第10話

「やっぱり東京は違うな…凄すぎる」

お上りさん確定な台詞を溢しながら、ついついキョロキョロ辺りを見回してしまう。

あまりにも「うわ~」「ふえ~」「すご~」を口から立て続けに出したものだから、隣を過ぎる人達の視線が突き刺さる。

その視線に気がついた文は我に返った。

(危ない、危ない。悪い人に声を掛けられたら…)

犯罪に巻き込まれる自分を想像した文は(気をつけなきゃな)と気を引き締めた。

そして、さっそくスマホを使いアパートの契約をした不動産会社の場所をチェックした。

不動産屋に直接赴き、最終的な契約を済ませ鍵を受け取る必要がある。

「駅がここで、あそこにドラッグストアがあるから…よし、こっちだな」

上京前にネットで契約したアパートを求めて文は再び歩き出した。

大通りから一本中の道を重たい荷物と共に目的地を目指す。

周囲にキャスターのガタガタという大きな音が響く。

荷物は少な目にしたつもりだが、思ったよりも重くて華奢な腕には十分な負担だ。

「はぁ…お腹空いたなぁ。お昼ご飯でも食べてから行こうかな」

少しも歩かぬうちに長旅の疲れもあって喉は渇いたしお腹も空いたということで、文は誘惑に負け、目に入った小さな定食屋へと足を向けた。

「いらっしゃいませ!」

赤地に白の文字で『お食事処・めしうま』というド直球な店名の書かれた暖簾を潜ると、元気な看板娘らしき女性が迎え入れてくれる。

その純朴そうな可愛いらしいその笑顔に暖かさを感じ少しホッとした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぽんこつ探偵とオレさま妖狐のオカルト事件報告書~狐の窓の向こう側~ 満姫プユ @mitsukipuyu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ