乙女ゲームの魔王から王子様達に助けられる主人公に転生しました。でも、助けに来るのが遅すぎるので自力で脱出しようと思います。

タカ 536号機

転生、修行、最強へ、無双、蹂躙、オラオラオラオラオラオラオラ


「ふんふんふーん♪」


 私は王宮内をある日記を片手に上機嫌に歩いていた。この日記を見ると思い出す。忘れられない苦しく大変な日々を……。

 それ以上に楽しく充実していたあの時を。



 *



 転生1日目


 私が目を覚ますと何故か牢屋?みたいな所にいた。一瞬夢かと思ったが流石に長すぎるので不思議に思っていると頭痛がして思い出した。……私は友達と遊びに行った海で溺れて死んだということを……。


 もう、親にも友達にも会えないかと思うと泣きそうになったがそんな暇はなく、ご飯ということで乱暴にゴブリンっぽいのに牢屋から出された。


 どうやら私は魔物に捕まっているらしい。それと、私が転生した相手はかなり美人で幼いということが分かった。こんな幼い子が死んでしまったと思うと胸が傷んだが、そういや私も若くして死んだんだったわと思い出した。


 部屋に日記とペンだけはあったのでこれからのことを記録していこうと思う。



 転生2日目


 今日は大発見があった。この世界は、私が生前に散々プレイした『魔王に捕らえられた私が王子様達に溺愛されるまで』といういわゆる「乙女ゲーム」の世界で、私は主人公のニーシャに転生したらしい。今日、魔王が現れ私をニーシャと呼んだことで気づくことが出来たのだ。


『魔王に捕らえられた私が王子様達に溺愛されるまで』は主人公のニーシャが10歳の頃、魔王によって攫われてしまい記憶が一切なくなってしまった所から始まる。


 実はネタバレをするとニーシャはヴィーガン王国のお姫様なのであるが記憶をなくしてしまっているので王子様達に恋を庶民がしていいのかと悩む場面があったりする。

 つまり、私はお姫様なのだ。


 そして、ニーシャは10年間魔王城で辛く険しい日々を過ごし限界を迎えた時、やって来た3人の王子様達に救われ3人から求婚を申し込まれ溺愛され、幸せな日々が始まるのだ。


 最初の方は魔王城での辛い場面が続くが言うて10分ほどで後は王子様達による溺愛タイムが始まるのだ。


 しかし、これは現実である。ゲームでは10分程度で描写されたが現実はそうはいかない。

 私はこれから10年間も辛い日々を過ごさねばならないのだ。

 そう考えるとゾッとした。10年もこんな何にもないところで過ごさねばならない。

 考えただけで気が狂いそうだ。10年なんて耐えられない。


 ……とりあえず、今日はパン半分と変な匂いのするマズイお肉だった。私は米派なのでパンNGなのだが……仕方なく食べた。

 もうパンなんて嫌だ。


 転生3日目


 今日もパン半分と変な匂いのするマズイお肉だった。オエッ。


 転生4日目


 今日も(以下略)。

 制作会社、どうせ描写しないからって雑にやりやがったな?


 転生5日目


 今日も(以下略)。

 もう、限界である。一瞬、ゴブリンに襲い掛かりそうになった。……米ガ食イタイ。


 転生6日目


 今日モ(以下略)。

 モウ……ムリ……米……食ワセロ。


 転生7日目


 今日、ついにイライラが抑えきれずゴブリンに襲い掛かってしまった。

 そうしたら意外な事実が分かった。ニーシャはとてつもなく力が強いのだ。ゴブリンに少し力を入れてデコピンしただけで暴風と共にゴブリンは飛んでいってしまった。


 ゲーム内ではそのような場面は一切なかったのだがこれは私が転生した影響だろうか?

 ゲームにバグが生まれてしまったのかもしれない。


 でも、この力があれば魔王城を脱出出来るかもしれない。……もう、王子様達なんて待ってられない。こんなパンだらけの日々はウンザリだ。


 自力で脱出して王子様達に会いに行けばいいのだ。



 転生8日目


 ……無理でした。ニーシャ(私)は転生の影響か力は強いがスピードが全くないのだ。

 逃げようとしたところを魔王に探知され一瞬で後ろに回りこまれ手刀を首に叩きこまれ気絶してしまった。


 ちなみに今日はパン半分と変な匂いのする魚でした。これ、なんの嫌がらせですか?

 肉を変えなくていいんでパンを米にしてください。


 転生9日目


 今日は牢屋内でひたすらステップを踏んだり、走ったりしてスピードを上げていた。

 ニーシャ(私)の成長幅がエゲツない。昨日は、普通の12歳レベルの速さだったのが今や日本のアスリートレベルはあると思う。

 恐らく転生によってバグが起こってしまっているのだろう。


 今日はパン半分と豆でした。豆パンにでもしろってのか!? ゲーム制作会社マジで呪う。

 早く脱出して王子様達に会いたい。


 転生15日目


 今日も特訓。魔王の攻撃も少し見えるようになってきた。


 今日もパァァァァァンでした。頭がパァァァァァになるわ!!


 転生30日目


 聴力拡張のスキルをゲットした。これで、魔王の弱点を聞いて色んな情報を集めて脱出してやる。


 今日もパン。魔王、テメェもパンにしてやろうか?


 転生68日目


 もう少しだ。今日はかなり惜しかった。ほとんど攻撃を見切れていたし、ギリギリであった。あと少しで間違いなく脱出できるだろう。待っててね、私の王子様達☆


 転生72日目


 とんでもないことが分かった。私が最高レベルまでになった聴力拡張を使って王子様達の声を聴こうとして聴いてみると、本性が見えてきた。忘れないように会話をメモしておくとしよう。


 多分、私の召使い?『パニクル王子? ニーシャ姫様を我々と共に助けに行ってくださいませんか? 何故か、王子様がいないと魔王城は入れないんです。 なんにもしなくていいのでついて来ることだけしてくださいませんか?

 私達が姫様を魔王城から助け出すことくらいは出来るので』


 パニクル王子『ダメだよ?』


 多分、私の召使い?『な、なんでですか?』


 パニクル王子『だってさぁ、僕が魔王をワンパンできるくらいにならないとさぁ。

 助けてもインパクトないじゃん? やっぱ、さぁ女って言うのは魔王を一撃で倒した奴とかじゃないと惚れないでしょww

 あの子、昔見たけど凄い可愛いんだよねぇ。

 それに姫様なわけだし絶対結婚したいよね?

 だからさぁ、可愛い可愛いオモチャお姫様にさぁ、惚れてもらってさぁこの国の実権を握る為に僕がそれくらい強くなっからじゃないと……』


 多分、私の召使い『な、なんてことを……。まるでニーシャ姫様を道具とでも思ってるかのような発言。訂正してもらいますぞ!』


 パニクル王子『いやw 実際道具っしょww

 あんなにいいオモチャないよ? あいつ、落としたら好き放題にしてよくてこの国の実権まで握れちゃうのよ? ww』


 多分、私の召使い『パニクル王子にはもう頼みません。ゴーリヤ王子。お願い出来ませんか?』


 ゴーリヤ王子『いや〜僕もパニクル王子に賛成だしww むしろ、僕に確実に惚れてもらう為にもう少し絶望してもらってから助けた方がさぁ良くない? と思うんだけどwww』


 パニクル王子『お前天才かよwww それもいいな。しばらく助けずに絶望に落とした所を助けてメロメロにしちゃうわけかw』


 多分、私の召使い『な、なにをふざけたことを!!!!! ナイロン王子、このふざけた者共に一言いってやってください』


 ナイロン王子『いや、もうさぁ10年くらい放置しないww その方がしつけ甲斐がありそうだし、めっちゃ従順になりそうだよねぇw

 壊れてても所詮は道具でしかないから別にいいいし』


 パニクル王子『本当にそ____』



 あまりに不快だったのでここで切ってしまった。王子様……いや、ニーシャはクソ野郎どもの道具でしかなかったのか?


 そう思うと私の王子様達への気持ちが冷めていくのを感じた。いいだろう。誰がオモチャか思い知らせてやるよ。


 とりあえず、出会ったら全員顔をボコボコにしてやる。


 転生84日目


 ついに魔王を倒すことが出来た。ギリギリまで上げた視力と瞬発力で攻撃をしのぎ全力の拳でワンパンすることが出来た。ニーシャ(私)は力がエゲツないがまさかワンパン出来るとは……。


 ということでようやく魔王を倒し、私の脱出を邪魔する者はいなくなったので……私は魔王城で修行を続けることにした。


 いや、だってさクソ野郎どもワンパンじゃ楽しくないじゃん? どうせなら、オラオラオラオラオラオラオラオラくらい殴りたいよね。

 ということで魔王が目覚めたらそれが出来るようになるまでのサンドバック要員となってもらおう。


 転生85日目


 逃げ回る魔王をまたワンパン。ニーシャはかなり力が強いので連続で殴るのが難しいのだ。一回殴るとぶっ飛んでいってしまうので中々連続で殴れない。

 まだまだ、オラオラオラオラオラオラオラオラまで道のりは遠い。


 転生86日目


 今日は魔王の姿が見当たらない。全くどこに行ったのやら。

 とりあえず今日はパンチを10万回ほどおこなった。魔王城に壁が空き崩壊しかけたので急いでそこら辺の木を指で切って、くっつけて修復した。


 転生89日目


 今日も魔王が見つからない。困ったなぁ、あれがいないと丁度いいサンドバッグにならないんだけど……しっかり自分の役割を理解して欲しい。


 転生91日目


 新しい手に入れた「気配探知」のスキルで地下に潜んでいた魔王を見つけ出した。なんで、隠れてたんだろう? とりあえず、オラオオラオラオラオラオラの特訓の為に殴った。

 最近、スピードも上がったので2発までは連続で殴れた。


 魔王はその後立ち上がらなかったのでその後は特訓出来なかったが……まぁ明日、目覚めたらまたやればいいからいいか。(^ ^)


 転生92日目


 泣いて逃げ回る魔王に三発連続で殴ることに成功した。でも、オラオラオラオラオラオラオラオラまでの道のりは遠い。

 この特訓の悩みどころは魔王に一回この特訓をするとしばらく立ち上がらないところだ。


 どうにかしないと……。(T ^ T)


 転生101日目


 とんでもないスキルを手に入れた。その名も「蘇生」である。これは、死んでいるものや気絶状態のものを強制的に復活させられる。

 これで魔王のサンドバッグが捗るってなもんよ! ヒャッハーーーー!!!!


 今日の最高記録は5回。今日は魔王を殴って蘇生しての繰り返し。このスキルまじでいい。



 転生143日目


 最近何故か魔王の元気がない。なにを言っても「はい、いい天気ですね」しか返ってこず目は光を灯していない。


 流石に危険だと思ったので目が覚めるように今日は多めに特訓をおこなった。


 転生168日目


 ついに完成した。魔王に対してオラオラオラオラオラオラとすることが出来たのだ。

 ……なので、魔王城に残ることにした。


 何故ならクソ野郎どもは3人いるのだ。3人に同時にオラオラしなければ意味がないのだ。


 とりあえず、明日から魔王には「分身」のスキルを身につけるように特訓をしなければならない。


 転生169日目


 今日から、魔王に「分身」のスキルを身につけさせる為の特訓が始まった。

 魔王は弱音ばっかり吐きやがった。情けねぇやろうだ。本当に魔王か?


 転生170日目


 今日は魔王が泣いて特訓を辞めて帰ってくれと頼んできたせいで魔王のスキル習得の特訓が全く進まなかった。……とりあえず、ムカついたので100万発ほど殴っておいた。


 泣くとか本当に魔王かよ。


 転生180日目


 ようやく魔王が1人の分身を作ることに成功した。魔王は泣いて喜んでいたが全然まだまだなので殴っておいた。


 早く2人の分身を安定して作れるようになって欲しいものだ。


 転生200日目


 遂に魔王が2人の分身を安定して作れるようになった。これで特訓が出来る……そう思っていたのだが、魔王と魔王の分身を殴るとまたいつも通り気絶したのだが、中々復活しなかった。


 蘇生は使っているのだが効果がない。恐らく3人分のダメージを魔王が一気に食らうので体力が尽きてしまったのだ。蘇生は傷などを治すだけなので意味をなさない。


 ようするに魔王の基礎能力が足りないのだ。

 なので、明日から魔王の基礎体力アゲアゲ特訓を行うことにする。


 転生201日目


 軽く特訓を行なっただけなのに魔王か吐いてしまった。まだ、腕立て伏せ1億回しかやってないのにだ。

 1日の特訓メニューの5分の1もやってないのに吐いてしまうとは貧弱すぎる。

 なので、明日からは特訓メニューを2倍にすると言ったら魔王が吐きながら泣いて喜んだ。

 うん、喜んだ。喜んだんだよ。


 転生204日目


 魔王まさかの失踪。置き手紙で「探さないでください」とか書いて行ってしまったので、すぐに探知して連れ帰ってきた。


 転生235日目


 ついに3人同時へのオラオラオラオラオラオラオラが完成した。ここで長く過ごした為、寂しくはなるが明日ここを出ることを告げると魔王が泣いて喜んだ。あれ? お前、私を攫ってまで連れてきたんじゃないの?


 転生236日目


 ついにこの時が来た。私は喜んで手を振る魔王(弟子)にありったけの拳を叩きこむと別れを言い魔王城を後にした。きっと魔王も声には出さなかったが私がいなくなってしまい悲しさに暮れていることだろう。


 ……何故か終始笑顔だったけど。


 でも……ついに……私は魔王城を脱出したのだった。


 *


「ふふ、本当に大変だったけど楽しかったなぁ」


 私は歩きながら少しあの楽しかった日々を思い出していた。


 そして、ある扉の前まで来た私は扉に手をかける。そして……。


 バァンッッッッ!!!


 勢いよく扉を開け放った。


「誰だ貴様は!?」

「って、どう______ニーシャ姫じゃ?」

「本当だ」


 そして、少し慌てている無能どもに向かって言い放つ。


「よくも私を道具扱いしてくれたなぁ? 覚悟は出来たんだろなぁ?」



 さぁ、今からはもっと楽しい楽しい蹂躙の時間だよ。無能ども王子様達


 ヒャッハーーーー!!!!!



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 あとがき


 コンテストではっちゃけた作品が書きたくなって書きました。もし、少しでも面白ければ星や応援お願いします。もしかしたら、改稿した新作の発表をするかもなのでフォローをして待ってくださると嬉しいです。

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