3章55話 開門4
手に爪を生やし鬼と打ち合う雪だったがそれでもまだ鬼の方が優勢であった。
ギャラギャリギャリ、、ピキッ
「くっそ、あいつの方が爪が硬いし鋭い!流石にもらってすぐの力じゃ練度が足りねえ!流石にまだ魔力は足りてるけどここままじゃじき尽きちまう!」
鬼との鍔迫り合いから一旦後ろに下がり折れた爪とヒビの入った箇所を魔力で直す雪。一方辛うじて雪がいれたひびを直す鬼。このままでは鬼が負けることは絶対にあり得ない。
『このままジリ貧まで追い込む事もできるがそれじゃあつまらねぇ。【衣領樹】』
いきなり鬼がその後ろに木を一本生やした。その木は光となって鬼の体に吸い込まれ木が放っていた光と同じ光が鬼に宿る。
『【罪状選定】魔力消費、さてこっからがラストスパートだ。すぐに倒れるんじゃねぇぞ!?』
先ほどと同じように斬り合い打ち合う両者であったが先ほどと違うことが一つ、そして明確に致命傷になりうることであった。
「なんだこれ!銀嶺さんの紋みたいな、呪いか!?何をした!」
『大したことじゃねぇ、戦闘が終われば消してやるし、そうじゃなくても半日もすれば消える。それより戦おうぜ?』
「くそ、教えない気か。戦いながら確認するしか無いな!」
胸に浮かび上がった紋様を気にしながらも戦う雪であったがすぐに異変が起こる。
「くはは!隙だらけだぜ!うらぁ!」
「くっ避けられない!【鮮血武装・胴】!ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?ゲホッガハッ!!なにが、起き、たんだ・・・?威力は変わった!?さっきと様子が変わったようには見えない・・・!なら、やっぱりこれのせいか?」
(さっきあいつ【罪状選定】魔力消費って言ってた。あいつ自体の身体能力は変わってない、俺の方もそうだ。変わったのはあいつの攻撃の威力だけ。魔力消費ってことはそれが関係してるのか?あいつはヒビしか直してないから俺の魔力消費か!)
「これ、俺の魔力消費の分だけダメージが上がるとかそんなのだろ?違うか?」
『お、流石にこれはわかったか。そうさ、この【衣領樹】は相手の行動を条件として設定する事でその行動の分だけダメージが上がる技だ。まあ、わかっても意味はあまり無いがな、クハハハハ!』
「確かにそうだがそれなら短期決戦、最後の勝負だ!【爪鬼化】+【吸血】 【侵血爪】これに賭ける!」
『いいなぁ、全魔力を爪に込めたか!なら、来い!全力で俺を負かしてみろ!』
「そのニヤケ顔止めてやる!ハァ!流石に吸血効果のある爪だ、お前の爪でも切れるみたいだ。ぐっ。」
『切れたからなんだ?また生やせばいいだけだろ?おら、もっと来いよ!魔力が切れる前によ!』
「言われなくても!」
鬼は雪の攻撃を逸らしつつ攻撃するが先ほどよりは傷が増えている。対して雪はもう血まみれだった。
そして、遂に恐れていた事が起こる。
「はぁはぁはぁ、【爪鬼化】・・・!出ない、魔力切れか。」
『みたいだな、まぁ渡されてすぐでここまでできれば上出来だろ。とどめを差して現実世界に戻してやろう!』
鬼が雪にとどめを刺すために接近する
が、爪を振りかぶった瞬間に気がつく。雪の目にまだ光がある事に。
『なっお前まさか!』
「悪い、今はこんな事でしかお前に勝てなくて。今度はもう少しマシになっておくから。」
鬼の胸から大量の血の刀が生えてくる。
『ガハッそうか・・・魔力切れに見せかけて落ちた血に魔力込めてやがったか。まぁ、どんな結果であれお前の勝ちだ、受け取れよ。』
【爪】をもらった時と同じでまた光の球を受け取る。
「これは、あの木の能力か。ありがとう。またいつか来るよ。」
『おう、俺はいつも暇してるからな。早く来いよ。』
「そういえばお前って名前あるのか?いつもお前とかあいつとかでしか呼んだことしかなくて。」
『ああ?名前だぁ?んなもんねぇよ。』
「なら俺の鬼って事で【雪鬼】ってのはどうだ?」
『好きに呼べ。』
「ああ、じゃあな、雪鬼。」
そうして雪は魂の世界から去っていった。
残された雪鬼は
『雪鬼ねぇ、的を射てるんだか射てないんだか。」
そう小さく溢しながら機嫌良く吹雪降る極寒の地に去っていった。
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