコンテストの準備をしなければならない。


「あ、雪ちゃん戻ってきた!そろそろ化紺先輩のところに行こうかなって話してたんだ。」

「ごめん、遅くなっちゃって。行こうか。」


 少し緋翠と雪華のことは心に残しつつ、それが今考えることではないと奥の方に追いやる。



「化紺先輩!明日の準備で来ました。居ますか?」

「おお、来たか!待っとったよ。さぁさぁこっちや、それぞれをモチーフとした服の最終確認や。」


 裁縫部にやってきた俺たちは明日行われる裁縫部主催のファションショーにモデルで出るために着る服の最終確認に来ていた。


「どうやろか、動きにくいとかあるか?」

「いや、無いですよ。すごく動きやすいです。」


 着るのは二度目だが着慣れないドレスだと言うのに動くのに違和感を感じない。


「そかそか、そりゃあ良かった。この前着てるのを見て、雪は長いスカートとか履き慣れてないんだろうなって思うたから動きやすく改良しといたわ。」

「ありがとうございます。」


 他のみんなもドレスを着て確認したあと各々の行きたい場所に行くことにした。


「それじゃあ私たちも行きますね。」

「ちょっと良いか?」


 綾たちが外に出ていき俺と緋翠のみ裁縫部に残っている状態で俺たちも出て行こうとする。すると化紺先輩に呼び止められた。


「何ですか?」

「少しだけ、思い出したことがあるんや。あの呪術師、奴に襲われた時な昔のことを延々と見せられた。一生この身体について回る呪詛、それを振り払うためにうちはこっちに出てきたし、いろんな人に出会って話をするようにしとる。」

「呪詛?」


 多分、奴が化紺先輩に見せたトラウマの事なんだろうと俺は話を聞くことにする。あの時化紺先輩を見た俺だけが残るのを待ってたのか。


「トラウマとか心の傷とも言うけどな。まぁ、それは良いんや。気にするだけ無駄やから。ただ、これだけは言いたくてなぁはどんな思いがあったにせよついて行きたかったって思うものなんやで?」


 それは緋翠を見るように、そして、遠い昔を思い出すように化紺先輩が俺に話した事。色々ありすぎて昔のように感じる俺の原点。大切にされながらも何処か線引きされ置いてかれる自分を何とか隣に行こうともがく事。

 俺はそれを緋翠にしているのか。そう考えるきっかけになった。


「化紺先輩も誰かに置いていかれたんですか……?」

「うーん、ウチはなぁ昔、エルフの森にあったことがあってな。その時、お留守番を任されてしもうた。だから、今でも心の何処かであの場所に行かなくちゃと思うてる。それでも、私は外に探しに行った。外は危なくて、怖くても守られているとわかっていても好きな人に会いたくて外に出る気持ち分かってやってな?」


 あの時、小さくなった化紺先輩と緋翠は同じくらいの歳だった。きっと化紺先輩は過去の自分と緋翠を重ねてるんだと思う。

 それは、俺だって分かる。置いていかれたくなくて能力を得てからもそう考えてたはずなのにいつの間にか見失ってたかもしれない。


「ありがとうございます、化紺先輩。今悩んでる事が解決出来そうな気がします。」


 まだ、緋翠と戦うことは怖い。俺の周りで誰かが傷つくのは見たく無い。でも、緋翠を置いていくことがよく無いことも理解できた。


「緋翠、これからも一緒にいたい?どこに行こうとも。」

「うん!」


 緋翠の眩しい笑顔を見て悩み続けることに決めた。守りたい人と共に戦えるのかを切れるのかを


あとがき


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