3章56話 羞恥と葛藤

シルバーウィークに入った怜は悩んでいた。

雪が呪いの死神を倒した辺りの時間まで遡る。


私が倒れて後の事は雪さんのお母さんから聞いた。なんでも隣の病院に勤めているお母さん、血桜 紅さんの元に連れて行かれたらしい。それも雪さんの手で。あの華奢な体のどこにそんな力があるのか気になったが聞かないことにした。


私はかなり危なかったらしく雪さんが私の魂を侵していた呪いの塊を魂の世界に入って倒してくらたらしい。最悪雪さんも呪いに侵されるリスクがあったというのに助けに来てくれた事には感謝しかない。

しかも私の中にいた呪いの塊は千奈の方と同じ物だったらしく千奈の呪いも解けたという。


私は翌朝千奈のある病院に向かった。


「千奈!」


そこには目を覚まして看護師と話す千奈が居た。


「怜、ねぇ?おっきくなってる!いや、私もか。私ずっと寝てたんでしょ?ビックリしたよ!色々変わってるんだもん!」


「よかった、良かった・・・!千奈、せんなぁ・・・目が覚めて良かった!グスッ、グスッ」


私は確かめるように千奈の体を抱きしめながら泣いた。


「もう、怜ねぇってば泣かないでよ・・・でもありがとう。色々あったんでしょ?なんとなく分かるよ。教えて欲しいな?」


「うん、ゔん!」


数年に及ぶ姉の戦いは終わりお互いの時間を取り戻すように今までのことを話し始めるのだった。



しばらくしてお父さんも連絡を受けて駆けつけた。それにお母さんも。


「千奈!おお!起きてる!良かった!よがっだなぁ!呪いは!呪いはどうなったんだ!?」


「こら、お父さん。病院なんだから静かにしなさい!ごめんね、怜、千奈私たちもさっき連絡をもらってどうなったのか知らないの。知ってることを教えてくれる?」


「うん、でも分かるのは聞いたことだけだからそれでも良い?」


「ええ」


その後紅に聞かされたことを両親と千奈に話した。すると意外な反応をした人がいた。


「なんだって?血桜雪!?それ秋の娘じゃないか!そうかあの子が・・・そうだな、千奈が退院できたらあの子と会ってお礼を言わないとな。」


「お父さん知り合いだったの?」


「ん?いやその父親とだな。そいつと俺は魔防隊の同僚だからな。ほら、何回か会ってると思うぞ?細身で飄々としてる感じの。」


「あの人の娘さんだったんだ・・・世界って狭いね。」


その後は千奈の体に異常がないかを調べ一週間検査入院をしたら退院できる事になった。


その後もかなり大変だった。

千奈が起きた時小学生の時からずっと寝て居たのに年相応の口調と雰囲気だったので聞いてみたら魂の世界でずっと起きて居たらしい。

しかも能力まで自力で獲得して居た。

そのこともあってか例外的に魔防学校に編入する事になった。


そして現在


「良い加減向き合わないと!でもどうしよう・・・あの二人に会うとどうしてもあの夜のこと思い出しちゃう・・・!」


千奈のことがあって色々忙しくなり未だ千奈と雪たちを合わせられて居なかったのだがようやく落ち着いてきた事によって余裕が出てきた、いや出てしまったのだ。


「次会ったときに何かするって言っちゃったしもし血を吸わせてなんて言われたら・・・」


あの夜のことを思い出し湧き上がる母性本能のような何かを抑え込んでいると後ろから声をかけられる。


「もう、良い加減覚悟決めたら?私も雪さんって人に会いたいよ!」

『そうですよ、私もマスターの恩人に挨拶しなければ』


千奈が催促してきていた。まだ寮には来ていないがシルバーウィーク明けには怜と同部屋になる予定なのだがその前に自宅に二人とも帰って居た。


「う、うん。雪さんには連絡がつかないから綾さんに今日会う予定なの。同部屋だから何か知ってるかなって。」


「ならばよし!じゃあ私はマナスと寮の準備してるから!」

『お願いしますね?ヘタレないでくださいよ!』


「妹が二人になった気分だわ、、実際そうかもしれないけど、、、」


【マナス】は千奈の能力によって生まれた物だ。千奈は【空想具現】と【模倣】という能力に目覚めていた。魂の世界で呪いに抗うために産まれたんだと本人が言っていた。魂の世界には千奈しかいなかった為千奈そっくりではある。


「そろそろ時間よね、大丈夫、よね?服も変じゃないし、髪もメイクもしたわ、よ、よし!行きましょう!」


この挙動不審には理由がある。小学生の頃から呪いを解くことだけを考えてきた怜は友達を作る事はしなかった。時間もないと思って居たし、最悪自分も死ぬと考えて居たからだ。そして魔防学校に入学してからは主席になる為に努力し続けた為友達がまたしてもできていなかった。いや、雪と綾を含めれば二人はいたが。


「此処であってるわよね?あ、」


「銀嶺さーんおーい!」


「綾さん!おはよう。」


「ごめん遅れた?」


「いえ、今きたところですから。」


「そういえば妹さん退院したんだって?良かったね!」


「はい!お陰様で元気になりました。それで今度妹を綾さんと雪さんに合わせたいと思っているんですけど雪さんと連絡がつかなくて。何か知りませんか?」


「あー雪ちゃんならおとうさんと一緒にどっか行っちゃったんだよね。私もいつ帰るか知らないんだ。ごめんね?」


「そ、そんなぁ〜」


結果主席を取るために張り詰めていた雰囲気も無くなり友達と遊んだ経験ゼロの残念美少女になりかけていた。


後書き

後回しにしていたこの話やっと書きます!再登場は部活編の後にしないといけなかったんで遅くなりました!次からは雪が帰って来るのでお楽しみに。


この作品は作者のテンションによって執筆速度が変わります。この作品を面白いと思ってくれたら下の⭐︎を一つでいいので押してください!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る