第3話買い物

 バーベキューをしてから3日後俺は母さんと買い物をするためにショッピングモールにきていた


「それで?何買いにきたんだっけ」


「私の手伝いするって言っても中卒の何の知識もない人を病院の中に入れるのはできないから教科書と後は私服で手伝うわけにもいかないでしょ?だから仕事着を買いにきたのよ。後は魔道具ね」


 魔道具とは魔法使いが刻印して簡単な魔法を使えるようにしたもののことだ。かなり繊細な技術だから綾には一生できないと思うが。


「治癒系の魔道具を買って雪には軽い傷なんかを治してもらう事になるから」


 そう母さんは言って歩き出した。

 魔道具で魔法が使えるからといって魔法使いが不要になるなんてことはない。火を出そうとすればマッチくらいしか出ないし、傷を治そうとしても注射の傷を治したり、擦り傷を治したりがせいぜいだ。

 だけど俺はそんな魔道具程度の能力でもいいから欲しいと思ってしまう。


「ああ、それと魔物警報については覚えてる?あの病院たまに魔物が来るから鳴るのよね」


「覚えてるよ、上位中位下位に分かれてそこから魔物の形で分類するんだよね?」


「まあ、一般的にはそうなんだけどごく稀に上位より強い特位がいるわ。ネームドとか言われる名前付きがまさにそれね、っと話してたら着いたわね。治癒系の魔道具を好きなのをえらんできなさい」


「わかった、金額の上限は?」


「気にしなくていいわ、経費ということで落とすから」


 そんな話をして俺はいくつかの魔道具を見ていた。


「うーんやっぱりペン型のやつが取り回し効くしいいのかなぁそれとも・・」


 そう考えていると急に周りが暗くなった。この店は屋上まで吹き抜けになっていて空が見える。そのため俺は空を見ると鳥とは違う巨大な姿が見えた。


「ワイバーン!?なんで中位魔物がこんなとこに!」


 緑色の体と紫がかった黒い爪を持つワイバーンが空を飛んでいた。頭が真っ白になった一瞬後に携帯が鳴る。

「緊急魔物警報、緊急魔物警報、現在、付近に魔物が出現しています。」

 やけに流暢な絶望を加速させる音声が頭に響く。


「ッ!逃げなきゃ!」

 

 まずいまずい!見つかったら俺はなす術なくやられる!


 急いでエスカレーターまで走りろうとした矢先唐突に刺される様な悪寒がして左に避ける。


ヒュッ


 風が吹いたのかと思うほど激しい速度でワイバーンが突っ込んできていた。


 こっちに来ない?モゾモゾしてる・・・引っかかってんのか!今のうちにエスカレーターまで行かないと!


「よし!着いた!後はエスカレーターで降りて・・・ん?なんだこの音。」


 人が駆け上がってくる音にしては音がでかいな。それにここ降りる階段だぞ?誰だいったい?


「ゴリラ!?」


 動物園でしか見たことないものが目の前にいる、その状況に俺は混乱する。しかも腕が4本もあった。


 まずい、逃げなきゃ

 そう思う瞬間に俺の頭に腕を振り下ろすゴリラが見えた。


(あ、死んだ。一人でこんなところで死ぬのか・・・)


 諦めた瞬間、ゴリラの頭に血の様に赤い刃が刺さった。


「雪大丈夫!?無事!?」


 そうだった、俺は母さんと買い物に来ていたんだった。警報が鳴って駆けつけたんだな。


 エスカレーターを登ってくる母さんの姿を見て安心したのも束の間、「GuAAAaaa!」

遠くから聞こえてくる奴の存在を思い出した。


「ッ!店にワイバーンが突っ込んできたんだ!早く逃げよう!」


「なんですって?まずいわね、雪!ゴリラを乗り越えてこっちにきなさい!」


「わかった!」


 母さんの元まで行くと母さんは外の窓を人2人分くらい割っていた。


「いい?これから私たち二人を血で覆って下に降りるわ。しっかりつかまっていてね。」


 いきなりあり得ない提案をした母さんに俺は叫ぶ。


「はあ!?ここ10階だぞ?大丈夫なのか?」


「大丈夫、少しなら血を操作すればこの程度の高さなら痺れるくらいで済むから。さあ行くわよ!」


「ちょ待っぁぁぁぁぁぁあー!?」


 少しの浮遊感の後痺れる様な衝撃が足にきた。


「なんとかなったわね」


 どうやら地上に着いたらしい。

 血の膜が無くなり周りを見ると魔物が出た割に街が綺麗だった。


「あれ?魔物でたのに街が思ったより綺麗なんだけど?流石に人は避難してるからあまりいないけど」


「どうやらいきなりモールの中に現れたらしいわ。」

30秒ほど話していると上から影が落ちてきた。


 その瞬間、俺は頭上から悪寒を感じた。それも心臓が止まりそうになるくらい激しいものを。

 俺はこの刺すような感覚を知ってる!


「母さんワイバーンが突っ込んでくる!」


「!【血盾ブラッディシールド】」


ガキキキキン!


 母さんが血の盾を作った後金属が擦れる様な音がした。そのあと母さんは俺の方に手を向けて


「【血霞】この中にあれば安全だからじっとしていてね」


 血の霧の様なものを俺に纏わせた。


「母さんはどうするんだ!ワイバーンには勝てないだろ!?」


 くそっ霧が邪魔で母さんに近づけない!あんなのに勝てる訳ない!逃げた方がいいに決まってる!


「私はこいつが何処かに行かない様に時間稼ぎしなくちゃ、大丈夫防御だけならこいつに負けないから」


 母さんは少し無理に笑顔を作る様にして笑った。

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