1章13話買い物(またも地獄)

 数日前に事件に巻き込まれたのにまた買い物に来た俺たちは隣町のデパートに来ていた。正直、俺はまだ怖い。それでもそれよりも怖い事が待っている。


「とりあえず普段着と部屋着を5着ずつ下着を10着買いましょう。」


「いいよそんなに買わなくても。それに下着買いに行くの!?」


「当たり前じゃない。今は女の子なんだしブラとパンツを買わないと生活するの大変よ?それとも学校でスカートの下にトランクスでも履くつもり?」


 それでいいんじゃね?だって見ないだろ、誰も。


「それでもいいと思ったなら別にいいよ?でも綾さんにバレたら穿かされるんじゃない?」


 俺はその光景を思い浮かべて綾ならやりそうだと思った。


「うっ確かにわかった。すぐに買って帰ろう、そうしよう!」


すると朱音がツッコミを入れてきた。


「何言ってるの?1日買い物するんだからすぐ終わるわけないじゃない。服以外にも買うものはたくさんあるんだから!」


 えぇ!?1日で終わりなんじゃないのか。女子の買い物は長いと言うけど本当なのか。ここで反論しても立場は俺が一番低い。大人しくしてよう。


「まず先に制服の方から終わらせていきましょう。確か2階に受付があったはずよ。」


 その後俺たちはエスカレーターで2階に上がって制服を試着した。だけど、

「ねぇ、ズボンじゃダメなの?スカートとか履き慣れないしなんかスースーするんだけど女子ってこんな防御力低そうな服しかないのか!?」


「無いのよ。上は若干違うけど同じもの、だけど下はスカートのみよ!」


 珍しく母さんが力強く伝えてきた。


「え、でも最近は女子でもズボンの制服を着れる学校が・・・

「スカートの、み、よ。」


「・・・・・・・はい。」


 圧に負けた。こんなに押しが強い母さん初めてだ。その後普段着を買うために女性服売り場にやってきていた。


「まず、トップスから選びましょうか。春物と夏物を買っておきましょう。朱音、雪に似合いそうなものを何着か持ってきてね。」


「わかった!あそこにあるブラウスとか良さそうなんだよねー」

 

 朱音がすごく楽しそうにしてる。嬉しい反面、俺は着せ替え人形になることになる。そもそもで女装したくない!


「いや、私はTシャツとズボンでいいから!」


「ダメよ?こんなに可愛くなったんだからオシャレしましょ?このカーディガンとズボンを着てみましょ。」


 そう言って俺は試着室に連れ込まれた。母さんの圧に屈してしまった。この部屋に入ったが最後、地獄に足を突っ込むとは知らずに。


「うんうん、似合ってるわ!それじゃあ今度はこのブラウスとスカートを着てみましょう。あとこのワンピースも良いわね。」


「お母さん、これも着て貰おう!きっと似合うと思う!」


 二人は1、2着どころか少なくとも上下合わせて10着以上持ってきた。しかも、下半身の装備が少ないものばかり。


「待って、こんなにたくさん着るの?」


「「当たり前よ」」


「まだ一軒めなんだからこれだけで疲れるようじゃ保たないよ?」


えっ。なんとか耐えたら終われると思ったのに!地獄かよ。


「えっこの店だけじゃ無いの!?この服の山着たら終わりだと思ったのに。」


「そりゃそうでしょ、他のブランドの服もあるんだから色々見て回るんだよ。」


「そんな〜」


「諦めて。それじゃあ今度はこのスカートとTシャツを着てみて。」


 それからヒラヒラしたスカートやワンピース、ジャケットなどいろんな服を着せ替え人形のように着させられた。

 俺はもはや持ってこられた服を拒絶反応すら出ないくらい自然に着始める自分が怖かった。


「よし、普段着はこのくらいにして部屋着を買おう。」


「え、まだ買うの。」


「そりゃそうでしょ今日買った服で寝るつもり?」


「う、確かに」


 まぁ、誰かに見られる服とは違って部屋着ならジャージで良いよな。違和感がないからきても精神が削れない。


「まぁ、外用の服と違って雪姉も自分が楽だと思う服を選べば良いよ。ただし!ジャージとかは無しだからね!」


「わかったよ……」


(危ねぇジャージ持ってこようとしてた。持ってきたら今日の俺の選ぶ権利無くなってたかな。)


 そうして、適当にズボンと少し大きめのTシャツを何着か買った。途中、朱音がふわふわしたピンク色の部屋着を持ってきた時は全力で却下したりしたけど・・・


「よし、ある程度服も買えたしお昼にしましょう。」


 気づけばもう12時過ぎだった。

 フードコートまできた俺たちは各々の好きなものを注文した。


「色々きて疲れたしガッツリ食うよりあっさりしたもの食いたいよな。あ、あそこのうどん屋美味しそうだな。すみませーん大盛りで一つください。」


 お店の人は少しビックリした様子の後お盆にうどんを乗せてくれた。何か驚くことでもあったか?

 俺は首を傾げながらお盆に乗せたうどんをあらかじめ決めた席に持っていく。


「さて、2人はどんなものを食べるのかな、朱音はハンバーガーかな?」


 2人が待つ席まで行くと考えてた通りハンバーガーを食べる朱音がいた。


「雪姉はうどんにしたんだ、にしてもその量食べれるの?」


「いつもこれくらい食べてただろ?いけるよ。」


「なら良いけど」


 なんだ?朱音のやつ何が言いたいんだ?


「はい、お水持ってきたわよ。雪その量食べれるの?」


 母さんがコップに水を入れて持ってきた。母さんもか。


「大丈夫だって。それより母さんは何か食べないの?」


「私はいいわ。たぶん食べない方が良いと思うから。」


 何か意味深なことを言っていたが構わず俺はうどんを食うことにした。うまっ。いくらでも食べられそうだ!

 その後少しして母さんの言葉の意味を知る羽目になったが。


「なんで、いつも食べれるのに・・・うぷもう食べれない。」


「だと思ったのよね、女の子になって胃の大きさも変わってるはずだもの。残った分は食べるわ。」


「ありがと母さん。食べれると思ったんだけど」


 そんなこともありながら俺たちは昼ごはんを済ませた。




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