1章14話 羞恥地獄(買い物)

 昼ご飯も食べ終わった俺たちは3階にある女性下着売り場に来ていた。


「なあ、もう今度にしよう?疲れたしさ。」


「何言ってるの、今日買わないと明日からどうするのよ。言っておくけど学校行くまでに買わないと制服の下ノーブラの変態になるよ?良いの?」


「う、それは困る。綾に会ったらなんて言われるか分からないのに変態なんて言われたら立ち直れない!」


「なら、今日買いましょ?」


「はい・・・」


 朱音に説得されいざ店内に入るととても自分が居ていい空間でないような気がして落ち着かなかった。すると母さんが店員に話しかける。


「すみません、うちの子がブラ買うの初めてでサイズ測るのといい感じの見繕って下さい。」


「わかりました。後でサイズについてはお渡しするので参考にしてください。ではこちらにどうぞ。」


 何をするのかと思ってついて行くと俺は店の奥に案内されいきなり服を脱がされた。


「ひゃっ」


 今の俺の声か!?すごく恥ずかしいんだけど!

 自分の声とは思えないほど女の子のような声を出していると、


「うわぁー綺麗な肌、それに胸も形がいい。よくブラしないでここまで綺麗な形保てたわね。」


 店員さんがとても至近距離で俺の体を見ていた。ここまで近くに来られると恥ずかしいんだが?でも、そう思ってるのは俺だけみたいで。


「じゃあとりあえず胸のサイズを測っていきましょうか。手を上げてー」


 俺は言われるがまま店員の指示に従った。やっぱりプロだと恥ずかしさとか感じないのか?いや、仕事なだけか。


「ふむふむ、B、いやCね。とても眼福だったわ。それじゃあいくつか貴方に合うやつをつけてみましょう。つけ方わかる?」


 心ここに在らずといった様子で俺は首を振った。と言うか知ってるわけないだろう。


「じゃあやってあげるから覚えてね。まずは紐を肩にかけて後ろのフックをつける。その後胸をカップの中に寄せ集めるようにして終わり。ね、簡単でしょ?」


 店員さんが俺の後ろに回ってブラをつけてくれる。だけど既に疲れた俺は返事も適当に返す。

 自分の体が写っている鏡を見ると改めて自分が女になったとわかって悲しくなってくる。


「・・・はい」


 何か男として大事なものを失った気がした。女の子になったから男を失ったとも言えるけど。


「後はパンツだけどウエストも足も細いしこの辺りかな?」


 そう言って青や白、赤などのパンツを持ってきた。早くこの場から逃げたい。俺はもう、どうなでもなれとやけになって全て買うことにした。

 流石に際どいのは避けたけど、なんであんなのもあったんだよ・・・。


「いやー可愛くてついついエロいのも持ってきちゃいました。メイちゃんが言ってた通りの子ね。」


(やっぱりあんたのせいか!ん?メイって誰だ?)


「あの、メイって誰ですか?」


「あれ?病院であってると思うけど。」


(まさか、まさかまさか!)


「ほら、天然そうで貴方が起きたのを発見したあの子よ。私のいとこなの。」


「!?」


 まさかの関係性に思考が止まる。

 何か嫌な予感がする。しかも、狭い密室に2人きり。外には母さんたちがいるが出るわけにはいかない。店員さんの次の言葉を恐る恐る聞く。


「メイちゃんが言う通りお人形さんみたいで可愛いわ。ねぇ今度はこれ履いてみよ?」


 店員が取り出したのは紐だった。あまり女性の下着なんかに詳しく無い俺でも普通のパンツでは無い事はわかる。すると店員が手をワキワキしながら近づいてきた。ヤバい気がして咄嗟に外に出ると目の前にとても綺麗な女の子がいた。


「大丈夫?なにか、あった?」


 みたことがないくらい綺麗な顔に一瞬目を取られていると自分が下着姿なことを思い出して、


「ぎゃー見ないでー!?」


顔を真っ赤にして試着室に戻った。

すると店員さんが申し訳なさそうにしていた。


「すみません、ちょっと昂っちゃって」


「ちょっと?まあいいやこれ全部買うので会計お願いします。」


 服を着て外に出るとあの女の子は居なかった。

 その後朱音と母さんが「ごめんねー、ちょっと自分の分も見ててほったらかしにしちゃったかしら」と言っていたので俺の痴態は知られてないみたいだ。良かった。

 その後は日用品などを買って家に帰った。


「なんか、事件に巻き込まれた時より疲れたんだが。」


「こんなんで疲れてたら女の子やっていけないよ?それに今日は最低限のものしか買ってないんだからまたいつか買い物しにくるからね!」


 俺と違ってまだ元気な朱音は楽しそうに言った。マジかよ、もう既に一年分くらい疲れたんだが。


「明日は戦闘用の服を買いに行くから動きやすい服にしておいてね。」

と母さんが言った。


「戦闘用?」


「今日買ったのは普段外に着るものであって戦う時に着るものじゃないから。私がよく行く行きつけのお店があるからそこに行きましょう。」


(戦闘用の服かぁどんなのだろう。)


 俺は期待に胸を膨らませながら帰宅するのであった。

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