幕間 呪いに立ち向かう少女

最後に妹の笑顔を見たのはいつだったろうか。

今でも思い出せるほど元気で笑顔の絶えない妹だった。それが急に消えてしまったのは小学生の頃のあの日からだった。



「やあ、元気?君たちに、いや君に会いに来たよ?」


馴れ馴れしくはなす黒ローブを纏った人物は怜とその妹に向けてさらに話し出す。


「君、予知と未来予測ができるんだって?すごいね!僕にも見せてよ!」


一見どこにでもいそうな子供の頼みと同じトーンとセリフで話してはいるがその言葉の裏から底なしの悪意が溢れ出していることを怜は感じ取った。


「あなた誰!私と妹に近づかないで!魔防隊呼ぶわよ!」


「怜ねぇ、怖いよぉ。」


「大丈夫、私がついてるから。」


「うんうん。素晴らしい姉妹愛だね!大丈夫!すぐに終わらせて居なくなるから!【奪魂縛】」


いきなり黒ローブが能力を発動し禍々しい光が姉妹を包む。


「「!!!?!!」」


言葉にもならない激痛が二人を襲う。


「暫くしたら痛みは無くなってるから心配しないでねー?そ、れ、と君たちは僕のものなんだから死ぬまで死なないでね?」


そう言い残し黒ローブは去っていった。


怜は妹の方を見る、すると妹は痛みのショックで気絶したようだ。怜も薄れゆく意識を保ちながら親が念のためと持たせてくれた魔防隊への直通連絡装置を起動させる。がそこで意識が途絶えた。


その後はたいへんだった。

通信を受けた魔防隊が駆けつけて倒れている姉妹を病院へ搬送。その後検査をした所呪いを受けている事が判明した。

すぐに解呪を行うが失敗に終わった。

解呪を行った人が言うには私が20歳になった時に呪いが発動して死ぬらしい。しかも、解呪しようとしたらその期間が短くなる効果まであると言う。


「お父さん、妹は?」


「・・・怜と同じ状態だが目を覚まさん。恐らく呪いのせいだと思うがそう言った効果はないらしいから相性が悪かったのかもしれん。」


「そんな!あの子を助ける方法は、私たちの、呪いを解く方法はないの!?」


「あるにはある、だがこれはかなり危険な賭けだ。それでもやるか?」


怜には迷う時間はなかった。


「うん、やる。あの子に私がついてるって言ったんだから私が助けるの!」


「よし、なら怜強くなれ。お前に呪いを施したやつを倒すか解呪するかしか方法はない。それにお前の力ならやつを見つける事ができるかもしれないしな。」


「分かった。私頑張るわ。」


それからというもの私は一生懸命がむしゃらに強くなることだけを目指して突き進んだ。


中学に入っても友達も作らずお父さんや魔防隊の人たちに稽古をつけてもらう日々だった。

呪いのおかげなんていうのは嫌だけど魔力も人並みはずれた量になった。


そんなある日私は予知夢を見た。私の予知は今のところ夢でしか発動出来ない。それも私の意思とは関係なく。

大体は夢のようにイメージで伝わってくるが、本当に大切なことはもう一人の私が喋るように教えてくる。


「怜、隣町のデパートに行きなさい。」

「下着店の更衣室の前に行けばあなたの望みを叶える人がいるわ。」


訳がわからなかった。私の望みは妹と私の呪いを解くこと。なのにそんな所に私の望みを叶える何かがあるなんて。


「でも、今まで外れたことはないしあの予知の仕方は本当に大事なこと・・・行かなきゃ。」


私は予知に従ってすぐに隣町のデパートに向かって歩き出した。

そのまま下着店の更衣室の前に来るといきなり女の子が下着のまま飛び出してきた。


「大丈夫?なにか、あった?」


少女が逃げるように飛び出してきたので咄嗟に心配した。それに妹と同じくらいの背丈で何故か気になった。それになんとなくこの子が予知の人なんだと思った。


怜には能力の副効果によって勘が鋭くなっていてこの時もなんとなくそう思ったのだった。


「ぎゃーーーーー見ないでーーーー!」


すぐに女の子は戻っていってしまったけど流石に可哀想なので帰る事にする。


「一度見たから今度からは未来予測でどこにいるかなんとなく分かる。まだ時間はあるから少しずつ仲良くなってお願いしよう。」


そう言い残し怜はデパートを後にした。


その後も何度か予知をした。東京の魔防学校に入学すればいい事。夜遅くに風呂に入りに行けばいい事。でもそんなことをしても望みは叶わなかった。


そして、入学式の日、校長の挨拶で私のすることは決まった。


「さて、ここまでいろいろ話したが最後に諸君に発破を掛けよう。この学校では卒業時主席の者には魔防隊がひとつだけだが協力する権利を進呈しよう。エリートコースだろうが欲しい物だろうがなんでもひとつ叶えよう。流石に法は遵守してもらうがな?ではこの中の誰かからの願い楽しみにしているぞ。」


「なんでもひとつ。ならエリクサーも願えばもらえるかもしれない・・・!」


エリクサーとはあらゆる状態異常を治すと言われる霊薬だ。年に一度世に出回るかという貴重性の裏には霊草と呼ばれる希少な薬草が関係している。育成方法不明、栽培方法不明、発育条件不明の誰も知らない薬草だが確実に存在はしている。


そうして私は主席を目指してこの1ヶ月努力した。文武両道でなければ主席にはなれない。だからクラス編成前の個人能力計測でも本気で挑んだ。その結果主席になった。その成績を買われて生徒会の庶務に勧誘もされた。


このまま維持しなければと思って居たその時予知夢が発動した。


「これは・・・お風呂?それに、、あの子は!あの時の!学校を探しても居なかったのになんで?いや、それよりいつ会えるの!?」


急ぎ起きて未来予測を発動させる。すると明日の夜の出来事だと分かった。

希望が見えてきたと感じた内心狂喜乱舞した。


「あの子と話せれば妹を、【千奈】を助けられる!」


翌日、怜は寮の風呂で待ち伏せをした。幸い未来予測で来る時間帯はわかっていたのでそこまで苦労はしなかった。

雪が入ってきたことを確認して近づく。


「あなたを待ってた。ここにいれば会えると夢に出たから。」


すぐにあの子、血桜雪はデパートであったことを思い出した。


「私は怜。【銀嶺 怜】予知夢であなたといると私の願いが叶う夢を見たから会いにきた。」


自己紹介をし、呪いについて話すと意外にも協力してくれそうな雰囲気がする。もしかしたらお願いを受けてくれるかもしれないと思ったその時雪の連れが入ってきた。


「その願いで雪ちゃんが危険になることはないんですか?もしそうなら断ろう?雪ちゃん。まだ教えてなかったけどこの人はこの学園に今年入った私たち1年生の主席なんだよ。だから結構ライバルがいて巻き込まれるかもしれない。」


やはりそのことが気がかりだったみたいだが


「大丈夫、そんなことにはしないしさせない。それにこれは私の弱みも握れるから私しかデメリットは無い。どう?」


もし、解呪が出来たのならもう主席を目指す理由もない。だからこの心配は杞憂になると思った。


その後は雪さんが了承してくれてかなり乗り気になってくれたので嬉しかった。明日は休日だから久しぶりに外に出ようと思って眠りにつく。


翌朝、制服に着替えて外に出る支度をしていると呪印から激痛がする。それは次第に身体全体に及び魂を抉られるような痛みに変わっていった。


「ぐっ!まさか、もう発動するなんて・・・ごめん、お父さん、助けられなくてごめん、千奈・・・」


そして怜は意識を失った。


後書き

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