第9話

(それにしても本当に人が多いな)

これだけ人が溢れているなら、新米の自分にも何かしら探偵の仕事があるはずだ。

そう思うと段々と希望が溢れてきて、自然と顔がニマニマしてしまう。

(まだなーんにも始まってないけど、僕みたいに東京へやって来た人達は、みんなこんな気持ちなんだろうな)

そうとなれば、やれ急げと案内板を確認し乗り換えの電車へと乗車する。

けれど内回りと外回りを間違えて乗ってしまった結果遠回りになってしまい、さっそく失敗二つ目。

それから何とか無事に目的地の駅で降りると構内をひたすら進み、ようやく改札を抜けて迷路の様な駅をさ迷いながらも無事に出ることが出来た。

「ようやく、出れた…一生出られないかと思った」

たかだか駅から出るだけなのに相当疲れたが、外の景色を目にして疲れなんて一気に飛び去った。

「うわぁ…っ、すごっ!!」

東京の街へ生まれて初めて降り立った文は、目の前に広がる帝都東京の街を目の前にし圧倒され思わず声を上げた。

賑やかに喋りながら大勢の人達が忙しなく行き交い、その横の道路には沢山の車、近代的でオシャレな高層ビルが建ち並び、その壁にある大型ビジョンからは大音量の音楽が流れ踊るアイドルの映像が映し出されている。

何気なく空を見上げるが、視界に入るのは青空よりもビルの方が多い様に感じる。

あまりにも地元とは規模が違い、暫くポカンと口を開けたまま立ち尽くしてしまった。

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