10-7 文化祭  賛成




 今井の弁論は聴衆を一気に引き込んだ。

 天性の美声を響かせ、

 感情をこめて心をつかみ、

 適度に間をとり、聴衆の集中力を高めていく。

 だれもが舞台上の今井と、

 スクリーンに釘づけになった。




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  【賛成派の主張】



 法律案に明記されている、

『特定の条件を満たした場合』を削除すべきである。

 みな平等に、管理施設での自殺を認めるべきだ。




  『自殺には正当性がある』



 1 人は生まれながらに、生存権を有している。

   同時に、死ぬ権利も有していると言える。

   よって、

   自らの命を絶つ権利が尊重されるべきだ。


 2 他者の人権を侵害しなければ、

   自殺は容認されるべきだ。

  (他人に迷惑をかけなければよい)


 3 人間には、生まれてこない、

   という選択ができない。

   親や環境なども選択できない。   

   理不尽で不平等である。 

   だからこそ、

   死ぬという選択を正当にすべきだ。


 4 生きること、子どもを産むことが、

   絶対に正しいと定義できない。

  (反出生主義の価値観に基づく)


 5 悪党が支配する社会で、

   たいして生きる価値はない。




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  『自殺管理施設を作るべきである』



 1 日本国憲法第十三条により、

   自由、および幸福追求の権利がある。

   特定の人にとって自由と幸福とは、

   生きるのをやめて死ぬこと。

   すなわち、

   死ぬ権利が憲法で保障されている。



 2 現状でも自殺はできる。

   しかし、身体を破壊する恐怖や、

   自殺を失敗するリスクがある。

   そのため、死ぬことができず、

   生きながらに、

   苦しんでいる人々が大勢いる。

   事実上、死の権利が保障されていない。

   したがって、国民の権利として、

   自殺希望者には、

   安らかに死ねるサービスを提供すべきである。



 3 国民に死ぬ権利を保障すべきである。

   それにより、公共の福祉に反する、

   凶悪犯罪が減少すると推察できる。

  (自殺願望をもつ犯人による、

   無理心中の事件が多発している)



 4 近年、自殺薬(服用すると簡単に死ねる薬)

   を自ら購入し、死ぬ人が増えている。

   自殺薬は、違法薬物のため違法行為となる。

   この場合、自殺者は罪悪感をもって、

   犯罪者となり死ななければならない。


   自殺管理施設を創設することで、

   この問題は解消できる。

 




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 ※ 補足

   自殺税をつくる必要がある

  (累進課税が妥当)

   自殺希望者は国民の義務として、

   自殺税を納めなければならない。

   税収は管理施設の運営にあてられる。





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