5章152話 珍客
「今日で三日目。既に折り返しに入ったわけだけど、5日目はほぼ後夜祭とかで潰れるから実際あと二日。全力で頑張って、全力で楽しもう!」
『おー!』
今日から一般の人も見にくることになる。昨日のうちに朱音が来ることは確定なので今から気が滅入るんだよな。妹にメイド姿を見られるってどんな苦行なんだか。
「今日は雪と俺が厨房だな。綾たちは午前が接客で午後は自由時間か。」
「うん!明日のコンテストの試着をしにいくから私たちは居られないんだよね。」
あれ、そう言えばシフト的に午後って誰が居るんだ?他の女子だって連続出勤してるよな。裏方の人たちはここまでやり切ってくれた分自由時間だし。
「はぁ、午後は俺が接客するんだよ……雪。」
「うちってメイド喫茶じゃなかったか?」
「外見てみろよ……」
司が胃の痛そうな様子で外の看板を指差した。そこには『午前:メイド喫茶 午後:執事喫茶』とかいてあった。いつの間に。
「「「私たちがやりました!」」」
裁縫部の人たちの中でも頑なに執事服を作ろうとした人たち!?却下されたはずでは。
「女子の負担が大きいだろうと江口がな。そういうわけで今日から男も加わることになった。なっちまったんだよ。」
司が落ち込むのは珍しいな。そういえば緋真姉と周る約束だっけ?時間が減っちゃったとかかな。
「司、よく考えてみろ。執事服で緋真姉の隣を歩くお前。令嬢に付き従う従者みたいだろ?」
「緋真姉に付き従う俺……!良いなそれ!よっしゃ、それならかっこいいって言ってもらえるかも!サンキュー雪。」
割とこいつは脳筋だし緋真姉のことになると割とポンコツだ。ちょっとそそのかせばすぐに乗る。
あーすっごい澪が見てくる。ごめんって!
「それじゃ、俺と雪は厨房行ってくるからそっちも頑張れよー!」
「緋翠も手伝うー!」
3人で調理室に向かいあらかじめ準備を始める。昨日の段階で残ってしまった食材を使って朝ごはんにしたのだが、緋翠が作ってくれた。若干危なっかしかったけど美味しかった。
「緋翠ちゃんな、すごく素直にいろんなこと手伝ってくれて助かった。今日もよろしくな?」
「うん!」
あー微笑ましいなぁ。出来ればその笑顔、俺に向けてくれないかな。司じゃなく。
その後も忙しくなりながら緋翠と楽しく料理をして午前は終わった。
「そんじゃ、俺は他所で服着替えてくるから。」
司が更衣室に移動した後、俺は朱音を案内するために待ち合わせをしていた。メイド服で。
歩くのが宣伝になるとはいえ恥ずかしいんだけど!?緋翠は嬉しそうにメイド服に着替えてたけどな。
「雪姉、来たよー!」
校門から久しぶりに見る妹の姿を見た方俺は駆け寄った。
「朱音、久しぶり。どう、元気にしてた?」
「うん、元気にしてたよ。雪姉こそ元気そうだね、色々と。」
朱音は俺の格好を見て言った。だって仕方ないだろぉ!?
「お母さん、この人誰?」
「おかっ!?雪姉どういうこと!いつの間にママになってたの!?」
やべ。緋真姉以外に伝えるの忘れてた。みんな普通に受け入れてくれたから気が付かなかった。取り敢えずここで騒ぐのはまずいな!
「まず、うちのクラス行こうか、ね?」
「説明してよね〜?」
◆
「つまり、義娘ってこと?早く言ってよね。そういうことは。それで、緋翠ちゃんだっけ?お母さんの妹の朱音です。よろしくね。」
「うん、朱音お姉ちゃん!」
「ふぐっ!?」
あ、俺と同じ反応してる。真正面で緋翠のスマイル直撃したらそうなるよな、
「雪姉、緋翠ちゃん私の妹にしていい?」
「ダメに決まってんだろ。」
緋翠は俺の娘だからな、誰にもやらん。あ?彼氏?そんなもん血を吸い尽くしてやるよ。
「面白いことしてんなぁ、雪。」
後ろから声をかけられ振り向くとヘパイストスさんが立っていた。何故か脇に植木鉢を抱えてるけど。
「ヘパイストスさんも来てたんですね!」
「おう、雪の聖火祭なら見に行くって。まぁ、用事もあったわけなんだが。」
ヘパイストスさんが脇に抱えた植木鉢を置くと急に植えてあった木が変形して人の形になった。文字通り人形サイズだけど。
「あ、もしかしてアーデ?良かったー連絡がつかなかったから後で森に行こうかなって思ってたんだよ。」
話しかけても反応がなかったからなんでかなーって思ってたんだよ。
すると、アーデは少し心配そうに質問してくる。
「その、雪華大丈夫?急に私とのパスが切れたからびっくりしちゃって。ティルに頼んで連れてきてもらったんだ。」
パスが切れた?それってどういう……
俺は雪華を刀形態にしようとしたら変形しなかった。
「あれ?何の反応もない。どうなってるのアーデ。加護の方もちょっと効果が強すぎたりしたけど何か知ってるの?」
「えーーーっとその、雪に渡した加護が実は初めてで。今まで貯めた魔力全部渡しちゃったというか。」
確か十年分の魔力とか言ってたはずだけど……アーデって歳いくつだ?
「その、1000年分……渡しちゃった。」
それ、割とやばいのでは?
あとがき
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