26-5 君を探して






 ウエスギ『本人の意思を変えるしかない』



──────────────────




 なんとかしなければ。

 彼女に直接会うのはもう無理。

 むこうから連絡がくることも有り得ない。

 なんとしても接触しなければ。

 頼みの綱は。




──────────────────



 ウエスギ『今井雪は現在、施設内にある、

      VRボックスで、

      ゲームをしているはずだ』


 ノブナガ『だから……

      スノーナウは、戦闘中なんだ』



──────────────────




 自殺管理の施設には、

 VRボックスが併設されている。

 そこからログインしているのだろう。




──────────────────




 ウエスギ『ノブナガ。

      ゲームの世界で、

      スノーナウと通信できないのか?』


 ノブナガ『拒絶されて、通信不能です』


 ウエスギ『99階まで行けないのか?』


 ノブナガ『80階までワープして、

      そこから99階を目指す。

      最低でも3時間以上かかります』




──────────────────




 ダメだ、残り時間が1時間半しかない。

 画像を再度みた。

 机の上に置かれた、自殺管理施設の書類、

 端には、見覚えのある、

 黒いシャープペンが写りこんでいた。

 銀色の雪輪の模様、

 今井の誕生日プレゼントに、ぼくが贈ったもの。


 くそっ! 奥歯を噛みしめた。

 なにをしていたんだぼくは。

 彼女と一緒にいたのに、

 彼女のことを……

 なにも理解できていなかった……。




──────────────────




 ノブナガ『ウエスギさん。

      オレを冒険者フレンズに追加して、

      冒険者ウエスギの、

      能力情報を見せてください』




 《冒険者ノブナガから フレンズ申請を 承諾しますか?》



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 視界上にイエローの通知が点灯した。


「受諾。能力情報を表示してくれ」




。。。。。。。。。。。。。。。。。。。




  〈ソロランキング  174025637位〉   


   ウエスギ     レベル 1

   職業  賢者 

   異名  なし

   所属パーティー  なし  

  《現在  1階》




。。。。。。。。。。。。。。。。。。。




 ノブナガ『ウエスギさん、作戦があります。

      いちばん良い方法だと』


 ウエスギ『作戦、どんな作戦だ!?』


 ノブナガ『説明してる時間がありません。

      オレの言うとおりにしてください』


 ウエスギ『わかった! 

      ぼくはどうすればいいんだ!?』




──────────────────





 玄関のドアを蹴りあけ飛び出した。

 外は真っ暗だった。街は眠りについている。

 闇につづく車道を、

 ハンドルを握りしめ全力でペダルをこいだ。

 夜陰を駆ける。

 息が切れて苦しい。


 夜更けの空には、

 月がうかんでいた。

 銀色に輝いていた。

 甘い死を想起させた。


 体の内側から、

 何度も、

 何度も、

 何度も。

 声がきこえてくる。



 ──上杉くん……



 ポケットの中で、

 またひとつ、スマートフォンがきらつく。

 今井からのメッセージだ。

 生命のまたたきにおもえた。

 ぼくは、画面を見つめた。










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