5章151話 二年生の出し物

「二度とお化け屋敷には行かない!緋翠の前で恥ずかしい格好しちゃった……。」


 立ったまま気絶するという器用なことをした雪であったがしばらくして再稼働したのだった。


「お母さん、大丈夫だよ。誰にだって苦手なものくらいあると思うの。」

「ほら、緋翠ちゃんもそう言ってるし。」

「うん……。」


 そうだよな、お母さん、こんなところでしょげてちゃそれこそカッコ悪いよな。


「だから、もう一回行こ!」

「絶対嫌!」


 まさか緋翠がSに目覚めかけているのか?早い段階で止めなければ!そうしないとお化け屋敷に連れ込まれる!!


「ほら、まだ行ってない出し物あるしそっちに行こう?ね?」

「わかったー!楽しみだなぁ。」


 よし!純粋な子でよかった。出来ればなんの汚れもなく育っておくれ。具体的には俺をお化け屋敷に入れようとしない子に。


「お母さん、これ面白そう!」

「ん?なになに、プラネットシューター?どんな出し物なんだろう。」

「あ、これ昨日司くんが行ったって言ってたよ。結構面白かったって。」


 司がいうなら相当面白いんだろうな。楽しみだな。


「いらっしゃいませー!プラネットシューターにようこそ。ここでは宇宙から侵略してくるエイリアンを銃で倒してもらいます。トリガーを引いて倒すと得点になります。大きさは大中小あり、大5点、中3点、小1点となります。100点を超えた方には二年生の食事の出し物での割引券が贈呈されるので頑張ってくださいね!」


 なるほど、シューティングゲームか。司こういうの得意だもんなー。


「三名でよろしいですか?」

「はい!」

「それではこちらにどうぞ。」


 俺たちはクラスの中に案内され何故かあるジェットコースター型の乗り物に乗ることになった。


 え、すっごい嫌な予感がする。嘘だよね?周りに幻影映してシューティングゲームするんだよね?


「それでは、行ってらっしゃーい!」


 座った雪は首元に安全バーが下がってくるのを確認してまたしても自分の苦手な出し物であったことを知った。


 くっそ、油断してた。教室でジェットコースターなんてできないものだと。考えてみれば空間拡張でいくらでも広くできんじゃねぇか!?


『諸君らにはエイリアンを討伐する任務に赴いてもらう。あそこに見える怪物、あれがエイリアンだ。あれは小型だが数が多く面倒だ。さぁ狙って撃て!』


 どこからともなく聞こえる音声に耳を傾けながら雪は内心別のことを考えていた。


 おい、エイリアン。絶対に攻撃とかして来んなよ!?その触手みたいなので揺らしたらとかしたら殺すからな!


 黒い体にタコのような触手を持ったメカニカルなエイリアンに雪はがんを飛ばしていた。終始目には涙目であったが。


 「えいっ!やった倒したよー!お母さん見てた?」

「うん、凄かったよ!その調子で頑張ってね?本当に。」

「雪ちゃん……。」


 綾がジト目で見てきている気がしたがそんなことは気にしない。今のところ緋翠が倒してくれていることもあってか大した揺れもない。


「今、私が79点で、緋翠ちゃんが84点か。そろそろ終盤かな?」


 ほんと?よし、なら助かったなー。


 油断した次の瞬間、コースターが激しく揺れる。


「なになになにィ!?揺れてるッ!」


 コースターの両脇から触手が伸びてくる。明らかに小型、中型とは違う大きさに俺たちはすぐに揺れの原因を悟った。


「「「大型!!」」」


 これ以上揺らされてたまるか!?取り敢えず触手を撃てば揺れなくなるか?


 雪たちはコースターを掴んでる触手を打ちまくる。するとどんどん離れていき揺れが収まった。


「これで終わり……?それにしてはあっさりだったような……。」


 大型の割に消えるのが簡単というか。いやいや、早く終わって欲しいんだよ。きっと大型くんは触手が痛くて帰ったんだな、うん。


 雪の願いとは裏腹に再びコースターが揺れる。先ほどとは段違いの揺れに雪はパニックになってしまう。


「なんなんだよぉ〜!早く終わってぇ。」


 正面に巨大なタコが現れて触手で攻撃してくる。それを避けるためかコースターが左右に激しく揺れていた。


「やらなければやられる吐かされる……殺すしかない。さっさとやられろー!」


 3人の集中砲火によって大型エイリアンは爆散していった。


『ありがとう!諸君らは我らの英雄だ!無事に帰還してくれ。』


 うるさいよ、確実に大型が襲ってきたのジェットコースターにしたい奴らのせいだろうが。


 安全運転で出口にいる生徒の元に到着した俺たちはゆっくり上がる安全バーを待ちながら話していた。


「面白かったねー!緋翠ちゃん何点?」

「115点!綾お姉ちゃんは?」

「私は105点かな。雪ちゃんは……」

「48点。私には向いてないことがわかったよ。はは……大型許すまじ。」


 吐くことは無かったが精神的に疲れた。甘いものでも食べて疲れを癒したいなぁ。


「お疲れ様でしたー。二人100点を超えているのでお食事券二つ贈呈します。二年生の食事のみ使えるので注意してくださいね?またのお越しをー!」

「また来たいねー!」

「うん、すごく楽しかったよ。」

「私もまた今度乗る。大型ぶっ壊す。」


 緋翠の前で恥をかかされた恨み覚えとけよ!?揺れるとわかってるならやりようはあるんだからな!


 その後、食事券でパフェを食べて完全回復した雪であった。


あとがき


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